短頭種の犬のメディアでの扱いに取り組むグループ
パグ、フレンチブルドッグなど短頭種の犬の健康上の問題は長きにわたって取り沙汰され続けていますが、これらの犬種の人気は相変わらずです。イギリスでも近年短頭種の人気はたいへん高まっていて、フレンチブルドッグは長年トップだったラブラドールを抜いて人気犬種1位になっています。そのイギリスで、広告やテレビ番組などメディアにおける短頭種の犬の扱いを改め、健康的な繁殖を推進しようというキャンペーングループがあります。
グループの名はCAMPAIGN for the RESPONSIBLE USE OF FLAT-FACED ANIMALS(平らな顔の動物の責任ある使用のためのキャンペーン)頭文字をとってCRUFFAと名乗っています。
CRUFFAが、世界最大のドッグショーで128年の歴史を持つ「クラフツ」に対して、パグに関するある許可を求めています。
『レトロ・パグ』のクラフツ出場を求める運動
CRUFFAが求めているのはレトロ・パグをパグとしてクラフツに出場させることを許可して欲しいというものです。レトロ・パグとは数世代前にジャックラッセルテリアとパグを交配させ、現代の一般的なパグよりも長いマズルを持つ姿を固定化した犬です。上の写真はレトロ・パグではないパグミックスですが、ちょうどこのような容姿になります。19世紀後半には、パグという犬種は現在よりもマズルも足も長いレトロ・パグのような容姿を持っていました。現代のパグの平らな顔は、犬の健康を無視して消費者の求める可愛らしさのみを追求した繁殖の結果であると、キャンペーングループは述べています。
しかしクラフツは伝統的にショーに出て競うことができるのは純血種のみとしています。クラフツにとってレトロ・パグは雑種であってパグではありません。これに対してCRUFFAは、レトロ・パグは雑種ではなく改善されたパグであり、クラフツを組織するケネルクラブはこのような健康な姿形の犬を多くの人に見せることで、人々の意識の向上や健全な繁殖を奨励することになるとしています。
犬の健康に関するクラフツの対応
クラフツのドッグショーに出場する純血種の犬たちが容姿重視の繁殖のせいで健康に問題があることに関して、ケンブリッジ大学の研究者がレポートを発表し、英BBCがドキュメンタリー番組を放送して世界的に話題になったのは2008年のことでした。その後、イギリスのケネルクラブは犬の審査基準を変更し、健康重視の方向に変わりつつあります。短頭種の犬を例に取ると、クラフツはジャッジに対して呼吸に問題のある犬には賞を授与しないよう通達しています。
ケネルクラブの犬の健康と福祉を管理する部門の責任者は、獣医師や福祉団体やブリーダークラブと協力して、無責任な繁殖をする業者の駆逐、犬の購入者への教育、短頭種の犬の健康問題の研究に努めたいと述べています。レトロ・パグがクラフツのショーに出場できるかどうかはさておき、問題の解決について具体的な提案がなされ、世間の目が集まったことは成果と言えると思います。
まとめ
パグのマズルを長くしたレトロ・パグをクラフツのドッグショーに出場させる許可を求める活動についてご紹介しました。イギリスでは、短頭種の犬の健康問題を改善するための研究も、一般の人々への啓蒙活動も継続してたくさん行われています。それでもまだ、呼吸困難をはじめとする健康上の問題に苦しむ短頭種の犬は数多くいます。
なかなか一朝一夕に改善する問題ではないのですが、犬を購入する人の意識の変化は改善のための大きな要素の一つです。短頭種の犬と暮らしている方も、将来短頭種の犬を迎えたいと考えている方も、他の犬種と暮らしている方も、犬の容姿と健康についてぜひ考えてみていただきたいと思います。短頭種の犬の問題は、他の犬種に比べて目に見えて分かりやすいものですが、他の犬種でも人間の都合や好みだけを重視した繁殖の結果、障害や疾患に苦しむ犬はたくさんいます。そのような問題を知り、考えるきっかけになれば幸いです。