子犬のしつけ教室への参加が行動に及ぼす影響
近年は子犬が早い段階から、グループトレーニングなどを受ける機会が増えてきています。様々な形のトレーニングがありますが、ここでは「子犬のしつけ教室」という呼び方をします。子犬のしつけ教室に参加していたことが、成犬の年齢に達したときに犬の行動にどれくらいの影響があるのか?しつけ教室が与えた影響を検証するための実験と調査が行われ、その結果が発表されました。
子犬のしつけ教室を再現した実験
研究を行ったのはスペインのサンティアゴ・コンポステーラ大学獣医学教育病院の研究チームです。調査に参加したのは3〜9か月齢の80匹の犬で、そのうち32匹は子犬のしつけ教室に参加、48匹は不参加でした。しつけ教室は、この研究のために実験としてデザインされたものです。動物行動学者がプログラムを作り、その指揮の下でボランティアが運営を行いました。
しつけ教室の期間は6週間でした。犬たちはオンリードでの犬同士の挨拶に始まり、犬同士のゲームタイム、ポジティブ強化の方法を使った「伏せ」「待て」「呼び戻し」「ヒール歩行」などの基本のキューの訓練が行われました。
また、セッションの合間には犬が自主的にボランティアの人に近づいたり、体にタッチされることを受け入れたりしたときにはトリーツが与えられました。
そうしてしつけ教室が完了してから1年後に、参加した犬と参加しなかった犬の行動が検証されました。行動評価の方法は、飼い主が犬の行動について100項目の定められた質問票に記入するC-BARQという犬の行動解析システムが用いられました。
実験後の検証の結果は?
しつけ教室に参加した犬と参加しなかった犬の比較検証の結果は次のように、大変明確なものでした。他の犬に対する攻撃的な行動については、教室に参加した犬は犬同士の攻撃性が低かったことがわかりました。参加しなかった犬の攻撃性スコアは参加した犬の2.6倍という数字でした。
また「大きな音」「交通」「なじみのない物体や状況」と言ったものに対する恐怖や用心深さを示す行動では、参加しなかった犬は参加した犬の2.8倍のスコアでした。教室に参加した犬は周囲の環境に対しての恐れが少なかったことがわかります。入浴、グルーミング、爪切り、病院での検査など、体に触れられる場面での恐怖や防御的な行動では、教室に参加しなかった犬は参加した犬に比べて、触れられることへの感受性のスコアが3.1倍でした。
訓練のしやすさでは、教室に参加した犬は飼い主の行動に注意を払い出されたキューに従う意欲を示しました。訓練可能性についてのスコアは参加した犬は参加しなかった犬の3倍でした。このようにどの項目を取ってみても、子犬のしつけ教室は1年後に成犬の年齢になったときの犬の行動に良い影響をもたらしていました。
まとめ
子犬時代にしつけ教室に参加した経験のある犬は、そうでない犬に比べて「攻撃性」「周囲への恐怖」「触れられることへの感受性」が低く、訓練可能性が高いことがわかり、子犬時代のしつけ教室の良い影響が明らかになったという研究結果をご紹介しました。子犬の社会化の重要性は随分前から訴えられていますが、しつけ教室に参加という形で実行できるなら、ハードルが下がるのではないでしょうか。ポジティブ強化法を採用した子犬のしつけ教室が増えていくきっかけになってほしいですね。
《参考》 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1558787817302551