生活環境は犬の不安関連障害に影響を及ぼすだろうか?
犬が人間にとって好ましくない行動を見せると「問題行動」と呼ばれ、飼い主は様々な解決策を見出そうとします。
問題行動が解決できないと、犬は保健所に連れて行かれて殺処分となることもあるので、問題行動を解決すること、さらにそれらを予防することは重要な課題です。
不安関連障害はそのような問題行動と呼ばれるものの1つです。
この度東京農工大学の研究者と動物行動学者が
- 「犬がしつけ教室やトレーニングクラスに参加する」
- 「犬が他の犬と同居する」
- 「犬が子供と同居する」
といった環境の違いが、後の不安関連行動に影響を及ぼすかどうかを調査し、その結果を発表しました。
回答から見えてきた興味深い調査結果
調査の方法は、東京と神奈川の公園やドッグランに来ている犬307匹の飼い主に対して、愛犬の不安関連行動と、しつけ教室やトレーニングへの参加経験、同居犬の有無、同居している子供の有無についてのアンケートという形で行われました。
犬の平均年齢は3歳9ヶ月で、犬種はミックスを含めて多岐に渡りました。
不安に関連する行動で多かったものは
- 暴風雨を怖がる 30.9%
- 花火の音に反応する 20.5%
- 飼い主と離れた時の分離不安 25.7%
逆に21.8%の犬については、不安行動は特にないと回答されました。
犬の生活環境との関連を見ると、はっきりした違いが観察されました。
しつけ教室やトレーニングクラスに参加した経験のある犬については、暴風雨や花火に反応して不安な行動を示すという回答がはっきりと少なかったそうです。
ただし、しつけ教室の経験は分離不安については特に関連していませんでした。
同居犬の有無、子供との同居は、不安行動に関連していませんでした。
しつけ教室やトレーニングクラスが持つ可能性
この調査の結果は、しつけ教室やトレーニングクラスに参加することで、後の不安に関連する行動が減少したことを示しています。
これは予備的な研究で、トレーニングの内容や種類、期間の長さなどについてはデータを集めていません。そのため研究者は、不安関連行動に対するしつけ教室やトレーニングクラスの影響について、さらに調査する必要があると述べています。
けれども過去にも別の研究者が、子犬が早い段階でしつけ教室に参加した場合、成犬になってから「攻撃性」「周囲への恐怖」「触られることへの感受性」が低く、訓練可能性が高いことがわかったと発表しており、この度の調査結果とも一致するところがあります。
子犬しつけ教室はのちの行動にどんな影響を与えるか?【研究結果】
しつけ教室やトレーニングクラスで、他の犬のグループとともに行動し、制御された適度なストレスに晒されることが、不安や恐怖を少なくするのかもしれません。
また飼い主さん自身が犬のことやトレーニングについて知識が付き、自分の犬に対する理解が深まることも関連している可能性があります。
まとめ
犬の不安関連行動と生活環境の影響を調査した結果、しつけ教室やトレーニングクラスに参加した経験のある犬は暴風雨や花火に対して不安や恐怖を示すことが少ないことがわかったという研究をご紹介しました。
不安行動が少ないというのは犬にとっても人にとってもストレスが少なく快適な状態です。
しつけ教室に参加するということが、この快適さを手に入れるヒントになるというのは嬉しいことですね。
《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1558787818302156?via%3Dihub