ロサンゼルスで開催されている犬に関する科学エキスポ
アメリカのロサンゼルスにある、カリフォルニア・サイエンス・センターという参加型博物館『dogs! A Science Tail』と名付けられたドッグ・サイエンス・エキスポが開催されています。いろいろなプログラムを通して、楽しみながら犬に関する理解を深め、安全に犬と仲良くなる方法を知ろうというファミリー向けの犬イベントです。
このイベントの特筆すべき点は、ドッグという名の付いたエキスポでありながら、会場にはほぼ犬がいないということです。ごく限られた時間の働く犬のデモンストレーション以外では、会場には犬の姿が見られません。ペットの同伴もNGです。犬のいない犬イベント、どんなプログラムがあるのでしょうか?
テクノロジーとマンパワーを駆使したプログラム
犬はいないけれど、犬を身近に感じられるプログラムの多くは、テクノロジーを駆使したものです。犬の頭の模型の中に入って犬の視覚と聴覚を体験する装置、犬の嗅覚を体験するためのボタン、等身大のスクリーンの中の犬がこちらのジェスチャーや声に反応するヴァーチャルドッグ、IMAXスクリーンで上映される犬のスーパーパワーを解説する3D映画など、大人も楽しめる趣向が凝らされています。
テクノロジーとは反対に人間が犬との暮らしの楽しさを伝えるプログラムもたくさんあります。犬を家族に迎えることの楽しさと責任を体験するコーナーでは、模型の犬を使って歯磨きやブラッシングを学んだり、ポジティブ強化のトレーニング方法のレッスンもあったりします。
限られた時間内だけですが、災害救助犬や介助犬など、働く犬のデモンストレーションも行われます。こちらはエキスポの公式コマーシャルの動画ですが、なかなか楽しそうです。
犬がいない犬イベントの意味を考える
本物の犬がその場にいない犬イベントは、決してテクノロジーを楽しむだけのものではありません。犬がいない所で犬について学ぶことで、子供たちは犬への興味がよりかき立てられることでしょう。そして近所の犬や保護施設の犬と向き合ったときに、学んだことを確かめたい気持ちになってくれればしめたものです。それはつまり、犬にいきなり駆け寄ったり触ったりしないで、犬の様子を観察しながら正しい方法でアプローチするということだからです。
エキスポの会場で犬と触れ合う機会がないということは、そこには疲れ切ったりストレスを溜めたりした犬はいないということです。不特定多数の人が集まる騒がしい場所で1日中イベントに参加させるというのは、犬の福祉を大きく損ないます。そんな状態で疲れて不機嫌な犬を見れば、感受性の強い子供なら嫌な気持ちになるでしょうし、そこまで気がつかない子供なら「犬ってこんなふうに扱っていいんだ」という間違った意識を持ってしまうことにもつながります。
イベント会場にペット犬同伴NGというのも、犬と入場者両方の安全と快適性のために賢明な選択です。犬が飼い主と出かけたい場所は、決してこういうイベント会場ではないからです。
まとめ
ロサンゼルスで開催されているドッグ・サイエンス・エキスポについてご紹介しました。犬好きのための犬のイベントだけれど、犬はそこにはいない。将来はこんなイベントの在り方が増えていってほしいなあと思います。ヴァーチャルリアリティやロボットなど、生き物に負担をかけずに楽しい体験ができる技術は次々に開発されています。人間の楽しみや体験のために動物が我慢を強いられることが間違っていることを、ここで紹介したようなイベントがあることを通じて、多くの人に知ってほしいと思います。
《参考》 https://californiasciencecenter.org/exhibits/dogs-a-science-tail