高齢者のためのロボット犬
テクノロジーを駆使したロボットペットは、近年ますます身近なものになりつつあります。老人ホームを訪問するセラピードッグの代わりに、AIBOなどのロボット犬でも同様の効果があったという研究も発表されています。
高齢の方にとって、孤独感を癒したり精神を安定させてくれたりするペットは大切な存在です。けれども、生きている犬や猫の世話は高齢者にとっては重荷になることも多々あり、ペットを諦める方が多いのも現実です。
アメリカのシンシナティ大学の准教授が、高齢者とペットのこのような寂しい現実を変えたいとして、同大学院の学生とプロジェクトチームを組んで、コンパニオンとしてのロボット犬の開発に取り組んでいます。
既存のロボット犬おもちゃに手を加えて
プロジェクトチームが作成した試作品は、2015年に発売された市販品のロボット犬のおもちゃをベースにして再設計されたものです。この市販のロボット犬も、今回の研究の准教授が他の大学や玩具メーカーと共同で研究して開発されました。
価格は日本円にして1万円程度で、動きも限定されていますが、高齢の購入者に好評を得ています。今回の再設計では、ユーザーのニーズをより理解して実現させ、高齢者に心理社会的支援を提供することを目標としています。
試験プログラムに参加してもらった高齢者コミュニティの人々からフィードバックを基にして、まずはロボット犬の見た目をよりリアルに再デザインさせました。手触りの良い人工ファーを使って、魅力的でリアルなヨークシャーテリアのような外見が作られました。
こちらは、プロジェクトチームの開発の様子を撮影した動画です。毛足の長いヨークシャーテリアタイプが試作品、ゴールデンレトリーバーの子犬のようなタイプが元々の市販品です。
見た目だけではない、高齢者のための様々な機能
プロジェクトチームが目指すのは、コンパニオンでもありサポート役でもあるロボット犬です。そのため、高齢者の生活のサポートのための機能も搭載されています。
- クライアントが倒れたり転んだりしたときに、ロボットが緊急連絡先に電話をかける
- ロボット犬を抱くことを介して心拍や体温などのチェックと記録を取る
- 睡眠パターンや投薬量のモニターをする
- 病院の予約、誕生日、薬の服用などのリマインダー機能
これらは、スマートウォッチのような機能を持つカラーをロボット犬の首に着けて管理します。またプロジェクトチームは、ロボット犬の再設計に当たって価格には常に注意を払ってきたということです。現在アメリカで市販されている介護用ロボットペットの価格は日本円にして約50万円相当と高額なものです。
シンシナティ大学のプロジェクトチームは、もっと一般的に手の届きやすい価格設定にして多くの人がその恩恵を受けられるようにしたいと考えているそうです。嬉しいことですね。チームでは2020年に発売できるよう、作業を継続中とのことです。
まとめ
アメリカの大学が高齢者のサポートをするコンパニオンとしてのロボット犬を開発しているという話題をご紹介しました。人は誰でも年をとります。自分もいつかは犬と暮らせなくなる日が来ることを覚悟していますが、リアルな可愛らしさと頼もしいサポート機能を兼ね備えたロボットが開発されていると聞くと、未来への希望が一つ増えたように感じます。
高齢者の入院や老人ホーム入所をきっかけに行き場がなくなってしまう犬や猫の存在も見過ごせない問題ですから、手頃な価格のロボット犬やロボット猫の開発は社会的に大きな意味のあることだと言えますね。