まるで元気がない
リリーについて
「リリー」は体重14kgほどの、7歳のスパニエル系のミックス保護犬です。
知人が室内で飼っていて、訪ねるといつも元気に跳ね回って歓迎してくれます。健康上の問題は特になく、胃腸は丈夫な方だと聞いています。
異変
ところが留守中の散歩を頼まれたこの日、訪れるとゆるゆると尻尾を振るだけでした。
異変を感じて周囲を確認すると、玄関ホールや居間など3ヵ所で、ねっとりと茶色い吐しゃ物を発見。経験者であれば、すぐにチョコレートを疑ったかもしれませんが、私は茶色いドッグフードを吐いたのかと思ってしまいました。
吐しゃ物そのものの写真ははばかられるので、キッチンペーパーで取り除いた跡をお見せします。
散歩を頼まれていましたが、リリーは気分がよくなさそうです。でも外でオシッコをしなければならないこともあり、リリーの様子を見て少しだけ外に行くことにしました。
外ではふらつきもなく、しっかり歩いてはいました。オシッコは2度、通常の長さをしました。
時々立ち止まって、草をかみます。また、道端の小さな水たまりを急いでなめようとしました。それはよくないと思い、早々に帰宅してすぐにボウルに水を用意すると、大量に飲みました。
ちなみにいつもは水が入っているボウルがカラだったので、私が来る前にがぶがぶと飲み干し、吐いたのでしょう。
そして家の中の一角に、紙やビニールの破片のようなものが散乱しているのを見つけました。
よく見ると、ギフト用のチョコレートの包みのようです。「!!」そこで初めて気づきました。
リリー、チョコレート食べちゃったの!?
症状
リリーはそわそわしています。居間のカーペットの上で丸くなったり、移動してベランダのデッキで丸くなったり横に伸びたり、落ち着かない様子です。リリーの背中やお腹をさすり励ますと、じっと私を見上げ、そしてまた寝そべります。
体は固く、少し震えているようです。心臓の上に手を当てると、トクトクトクと、速い鼓動が伝わりました。普通、犬の心拍は150前後と聞いたことがありますが、リリーの普段の心拍がわからないので、異常に速いのかどうか、判断できません。
私の心拍は確実に上がっていたと思います。
嘔吐、下痢、けいれん、昏睡、そして…。チョコレート中毒で死に至る例は多くはないが、可能性はあると聞きます。飼い主には電話連絡がつかず、急いでメッセージとリリーや吐しゃ物の写真を送ります。
近所の病院は、1.5kmほど先に1軒あることがわかりました。電話をしてみると、あいにくその日は休診日。他の病院は5km以上離れています。運ぶとなったら、かごを自転車の荷台にくくりつけて行くか、タクシーを呼ぶか。頭の中で目まぐるしく考えをめぐらせました。
そのときリリーが頭を少し持ち上げると、私の前で初めて吐きました!
今度は茶色ではなく、透明な水っぽいものです。チョコレートはすでに吐き出し切っていたのでしょう。
写真右下の水っぽい吐しゃ物に、さきほどかじっていた草がまじっています。胃を刺激して吐くために、本能的にかじったのですね。
回復
もう一度、水を少量吐いた後、やっと少し落ち着いたようです。足やおなかを触ると、体の緊張が解けてきたのがわかります。犬にとって毒成分となるテオブロミンやカフェインが排出または代謝されてきて、気持ち悪さや痛みが和らいできたのでしょう。
私はリリーの隣に座って、ずっと軽く体をさすっていました。その刺激がいやなら、態度で示すでしょう。頭を持ち上げて私の顔をじっと見たり、頭を毛布にのせて目をつぶったりしているので、さすられるのは気持ちが良いようでした。
リリーが「フーッ」と鼻からため息をついて目を開けました。素人判断は危険で気は抜けませんが、直観的に、峠は越したと感じました。
その後、メッセージを読んだ飼い主から電話がありました。状況を伝えると「30分で戻る」とのこと。
リリーはその時には後足で立ちあがって私に寄りかかったり、ソファに座った私を追って座面にジャンプし、横で丸くなるなど動きが活発になってきたので、多少ほっとしていました。飼い主にも「大丈夫そう。焦らずに気を付けて帰ってきて。」と伝えました。動揺して事故にあってはいけません。
帰宅した飼い主をリリーは喜んで出迎えました。チョコレートの小袋は、どなたかへのプレゼントとして用意し、うっかりリリーの前足の届く低い棚に置いてしまった、と反省していました。
翌日にはすっかり元気で、よく食べ、よく遊んでいたとのこと。病院には結局連れて行かなかったそうです。
何事もなかったのでよかったですが、ここは連れて行くべきだったかもしれません。中毒成分が完全に抜けるのに、数日かかるという情報もありました。
経過のまとめ
- 1.チョコレートの包みを食い破って食べる。量はおそらく100g未満。(100gはおよそ板チョコ1枚分ですが、チョコの種類によりテオブロミン量はずいぶん違います。)
- 2.水を大量に飲んで3度チョコレートを吐き出す。
- 3.少し落ち着いたところでオシッコ。少し歩き、草を噛む。
- 4.また大量に水を飲んで、水っぽい嘔吐を2度。体が緊張し、わずかに震える。
- 5.緊張がほぐれ、次第に動作が活発になる。
チョコレートを吐き出していた間の行動は見ていませんが、吐き気の波は、茶色と透明の2度あったわけです。
また、リリーがいつチョコレートを食べたのか、いつ最初の嘔吐をしたのか正確にはわかりませんが、おそらく上記の全体にかかった時間が6~8時間程度だったのではないかと推測しています。
私が立ち会った3~5番は、3時間半~4時間程度の事だったと記憶しています。
最後に
犬が口にしてはいけないものの代表例として、玉ねぎとともに記憶にあったチョコレート。その中毒を、はからずも目の当たりにしました。
これを機に犬にとっての危険食材と暮らしの中にひそむ危険性を、改めて確認してみようと思います。
なおこの体験は、今回のリリーに限ったケースであり、中毒の進行具合はケースごとに異なると思いますので、ご注意を!チョコレートは、犬から確実に隔離しましょう。
ユーザーのコメント
30代 女性 るんるん
よかった…。ただ、吐いて落ち着けばひとまず安心、ではありません。
我が家の犬はチョコレート中毒で亡くなりました。私たちの不注意です。
もし、今チョコレートの誤食を発見して、病院に行くべきか迷っている人は、迷わずすぐ行くことをおすすめします。
夜ならなおさらです。
なすすべなく、ただ弱っていく愛犬を見ているだけというのは辛いです。
夜間診療の受付が終わる前に早く病院に行ってください。
我が家の犬はチョコレートを食べてから約6時間で亡くなりました。