犬のキュンキュン声、猫のミャオン声が訴えるもの
人間と暮らす犬や猫はコミュニケーションのための多くの方法を持っています。
中でも「寂しい」「悲しい」などネガティブな感情を含む人間への訴えかけの声はインパクトの強いものです。遊んでいたおもちゃが自分では取れない場所に入ってしまった時、飼い主の姿が見えなくて側に来て欲しい時、犬はキューンともクーンとも言える声を出して人間に訴えかけてきますね。猫の場合も、切実に何かを訴えかける時にはミャオーンという独特の鳴き方をします。
これらの犬や猫が切実であったりネガティブであったりする感情を訴えかける時の声が、人間にどのくらい伝わっているのかを調査するという研究が、デンマークのオーフス大学の研究者によって実施され、その結果が発表されました。
ペットを飼っている人、飼っていない人で鳴き声に対する反応を調査
調査の対象となったのは10代後半から20代前半の男女561名でした。そのうち猫または犬(または両方)を飼っている人が264名、飼っていない人は297名でした。参加者には動物が「お腹が空いた」「側に来て欲しい」など何かを訴えかける発声を聞いてもらい、その発生についてスコアをつけて評価してもらいました。
犬が訴えかけるキューンキューンという発声は、ペットを飼っていない人よりも飼っている人の方が、より悲しげに感じることが分かりました。
ペットを飼っている人たちにとって犬のキューン声は、人間の赤ちゃんの泣き声と同じくらい悲しげ、または感情的に説得力があると評価されました。
一方、猫が訴えかけるミャオーンという発声は、猫を飼っている人だけが悲しげに感じると答えました。ペットを飼っていない人にも、犬のキューン声は猫のミャオーン声よりも「悲しげ」だと評価されました。この結果は、犬は感情を表現し人間から共感的な反応を引き出すという点において、猫よりも効果的に行動していることを示しています。またペットを飼っている人は、犬や猫の発声に対する感情的な感受性が高いこともわかりました。
また参加者に依頼された調査内容には、精神的な不安の度合い、うつ傾向、対人関係などについての質問項目もありましたが、ペットを飼っている人と飼っていない人の間で有意な違いは見られませんでした。
なぜ犬は猫よりも人間の感情に訴える力が強いのだろう?
犬がキューンキューンと訴える声が、程度の差はあれどペットを飼っていない人を含めて大多数の人に「悲しげ」だと受け止められるのに対し、猫のミャオーンと訴える声は猫を飼っている人にしか「悲しげ」だと思われない、この違いはどこからくるのでしょうか?
研究者は、一般的に犬の飼い主は猫の飼い主よりもペットの世話にかける時間が長いと指摘しています。猫は犬よりも独立性が高く、犬は猫よりも人間のアテンションを多く必要とします。この猫の独立性と犬の依頼性が、犬の発声の方がより多くの人間にアピールする理由につながるかもしれないと研究者は述べています。
まとめ
犬がキューンと訴えかける声は猫のミャオーンという声よりも、人間に悲しげだと受け止められやすいこと、ペットを飼っている人は犬や猫の発声に対する感受性が高いことが分かったというリサーチの結果をご紹介しました。猫は独立性が高く、犬は人間に依頼している部分が大きいというのは、たいていの人が認識していることですが、それが対人間のコミュニケーション能力にも影響しているというのは面白いものだと思います。
このような研究を通じて、人間が動物のことをより深く理解して、双方にとって良い環境を作って行くことにつながればいいなと願います。
《参考URL》 https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.181555