犬の聴覚は人間よりもずっと凄い!
犬が持っている感覚と言えば、最初に頭に浮かぶのは人間の何百万倍と言われる嗅覚ですね。でも嗅覚ほどではないものの、犬の聴覚だって相当に凄いものです。
人間が聞き取れる音の範囲は下は20〜2万ヘルツの間であるのに比べて、犬は15〜5万ヘルツの範囲の音を聞き取れると言われています。また犬の聴力は人間の4〜10倍とも言われています。数字には諸説あり幅があるのですが、とにかく犬の聴覚が人間よりずっと凄いことは間違いがありません。
犬の顔のそばで鳴り続ける雑音
そんな優れた聴覚を持つ犬の顔のすぐそばで、歩くたび動くたびにカチャカチャと雑音がするとしたら、それはきっと相当にイライラすることでしょう。金属やプラスチック製のネームタグと鑑札などをいっしょに付けていると、犬が動くたびに音がしますね。あの音のことです。
ネームタグの音については、コロラド大学の生態学と進化生物学の名誉教授であり犬についての著書も多いマーク・ベコフ博士がコラムで触れていたことです。ベコフ博士は近著『犬を解き放て:コンパニオンの犬に最高の生活をあげるためのガイドブック』の中で、犬が本来持っている感覚を本来使われるべき方法で使わせることが犬にとっての最高の生活につながることを説明しています。
犬の聴覚については、大音量の音楽、掃除機や電動工具の音、爆発音などが犬にとってどれくらい有害で注意が必要かが書かれているのですが、それと並んでネームタグが年中カチャカチャと鳴り続けることが、犬が本来聞こうとしているものを聞こえづらくし、イライラさせる可能性についても言及しています。
実を言うと、私はこのコラムを読むまでネームタグの音が犬の感覚を邪魔するなど想像もしませんでした。音が聞こえると「あ、犬がこっちに来ているな」と感じて嬉しくさえ思っていました。想像力が足りなかったせいで、犬に対して申し訳ない気持ちにもなりました。
犬の鑑札や予防接種済み証は革や布製のケースを利用したり、ネームタグはぶら下げるタイプよりもカラーに通すタイプにすることでカチャカチャ音は解決できます。アメリカの通販サイトでは、ネームタグや鑑札の外周をクルッと囲む嵌め込み式のゴム製品が「サイレンサー」として販売されていました。なるほど、音がしないように対策する製品があるということは、自分はかなり遅れていたのだなとまた反省しました。
犬の感覚を尊重するということ
人間にとっては当たり前のことも、犬の本来の感覚にとっては不快であったり、時には有害ですらあることはたくさんあります。
前述したような、人間の生活の中の音が犬の聴覚に及ぼす影響の他にも、香りのきつい消臭スプレーや衣類柔軟剤が、犬の嗅覚にとってどれだけ過酷なものか。犬を夜遅くまで明るい電灯のついた部屋で過ごさせることが、犬の体内時計を狂わせ、それが人間にとって望ましくない行動につながる可能性。これらはほんの一例ですが、犬が本来持つ感覚を尊重するという視点を持っていれば、問題を見過ごすことなく解決策も見つけられそうですね。
まとめ
日常生活の音の中で、犬のネームタグがカチャカチャ鳴る音が、犬本来の聴覚にとっては邪魔でイライラする可能性が高いことをご紹介しました。言われてみれば「確かにそうだな」と思うことも、普段はあまり深く考えずに見過ごしていることに気づき反省しました。
ベコフ博士は著書の中で「可能な範囲で、犬に最高の生活を与えることは私たちの義務である」と述べています。最高の生活というのは決して最高級フードを与えて最高級サロンでケアをして、高価なおもちゃや洋服を与えるということではなくて、嗅覚や聴覚などの感覚を犬が本来使うべき方法で使う機会を与え、そこから犬が本来感じるべき刺激を感じて安全で健康に生きることです。これを機会に、生活の中の嗅覚、視覚、聴覚、触覚などについて「犬本来の感覚」とはなんだろう?としっかり考えてみようと思います。
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20代 男性 匿名