アメリカ社会の姿を追跡する世論調査とペット
1972年以来、アメリカの社会の現状や傾向などを社会科学として追跡してきた『General Social Survey=一般社会調査』(以下GSS)と呼ばれる権威ある世論調査があります。2018年の調査では、初めてペットに関連する項目が設けられました。この調査で、アメリカ国内のペットの数の定量化だけでなく、寄せられた回答から犬が社会の中、人々の暮らしの中で果たしている役割が浮き彫りになってきました。
犬と猫と幸福感
GSSの調査からは、アメリカでは10世帯のうちほぼ6世帯が少なくとも1匹の何らかのペットを飼っていることがわかりました。何らかのペットを飼っている人と、ペットを飼っていない人の幸福感についての回答では、2つのグループにはほとんど違いが見られませんでした。けれども、これを犬、猫、またはその両方という分類で幸福感を比べてみると面白い差が見えてきました。
幸福に関する項目で「自分はとても幸せだと感じる」と答えた人の数が、犬だけを飼っている人では36%、犬と猫を飼っている人では28%、猫だけを飼っている人では18%、ペットを飼っていない人では32%と、犬と猫の飼い主で大きな開きがあったのです。
GSSの調査の他の項目で、この違いを説明するものもあります。例えば、犬の飼い主は猫の飼い主よりも結婚している率が高く、また自分の家を所有している率も高いことが分かっています。どちらも幸福と人生の満足度に影響する項目です。
以前の他の調査でも犬を飼うことと幸福度に関連が
2016年の別の調査でも、猫の飼い主と比較して犬の飼い主の方が幸福度が高いと表がされています。この調査では、両者の飼い主の性格の違いにその理由が伺えます。犬の飼い主は、より気楽で、外交的で、神経質ではないという傾向が見られました。確かに幸福度の高そうな性格の傾向です。
2013年の調査では、犬を飼っていない人に比べて、犬の飼い主は野外での身体を使った活動に参加する機会が多いという結果が出ており、これは健康と幸福にとって明らかなメリットだと言えます。また、犬と散歩に出かけることで人との出会いや近所付き合いが増えて、社会的なつながりが生まれます。これも幸福度に貢献する点の一つです。
ペットとの関係性と幸福度
GSSの調査では、ペットとの関係性についての質問項目もあり、犬と猫の飼い主で結果が違っていました。ストレスを感じたとき、ペットに安心感を求めますか?という質問には、犬の飼い主の63%が「しばしば」または「ほぼいつも」と答えたのに対し、猫の飼い主では同じ回答をした人は51%でした。
ストレスを感じたとき、ペットと遊びますか?という質問では、犬の飼い主の76%が「しばしば」または「ほぼいつも」と答えていますが、猫の飼い主では同じ回答は65%でした。ペットを家族の一員だと考えていますか?という質問では犬の飼い主の93%、猫の飼い主の83%がイエスと回答しています。
これらの回答は、犬の飼い主はペットとの社会的な結びつきがより強いことを示唆しており、これもまた幸福度の高さにつながる要素です。
まとめ
アメリカで毎年行われる一般世論調査に今年初めてペットに関連する項目が設けられ、そこから犬を飼っている人の幸福度の高さが見えてきたというニュースをご紹介しました。犬と暮らしている者としては納得の行く結果ですが、猫と暮らしている方は「私は猫と一緒にいると幸せです!」と反論されることと思います。
社会科学として幸福度を調査することは興味深く、公共の福祉を高めるためにも必要なことですが、個人的な幸せは人それぞれのもの。愛する犬や猫がそばにいてくれることは、それだけで幸せですよね。