犬の寿命と様々な要因を分析するリサーチ
大切な愛犬には、少しでも長い間元気に生きてほしいものです。一般的にどんな犬が長生きする傾向があるのか、知りたいと思う方は多いでしょう。犬の寿命の傾向をリサーチするため、アメリカのワシントン大学の研究者が、膨大な数の犬の医療データを分析して、その結果が発表されました。
データは、2010年1月1日から2012年12月31日までの3年間に、アメリカの787の動物病院を2回以上訪れた3ヶ月齢以上の犬のものが使われています。2回以上病院を訪れた犬の総数は、約237万匹、そのうち7.6%に当たる約17万9000匹が期間中に死亡しており、このデータが分析されました。
身体上の条件での違いは?
犬の身体上の条件での寿命の違いでは、よく知られているように最も大きな要因は体のサイズでした。このリサーチでは全ての犬を小型、中型、大型、超大型の4つに分類しています。それぞれの寿命の平均は、小型犬14.95歳、中型犬13.86歳、大型犬13.38歳、超大型犬11.11歳でした。
全てのサイズのグループでミックスの犬は、純血種の犬よりも平均寿命がやや長いことが分かりました。しかし、それはミックス14.45歳、純血種14.14歳という比較的小さい差で、体格差の要因を超えるものではありませんでした。つまり、小型の純血種の犬の平均寿命は大型または超大型のミックス犬よりも長かったということです。
犬種によっても違いがあり、小型犬の中ではダックスフント、シーズー、チワワの平均寿命は15歳を超えており、超大型犬の中ではグレートデーンが9.63歳というものでした。
飼い主ができることは?
犬種や体格は固定された要因で、飼い主が何かできることではありません。しかし、飼い主に委ねられたことにも犬の寿命に関わる要因がありました。
避妊去勢処置の有無では、処置済みの犬の方が寿命が長い傾向がありました。特に雌犬に顕著で、避妊処置済みの雌犬14.35歳、未処置の雌犬13.77歳でした。雄犬ではもう少し差が小さくなりますが、去勢処置済みの雄犬14.15歳、未処置14.09歳でした。ただし、15歳以上の犬では避妊去勢処置の有無による差はありませんでした。
病院を訪れた回数では、頻繁に病院に行く犬ほど平均寿命が短いこともわかりました。元々健康な犬ならば病院は健康診断とワクチン接種くらいで、持病などのある犬は病院に行く回数も増えるので、これは納得のいく結果です。
また特筆すべきは、病院での麻酔下の歯石除去と寿命の関連でした。1回の歯石除去処置ごとに死亡リスクが約20%低下していたとのことです。
意外なところでは、肛門腺絞りの頻度と寿命にも小さいけれど関連が見られたことです。このリサーチは統計であって、健康上の因果関係を探るものではないので、歯石除去や肛門腺絞りがなぜ犬が長生きする理由につながるかわは分かりません。
相関関係として考えられるのは、病院での歯石除去や肛門腺絞りを定期的に行う飼い主は、犬の健康全般に気を配っていることを反映しており、それが長い寿命につながっているのかもしれないとのことです。
また、今回の研究チームのメンバーの1人が参加している2019年の別のリサーチでは、太り過ぎの犬は適正体重の犬よりも寿命が短いという結果も発表されています。
太り過ぎの犬は適正体重の犬よりも寿命が短くなるという研究結果
歯磨きや体全体の手入れ、体重管理などは飼い主にもできる長生きの秘訣ですね。
まとめ
ワシントン大学の研究者によって発表された、犬の寿命に関するデータについてご紹介しました。以前から言われていることと一致している部分が多いですが、飼い主が気をつけることで違いが生まれる部分もあることは心強い気がします。
とはいえ「こうすれば必ずこうなる」というわけには行かず、矛盾が多いのもまた生き物の常です。どんなに気をつけても人間の手が及ばないこともあります。
しかし、犬のために心を砕いて手をかけることで、愛犬との間に築かれる結び付きは間違いのないものです。一見味気なく見える数字のデータですが、いろいろなことを考えさせてくれるリサーチです。
《参考》
https://jaaha.org/doi/10.5326/JAAHA-MS-6763
https://www.companionanimalpsychology.com/2019/04/what-kind-of-dog-lives-longest-smaller.html