インドに動物保護団体を設立するという事の難しさ
インドでは一部の動物の殺処分が法律で禁止されています。そのため、野良牛をはじめヤギ、犬、猫等が多く路上生活をしております。
しかしながら、守られていない動物たちの生活は決してのんびりしたものではなく、日々、サバイバルなものです。
そんな動物たちを守り続ける活動を、「ウダイブル」という街で20年近くしている『Animal Aid Unlimited』の共同設立者Ms.Erikaにインタビューをしました。
Q:Animal Aid Unlimitedの使命とは?
インドのウダイブルの所有されていない路上の動物を救出し治療する事です。
そして、私達のレスキュー活動をソーシャルメディアを通して発信していく事で、彼らが守られるべき存在である事を皆さんに認識してもらいたいです。
Q:ウダイブルにレスキューセンターを設立しようと思ったきっかけは?
はじまりはインドが大好きな旅行者
1980年代に普通の旅行者としてインドを訪れました。食、言語、装飾品、宝石などインドの様々な物がとても興味深かったです。
当然、レスキューセンターの事は当時は考えてもいませんでした。
少しずつ年齢を重ねるにつれ、住んでいるシアトル(アメリカ)よりもインドの方が、快適で余裕のある生活がおくれるのではないかという思いが私達夫婦によぎりました。
その頃は小さな娘と頻繁にインドを訪れていました。1994年、娘が5歳の時にウダイプルを訪れ、伝統的な建築、古風な街並み、その街中を歩き回る動物たち……私達はこの街に心を奪われました。
病気の子犬を助けたいという想い
娘があまり旅行が好きでなかった事もあり、数年後にはウダイプルの近くの村に部屋を借りて、1年のうち6~9ヵ月はそこで過ごす生活をしていました。ここでの滞在時間が多くなればなるほどに、動物と触れ合う機会が増えました。
そんなある日、病気の子犬を助けようとした時に私達はここには獣医がいないという事実に直面したのです。
さらに犬を長期的にケアする事が出来るシェルターもありませんでした。政府の動物病院は家畜の治療をするのが主な目的のため、犬は簡単な治療を受ける事はできても、看病できるスタッフすらいなかったのです。
オーストラリアのHIS設立者のクリスティン・タウンエイドさんの言葉が頭をよぎりました。
“何かするー問題に一歩踏み出す、何でもするー目の前の困難に向かってあらゆる事やってみる、ただ何もしないーそれとも、ただの傍観者として何もしないで終わらせる”
……自分が今すべき事は何なのだろうか。
筆者補足:クリスティン・タウンネイド氏について
クリスティン・タウンネイドさんは、インドのジョイプールにある動物保護施設「Help in Suffering」(HIS)の管理受託者です。1990年~2007年までの間にジョイプールで蔓延していた狂犬病を制御しています。
Ms.Erikaは、設立時に政府機関はほとんどあてにならず、ジョイプールに行き助言やサポートをもらっていましたので、タウンネイドさんの言葉が背中を押したのでしょうね。
現在はオーストラリアとダージリンに動物保護団体を設立しHISは辞められています。肩書が多く動物の権利運動家であり、ジャーナリストであり作家であり絵も描かれていて、詩も書かれています。
Ms.Erikaは、目の前の動物達に何かしたいのに、出来ない状況をどうやって打破するのかと日々考えていたのではないでしょうか?実際にジョイプールで活動をされていたクリスティン・タウンエイドさんは、支えになっていた事でしょう。
Q:設立を決断したのはなぜですか?
インドで素晴らしいのは、路上にいる動物に対する寛容性と、全ての生物たちの尊厳が法律で保護されている点です。
けれども都心部が発展し交通量が増加したため、近年では交通事故がとても増えました。
私達は動物たちを助けたくて、様々な機関に連絡を取りました。でも、ここでの常識は私達が思っているものとは大きくかけ離れていました。シェルターの設立は最後の手段でしたが、ここにはあまりにも何もなく他にどうしようもなかったのです。
Q:日々のレスキュー依頼数と、現在保護している動物の数は?
毎日50~100件の要請を受けます。
そしてシェルター内には、400匹の犬、150頭の牛やロバ、50の鶏、ヤギ、猫等、合計600匹の動物がいます。
このうち200匹は障害を持つ動物で、この子たちは終生保護しています。
Q:苦労した事は何ですか?
動物を扱えるスタッフ探しが難航
最初の頃はスタッフを見つける事に非常に苦労しました。
そして私達と働き出したスタッフは当初、誰も動物を扱った経験がありませんでした。獣医でさえも多くはありませんでした。
ですから、動物への愛、世話、敬意、責任感という点において難しい部分もありました。
けれども現在では、10~15年間一緒に働いてくれているスタッフもいて、動物に対する姿勢も変わりました。
インドの人々の関心の変化
さらに動物に対するインドの人々の関心が、驚く程に変化しました。
2002年のスタート時には、「Animal Aid Unlimited」は誰にも認識されていませんでした。街や学校でリーフレットを配りましたが、救助要請が来るまで何年もかかりました。
現在は救助要請だけでなく、地元住民の訪問や、インド人からの寄付の増加、Animal Aid Unlimitedの支部の設立希望も受けており、インドの人々の関心が非常に進歩していることを実感しています。
Q:今後の目標を教えてください
すべての動物の苦しみを終わらせる事です。
ウダイブルの動物を救う事は私達の最初の一歩です。今後は、より多くの人々が自分達の地域で動物を助ける事が出来るように、応急処置の方法を広める活動に注力していきたいです。
いまいちど、命の大切さに目を向けたい
設立から約90,000匹の動物を保護した彼女の言葉には、とても重みがあります。
一部の動物を助けたいとの思いでスタートした活動ですが、それは決して簡単な道のりではなく、3歩進んでは2歩下がるという事の繰り返しだったそう。
日々の活動には本当に頭が下がります。
一つ一つの命の大切さに今一度目を向けたいと思いました。
是非、動物たちの笑顔を動画でご覧ください。
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