米国屈指の大病院が、犬を飼うことは心臓病リスクの低下に関連と発表

米国屈指の大病院が、犬を飼うことは心臓病リスクの低下に関連と発表

犬を飼っている人が病気に罹るリスクが低いことは以前から様々な研究が行われています。この度アメリカ屈指の大病院による、犬を飼うことと心臓病のリスクの低下についての研究が発表されました。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

アメリカの有名病院が発表した犬の所有と心臓病リスク低下の関連

犬とジョギングする男性

「犬を飼っている人は平均寿命が長い」「犬を飼っている人は特定の病気に罹る率が低い」など、犬を飼うことと健康上のメリットの関連を調査した研究は今までにも数多く発表されています。

最近の研究では、アメリカ屈指の大病院で「全米の優れた病院ランキング」でも1位にランクされているメイヨー・クリニックが、犬を飼うことは心臓の健康に良い生活習慣や検査結果と関連していると発表しています。その具体的な内容をご紹介します。

犬の所有と心臓の健康についての大規模な追跡調査

心電図モデルと聴診器と書類

この研究では、2013年1月から2014年12月までの間にチェコ共和国ブルノ市において調査された1769人の被験者のデータが分析されています。被験者は25〜64歳、うち男性が44.3%、全員が心臓病の既往歴が有りません。研究者は米国心臓協会(AHA)で使用されている健康スコアを使って、被験者の各項目を採点しました。

項目は、BMI(体格指数)、食生活、身体活動、喫煙状況、血圧、血糖値、総コレステロールです。これらのスコアの結果を、被験者のうち犬を飼っている人と飼っていない人で比較しました。

比較分析の結果は、犬を飼っている人は身体活動が理想的なレベルに保たれ、健康的な食生活、良好なレベルの血糖値が確認されました。犬を飼うことで飼い主が身体を動かす機会が増えるため、上記のような高い健康スコアにつながると考えられます。この犬を飼っている人の健康スコアが犬を飼っていない人のスコアよりも高いことは、被験者の年齢、性別、教育レベルなどの差を考慮しても認められました。

この研究では引き続き2030年まで5年ごとに評価分析が行われるため、犬を飼うことと心臓の健康の関連についてさらに詳しい結果が得られることが期待できます。また別の研究では、犬を飼うことはメンタル面の健康に良い影響を及ぼし、飼い主の社会的な関係をも改善させることもわかっています。

犬を飼うことのメリットは、正しく飼ってこそ得られる!

散歩するジャックラッセルと飼い主の脚

このように犬を飼うことが心臓を健康に保つことにつながるということが改めて統計学的なデータとともに示されたわけですが、これらのメリットは言うまでもなく正しくきちんと犬を飼った結果として得られるものです。身体活動のメリットは毎日定期的に十分な散歩をすることで、犬と暮らすことで得られるメンタル面での効果は犬との良好な関係があることが大前提です。

また犬を飼うことで飼い主が健康になることは、あくまでも犬との暮らしの素敵な副産物であって、それ自体が目的になるものではないことも気をつけなくてはなりません。

まとめ

年配のカップルと犬

アメリカの有名病院メイヨー・クリニックが発表した「犬を飼うことは心臓の健康に良い生活習慣や検査結果と関連している」という調査結果をご紹介しました。

犬と暮らすことで、今までなかった散歩の習慣が身につき、犬を通じて人との付き合いも増え、気がつくと健康診断の数値が改善され毎日が楽しくなっていたという経験を持つ人も多いのではないでしょうか。この調査結果は、犬という生き物が一緒に暮らす人間にくれる恩恵の大きさを改めて感じさせるものだと言えそうですね。

《参考URL》 https://mcpiqojournal.org/article/S2542-4548(19)30088-8/fulltext

Dog Ownership and Cardiovascular Health: Results From the Kardiovize 2030 ProjectMaugeri, Andrea et al. Mayo Clinic Proceedings: Innovations, Quality & Outcomes , Volume 3, Issue 3, 268-275
https://doi.org/10.1016/j.mayocpiqo.2019.07.007

監修獣医師による補足

【論文内容についての補足】 この研究は、2013年から被験者を集め2030年まで5年ごとにフォローアップを行って心血管疾患の危険因子を特定し、それらを最小限にするための予防策を作ろうというプロジェクト「Kardiovize Bruno 2030」で得られたデータを、ペットを飼っている人といない人、中でも犬を飼っている人といない人に分けて分析したものです。被験者1,769人のうちペットを飼っている人が42.0%、犬を飼っている人が24.3%、犬以外のペットを飼っている人が17.9%でした。AHAが定義した7つの健康に良い要素(生活習慣と検査結果)をこの3グループで比較したところ、犬を飼っている人と飼っていない人(他のペットを飼っている人も含む)の間でだけ、年齢と性別、教育レベルによる差を補正しても差がみられ、犬を飼うことと心臓のために良い生活習慣、心臓の健康指標となる検査結果が良いことと関連している、という結果が得られました。この結果は犬を飼っている人では、犬を飼っていない人よりも喫煙率が高かったにもかかわらず得られたもので、また犬を飼っている人は糖尿病の罹患率も低く、いずれも体を動かす機会が多いからだと研究者たちは考えています。犬を飼っている人がより理想的な食生活をしている、という結果については、これまで高齢者における食生活を犬を飼っている人と飼っていない人で比較した研究はあるものの、その理由は今後の研究課題であるとしています。

獣医師:木下 明紀子
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