犬や猫の存在が高齢者の喪失感を癒してくれる
人生においてとても悲しいことがあった時、一緒に暮らしている愛犬や愛猫の存在に救われた経験のある人は多いと思います。
アメリカのフロリダ州立大学の社会学の研究チームが437人の高齢者の精神的な健康についてのリサーチを行ったところ、死別や離婚によって配偶者を失った人にとって家庭に犬や猫がいることは孤独と気分の落ち込みの緩和に関連していることを発見しました。
ストレスと精神的健康とペット
この研究では平均年齢65歳の437人の男女について、結婚生活を継続している人の精神的健康と、死別または離婚によって配偶者を失った人の精神的健康を4年間にわたって比較しました。その中で犬や猫を飼うことが精神的健康に影響を与えるかどうかにも注目しました。
配偶者との死別または離婚は、経験した全ての人の精神的健康をいくらか低下させました。配偶者を失うことは人生における最も大きなストレスと言われていますので、これは無理もないことです。しかしペットを飼っている人と飼っていない人では低下の度合いに違いが見られました。ペットを飼っていない人では、配偶者を失った時に平均2.6件のうつ症状がありました。一方ペットを飼っている人では確認されたうつ症状は平均1.2件でした。
ペット、特に犬は飼い主に対して屋外での運動や社会との関わりを促します。このことが孤独感を紛らわせ、精神的な健康をサポートします。もちろん犬や猫自身の存在も孤独感を癒す大きなポイントです。孤独や気分の落ち込みは、喫煙と同じくらいに健康上の問題の危険因子となりますが、ペットはこのリスクを低下させる因子となります。犬や猫を撫でるだけでも、気持ちを落ち着かせストレスを低下させることはよく知られています。
研究者は「ペットと暮らしている人は、彼らの世話をするという朝起きるための目的を持っています。」と語っています。ペットは朝起きるための目的と言われると、確かにその通りだ!と思いますね。
高齢者とペットの問題は単純ではない
しかし高齢者とペットの問題は良いことばかりという単純なものではありません。身体的な健康が低下している場合、ペットと暮らすことは高齢者の転倒のリスクを高くするというデータもありますし、ペットの世話をすることが肉体的な負担になることもあります。またペットの医療費などが経済的な負担となる場合もあり、先に述べたことと裏腹にペットの存在がストレスになる可能性もあります。
高齢者のための生活支援施設などでは、ペットがいることのメリットだけを享受してもらえるように施設でコンパニオンアニマルを飼育したり、トレーニングを受けた犬が訪問して来るアニマルセラピーを取り入れたりしています。一部では、動物型のロボットやバーチャルリアリティのプログラムの実験も始まっています。
犬や猫と暮らすことのメリットがしっかりと科学的に研究されて、そのエッセンスとも言えそうな部分だけが形を変えて、人間にも動物にも負担のない形で実現していけばいいですね。
まとめ
高齢者が配偶者を失った時に、犬や猫などペットと一緒に暮らしているかどうかで、うつ症状や孤独の緩和に大きな違いが出ると調査によって明らかになったことをご紹介しました。
歳を重ねるほどに、そばにいてくれる犬や猫の存在は大きくなるのに、一方で動物の世話をすることが難しくもなって行く。このような研究は、そのようなジレンマを社会の問題として捉え、解決策を見出して行くための一歩でもあります。高齢者が心身の健康を保つことは、社会全体にとっても重要なことです。高齢者とペットに関する研究に今後も期待したい気持ちです。
《参考URL》
https://pets.webmd.com/news/20190918/four-legged-friends-help-buffer-loss-of-a-spouse#2