子犬時代を過ごしたのが屋内か屋外かで気質が変わる?
犬にとって「社会化」が重要であることはかなり周知され、それを裏付ける様々な研究も発表されています。では、子犬が産まれて一般の家庭に送り出されるまでの数週間を過ごす環境は、犬の気質や行動に影響を与えるだろうか?というリサーチが、ポーランドのウッチ大学の生物学者によって行われ、その結果が発表されました。
この研究では、子犬時代を過ごした環境がブリーダーの家の中であったか、ブリーダーが屋外に設置した犬舎であったかという「屋内vs屋外」というポイントで比較されました。
優良な小規模ブリーダーのもとで生まれた子犬たちでの比較
この研究は21犬種、44組の同腹の264匹の子犬を対象に実施されました。全ての子犬は繁殖用の雌犬を1〜2匹しか飼育していない小規模なブリーダーの出身です。ブリーダーは全て、犬種スタンダードを遵守するケネルクラブの組織FCIのメンバーです。
160匹の子犬(メス70匹オス90匹)がブリーダーの自宅内で母犬と一緒に飼育され、104匹(メス52匹オス52匹)が屋外に設置された犬舎で母犬と一緒に飼育されていました。
子犬たちは7〜8週齢の時点で、研究者によって子犬適性検査という定型のテストを受けました。テストの結果は、屋内で飼育されていた子犬は恐怖から来る攻撃のサインを示す可能性が低く、騒音や見慣れない物体などの目新しい刺激に対処できる可能性が高いことを示しました。
反対に、屋外で飼育されていた子犬は従順な行動の傾向が強く、恐怖による攻撃のリスクが高く、新しい刺激に対処する能力が屋内での犬に比べて低いことが示されました。
どちらの場合も、子犬の週齢や性別による違いはありませんでした。
なぜ屋内と屋外で犬の気質が変わるのか?
屋内であれ屋外であれ、ブリーダーは犬の環境に配慮して母犬と一緒に過ごさせるようにしているのに、なぜこのように犬の気質の傾向にはっきりした違いが現れたのでしょうか?
研究者は家の中で飼育されている子犬は、日常的に多くの人間と接触することで社会化が行われていること、家庭の中での生活騒音や数々の目新しい生活用品を見聞きすることで環境刺激に慣れていることを挙げています。
屋外の犬舎で飼育されている犬たちが人間に接触する機会は、給餌や掃除など限られた時間のみで、目や耳に入ってくる刺激も家庭内よりは少ないものです。
言うまでもなく、将来ペットとして家庭に迎えられるには屋内で飼育された犬の気質の方が向いています。優良なブリーダーがきちんと管理している屋外の犬舎でさえ、これだけの違いが出るのですから、大規模繁殖施設やパピーミルで生まれた子犬の気質や行動に問題が出やすいことは簡単に想像がつきます。
過去の研究ではイギリスの動物学者が発表した「理想基準から外れた施設で生まれた犬は攻撃性、恐怖、分離不安など問題行動が多く見られる」というものがあります。
まとめ
ブリーダーのもとにいるときに屋内で飼育されたか、屋外で飼育されたかで、子犬の気質に違いが出るという研究結果をご紹介しました。早いうちからの社会化の重要性が改めて認識される結果と言えます。また、ブリーダーから子犬を迎えるときに、飼育されていた環境を実際に確認することの大切さも分かります。
「ペットショップから迎えた犬も大切な家族」というのはもちろんその通りなのですが、生まれ育った環境がこれだけの違いを生むのだということは、犬と暮らす人なら知っておきたいと思います。知っている人が増えることがより良い変化への第一歩だからです。
《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0168159119301613#!