家庭内にある環境汚染物質が人にも犬にも影響
イギリスのノッティンガム大学の研究者が、ネイチャー誌のサイエンティフィックレポートに、家庭内や食べ物の中に見られる環境汚染物質の影響を発表しました。2種類の化学物質が人間と犬、両方の男性生殖能力に同等の悪影響を及ぼすことを示唆しているという内容で、生活環境や食べ物の安全について改めて深く考えさせられるものです。
その化学物質とは、フタル酸エステルとポリ塩化ビフェニルです。フタル酸エステルはプラスチックを柔軟にするために加えられ、カーペットや床材、玩具など多様な家庭用品に使用されています。もう一つのポリ塩化ビフェニル153は、過去に可塑剤、コーティング剤、塗料などに使用されており、現在は世界的に使用が禁止されているものです。しかし、過去に使用されたものが今も環境中で広く検出されていると研究者は指摘しています。
過去80年間で男性の生殖能力が低下
人間の男性の生殖能力の低下については、既に複数の研究があります。中でも過去80年間で世界規模で精子の質が50%低下していることを示す研究から、生殖能力についての懸念が高まっています。また、今回の研究者の以前の調査において、家庭犬の精子の質が急激に低下していることが示されていることから、人間と犬が共有している生活環境にある化学物質が原因ではないかという仮説が立てられました。
研究チームは、イギリスの同じ地域に住むドナーの男性と、未去勢の家庭犬の精子のサンプルを用いて、生活環境の中で生き物が暴露する濃度の化学物質の影響を調査する実験を行いました。その結果、前述の2つの化学物質がヒトと犬の両方において「精子の運動性の減少」と、「DNA損傷レベルの増加」を起こしていることが確認されました。
市民として、飼い主として知っておきたいこと
研究者はこの結果を受けて、今後さらに研究を進めていくことの重要性を述べています。生活の中の環境汚染物質は産業の影響などもあるため、一般の市民がすぐに何か行動を起こせるというものではないかもしれません。けれども知っておくことは身を守り、変化を作り出すことにもつながります。
特に私たちと一緒に暮らしている犬の体は、人間の体内にあるものを反映しているとも言えます。犬の体に入るのは飼い主が与えるものだけですから、私たちは犬に与えるものに対して「知らなかった」では済まないと言えます。
大変ショッキングなことですが、この研究の対象となっている2つの化学物質は、市販のドッグフードからも検出されていることが過去の研究で明らかになっています。また、犬の玩具や食器にも塩化ビニルなど、これらの化学物質を含むものがたくさん市販されています。今回の研究では生殖能力に焦点が当てられていますが、これらの物質は当然ながら肝臓や腎臓などの解毒器官や、脳や心臓への影響も考えられます。まずは知っておかなくては、私たち自身も犬を含めた家族も守ることができません。
まとめ
生活環境の中に存在する環境汚染物質が、人間と犬の両方の精子の質を低下させ生殖能力に悪影響を与えているという研究の結果をご紹介しました。これらの化学物質はふだんの生活の中で直接に不快感や不便を与えるものではないだけに、見過ごしがちになってしまいますが、多くの人が知識を持っておくことはとても大切な一歩だと意識していたいと思います。
《参考》 https://www.nature.com/articles/s41598-019-39913-9