人間に「好みのタイプの犬」がいるように、犬にも「好みの人間」がいる?
先ごろ、チェコ共和国のブルノ獣医科薬科大学の研究者が「犬を迎えるときに、好みのタイプの男女差はあるか?」というリサーチ結果を発表しました。(犬に対する「好みのタイプ」に男女差はあるだろうか?【リサーチ結果】)それでは犬の方にも「こんなタイプの人が好き!」という傾向はあるのでしょうか?
実はこの疑問には、以前の研究からある程度の結果が分かっているのだそうです。2017年にハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究者によって行われたリサーチで『犬の声に込められた感情を人間が読み取る力』をテストした実験の結果に、その答えがありました。
犬の声に込められた感情を読み取る力が高いのは誰か?
実験の内容は、様々な状況で犬が発した吠えや唸りを録音したものを聞いた被験者が、その意味するところや状況を答えるというものでした。その結果、男性と女性では女性の被験者の方が正答率が高かったことがわかりました。研究者によると以前にMRIを使った研究から、発声に込められた感情を評価するとき、犬も人間も脳のほぼ同じ領域を使っていることがわかっているそうです。
そして脳内で行われるプロセスも似たものであるだろうと考えられています。これらのことから犬と人間だけでなく、哺乳類が発声で感情を表現する際の方法には、共通するルールが存在するとも考えられています。犬のことに限らず感情認識の研究において、女性の方が他者の感情に対してより共感的で敏感であるという傾向は一般的なパターンなのだそうです。
つまり女性の方が、哺乳類が発声で感情を表現する際のルールに生まれつき長けている傾向があるということです。このリサーチにおいて男性よりも女性の方が犬の吠えや唸りに込められた感情を理解する能力が高い傾向が見られたことも、ある意味予想されたことでした。
犬が「お気に入り」に選ぶのは誰?
女性の共感性の高さや他者の感情への敏感さが、犬が吠えたり唸ったりする声の意味することをよりよく理解する傾向は、女性の方が犬の「お気に入り」に選ばれやすい傾向でもあります。人間同様に犬だって自分が伝えようとしていることを、より良く分かってくれる相手に懐いたり好きになったりするのは当然とも言えますね。
しかし、ここで大切なことは「犬は男性と女性のどっちが好きか」という問題に白黒つけることではないのです。犬が「この人は信頼できる」と感じるのは、彼らが意図することや表現したいことを示すサインに注意を払って理解してくれる人です。これができれば性別に関係なく、犬と人間は強い絆を結ぶことができます。
まとめ
犬が吠えたり唸ったりする声に込められた欲求やニーズを読み取る実験において、男性よりも女性の方が高い能力を持つ傾向が確認されました。これは女性が持つ共感性や敏感性の高さから来る傾向で、犬から好かれやすい傾向とも言えます。これは言い換えれば、男性でも犬の感情に共感してサインに敏感な人は、犬のサインを読めない女性よりも犬に好かれるということでもあります。
犬から好かれ強い絆を結ぶことができるかどうかは、犬が伝えようとしていることをきちんと受け止めることができるかどうかにつながっています。そして幸いなことに、これは勉強と訓練で身につけることができるものです。セミナーや書籍を通して、犬の感情やサインを学ぶことの大切さを多くの方に知っていただきたいと思います。
《参考》
https://www.rsvplive.ie/life/family/study-finds-dogs-prefer-women-13078024
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.170134