医療サービス犬についての様々な研究を行っている大学研究室
アメリカインディアナ州にあるパデュー大学では、介助犬やセラピードッグなど医療に関するサービス犬について様々な研究を行っています。先ごろ同大学は、身体的な障害や慢性疾患を持つ人々を助ける介助犬が、心理的社会的な面でもプラスの影響を及ぼす可能性があることを示すリサーチ結果を発表しました。
介助犬が身体的な面だけでなく、心理的なサポートや社会的な助けにもなることは当たり前ではないの?と思われるかもしれません。しかし、これらのことは当たり前過ぎて、今までエビデンスベースの科学的な根拠がほとんど示されることがなかったのだそうです。
研究者は「介助犬とユーザーの結びつきから得られる恩恵は確立された事実というよりも、確認が必要な仮説であるとわかったことが、このリサーチを行った理由です。」と述べています。
介助犬ユーザーと対照グループ
リサーチはアニマルヘルスケアの企業からの資金提供と、サービスドッグ育成団体の協力を得て行われました。リサーチに参加したのは、介助犬のサポートを受けている97人と、対照グループとして介助犬が必要だが、今はまだ待機中である57人でした。参加者に対して、多項目に渡る定型の聞き取り調査と自由回答のアンケートが行われ、その結果が分析されました。
結果は予想された通り、介助犬ユーザーの人々は対照グループの人々に比べて、社会的、感情的、職場や学校での活動において明らかに高い機能を示していました。一方で睡眠や怒りの感情、社交性などについては両者に大きな差は見られませんでした。
自由回答のアンケートでは、介助犬がもたらす心理的社会的なメリットは身体的な作業に関するメリットよりも大きいという声や、介助犬と暮らす上での困った点は「介助犬についての一般への教育が浸透していないこと」「交通などアクセスの不便」「生活習慣の調整」「犬の世話」などが上がっていたことが明らかになりました。
中でも一般への教育については、介助犬を迎える前に「一般の人の理解や教育の不足は犬を迎える上での困った点だろう」と22%の人が予想していたのですが、実際に犬を迎えた後では44%の人がこれを困った点として報告していました。
また、心理的社会的なサポートについては介助犬ユーザー本人だけでなく、ユーザーの家族にとっても犬の存在がサポートになっていることも報告されました。
介助犬の恩恵をリサーチする意義
リサーチの中の聞き取り調査でも分かったように、一般の人への教育や理解の不足は介助犬と暮らす上での困った点です。しかし、2009年から2017年の間にアメリカでの介助犬の頭数は約2倍に増えています。
介助犬の恩恵は科学的に根拠のあるものだと示すことは、介助犬の価値を健康保険会社に認識させ、介助犬のメリットを効果的に最大化して、一般の理解を高めるために必要なことです。また介助犬を迎えることがメリットだけでなく、困っている点も報告されたことはリサーチの信頼性を示していると研究者は述べています。
まとめ
介助犬がもたらす恩恵について、科学的に測定可能な影響として示すことができるというアメリカのパデュー大学のリサーチの結果をご紹介しました。
アメリカは日本に比べると介助犬の数も種類も多く、一歩先を行っている印象がありますが、ユーザーが一般の人にもっと理解してもらいたいと考えていて、アクセスの不便さに困っているという共通する悩みも見られました。
このようなリサーチの結果が介助犬の育成や社会全体の理解を深める助けとなり、日本にもその良い影響が届くようになってほしいと思います。
《参考》 https://vet.purdue.edu/chab/ohaire/media.php