【調査】犬が匂いを嗅いだときの脳の働きは?
近年、犬の脳神経に関する実験や調査が少しずつ進んできています。今回は、人間の100万倍以上とも言われる犬の嗅覚と脳の働きに関する調査について紹介します。
アメリカ・アトランタにあるエモリー大学の神経科学者であるグレゴリー・バーンス氏は、最新の脳画像研究によって、飼い主の匂いと犬の脳の快感を味わう部位の動きに大きな関係があるということを明らかにしました。5匹の介助犬またはセラピー犬、バーンズ氏の飼い犬である“キャリー”を含む12匹の犬に対して、生物的な匂いに対する反応を検証しました。
犬たちに下記5種類の匂いを嗅がせ、脳の反応の違いや感情がどのように刺激されるかを調べました。
- 自分の匂い
- 知らない犬
- 一緒に暮らしている犬
- 知らない人間
- 一緒に暮らしている人間
これらの匂いを嗅がせているときに、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて脳の神経細胞の活動を測定。高度な人工知能技術を用いた脳画像解析によって、言語化できない犬の感情や脳の働きの調査が可能になったのです。
調査対象となった犬たちは、どの犬もよくトレーニングされており、fMRIによる解析中も非常に落ち着いて過ごすことができていました。また、匂いのサンプル元である犬や人間はテストの場には参加しないという条件で、特に強い匂いが発せられる部分から匂いを採取しました。
【結果】犬の脳が最も強く反応したのは「家族」
犬がいくつかの匂いを嗅ぎ、そこで脳がどのような変化を起こすかという調査が行われました。その結果、犬の脳が最も強く反応したのが「一緒に暮らしている人間=家族」の匂いでした。
調査対象となったいずれの匂いを嗅いだときも、犬の脳内では“前向きな希望・感情” を司っている部位が反応しましたが、特に強く反応したのが「一緒に暮らしている人間=家族」でした。
つまり、犬は家族の匂いに強く反応し、その匂いを嗅ぐことでポジティブな感情になるということが明らかになったのです。
ただし、なぜ「一緒に暮らしている人間=家族」に対して犬の脳が強く反応するかという理由までは明確になっていません。この解明には今後もさらなる調査が必要になってくるとバーンズ氏は話しています。
匂いと関連付けられた記憶は残りやすい
犬の嗅覚と脳の働きには、強い関係性があるということが少しずつわかってきています。家族や飼い主の匂いを嗅ぐことでポジティブな感情を抱く傾向にあることが研究調査によって明らかになりましたが、そのほかにも犬の嗅覚と脳について興味深い関連性が考えられています。
犬はいいことが起きたときや楽しいとき、嗅いだ匂いとの関連付けを行い、一緒に記憶していると考えられているのです。そのため、楽しい経験やうれしい思いをしたときにそばにいた人の匂いに対してポジティブに反応し、より一緒にいたがるようになると言われています。
「犬は記憶力が悪い」などと言われることもありますが、長期的に残るエピソード記憶などについては優れた能力を持っているとされ、特に匂いと結びついた記憶については深く長く残りやすいと考えられています。
まとめ
犬が家族の匂いを嗅いだときにポジティブな感情になる、ということが科学的にも実証されました。まだまだ犬の脳の働きについてはわからない部分もありますが、私たち飼い主としてはとてもうれしい調査結果ですよね。
また、匂いには犬の記憶を強くする働きなどもあると考えられています。飼い主や家族の匂いがより楽しい記憶・うれしい記憶とともに残るよう、幸せで充実した日々を送らせてあげたいものですね。