犬の行動研究や査定の時に必ず出て来る「C-BARQ」って何だろう?

犬の行動研究や査定の時に必ず出て来る「C-BARQ」って何だろう?

C-BARQという言葉を聞いたことはありますか?犬の行動に関する研究や保護施設の査定などで「C-BARQを使った質問票でデータを収集」のように使われている言葉です。このC-BARQについてご紹介します。

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C-BARQとは「犬の行動評価と調査の質問票」

にらみ合う2匹の犬

犬の行動や気質について、科学者が発表した研究の報告を見ると「100匹の犬の飼い主にアンケートに答えてもらって集めたデータ」とか、「実験の前と後の行動を質問票に記入してもらって比較」などの言葉がよく登場します。

このような場合のアンケートや質問票というのは、ほぼ100%「C-BARQ」という標準化された質問への回答です。C-BARQとは、The Canine Behavioral Assessment & Research Questionnaireの頭文字を取った略称で、日本語にすると「犬の行動評価と調査の質問票」となりますが、日本ではよく「犬の行動解析システム」と呼ばれています。

2003年にアメリカのペンシルバニア大学の2人の研究者によって開発され、2005年からオンラインで一般公開されて、誰もが使えるようになっています。

現在、ペンシルバニア大学のC-BARQデータベースには雑種を含む300種類以上の犬種、約5万匹の犬の詳細な行動データが蓄積されています。

日本ではアメリカとは犬種の分布や避妊去勢の状況がかなり違うため、日本向けにカスタマイズされたC-BARQが、麻布大学の研究者によって開発され公開されています。

C-BARQの目的とは?

喧嘩する2匹のジャックラッセルテリア

C-BARQは犬の性格や気質の査定システムとして使われることもありますが、元々は家庭犬や使役犬の行動上の問題の発生率と深刻度を測定するために設計されました。

行動上の問題は、犬が保健所に連れて行かれたり、殺処分になってしまったりする理由の大きな部分を占めています。また、飼い主やハンドラーによるネグレクトや不適切な訓練手法、非人道的な扱いが行動上の問題の原因になっていることもあります。

現在、なぜこれほど多くの犬が行動上の問題を発症しているのかを探ることは、犬の福祉を向上させるための重要な課題の一つです。そのために犬の行動や問題のある部分を測定するための信頼性の高い標準化された方法として、C-BARQは重要な役割を果たしています。

具体的にはどんな質問があるの?

犬舎の犬をチェックする女性

C-BARQは犬の飼い主、またはハンドラーや取扱担当者を対象にした調査質問票です。犬の行動に関する以下のような14のカテゴリーについて数値スコアで回答するよう設計されています。

  • 見知らぬ人に対する攻撃性
  • 飼い主及び家族のメンバーに対する攻撃性
  • 見知らぬ犬に対する攻撃性
  • 同じ世帯の身近な犬に対する攻撃性
  • 見知らぬ人に対する恐怖
  • 大きな音、見知らぬ物体や状況に対する恐怖(非社会的恐怖)
  • 飼い主や家族のメンバーとの分離に関する行動
  • 愛着と注目を求める行動
  • 訓練可能性
  • 小動物などに対する追跡性
  • 興奮性
  • 触られることに対する反応
  • エネルギーレベル
  • その他の雑多な行動に関する情報

上記のような14項目について、それぞれに複数の質問が設定されているので、収集されたデータは精度の高さが見込まれます。

C-BARQは誰が何に使用している?

人の足元に伏せる盲導犬候補の子犬

一般の家庭犬の飼い主の他に、C-BARQは犬に関する様々な場面で貴重で有効なツールとして使われています。

働く犬の協会団体

盲導犬や介助犬の育成協会では、将来の介助犬の飼育過程で子犬の行動を評価するためにC-BARQを使用しています。評価をデータベース内の他の介助犬との比較をすることで、行動上の問題を発見し、早期に介入することができます。また、その後の訓練における成果の予測にも使用できるため、働く犬の訓練の効率を高めるために役立っています。

アニマルシェルターなど動物保護施設やレスキューグループ

動物保護の場面において、犬の行動上の問題は重大な関心事です。行動上の問題は、犬が飼育放棄されて保護施設に来る一般的な理由であり、その後の譲渡の可能性にも大きく影響します。また、保護施設での職員や他の犬への危険にもつながります。

犬が保護された時点でのC-BARQを使った査定は犬のスクリーニングや、合理的なリハビリテーション、個々の犬にふさわしい譲渡戦略を立てるために役立ちます。

また、一時預かりボランティアの家庭での行動の査定、譲渡後のアフターケアとして飼い主へのカウンセリングにもC-BARQは有効なツールです。

ドッグトレーナー、行動カウンセラー

犬の行動上の問題は犬の数だけあると言っても良いくらいに多様です。けれどもC-BARQによって得られたデータは、データベースに登録されると他のデータサンプルと比較されて、その問題がどの程度深刻であるのかが客観的に見られるようになっています。これはドッグトレーナーや行動カウンセラーにとって、大変有益な情報です。

ブリーダーと犬種別のケネルクラブ

きちんとしたシリアスブリーダーは、各犬の気質を考慮して繁殖に用いるかどうかを決定します。子犬の購入者に対して、成長後の犬の行動についてC-BARQを使った回答を依頼することで、均質で精度の高い情報を収集することができます。ブリーダーはこれらの情報から、特定の犬の子孫の行動や気質を知り、より良い繁殖のために利用できます。

犬の研究者

犬に関する科学の分野では、C-BARQは犬の行動を定量化するためのツールとして広く採用されています。2004年以降、様々な国の70以上の発表された研究において犬の行動の尺度として使用されてきました。C-BARQの存在が、多くの研究プロジェクトを可能にしました。

まとめ

ボールで遊ぶ2匹のビーグル犬

犬の行動を評価、調査し、定量化したデータを得るために標準化された質問票として設計されたC-BARQについてご紹介しました。
研究結果の報告などによく登場する「飼い主への聞き取り調査」という言葉には、このようなツールが使われているわけですね。

機会があれば愛犬の行動について試してみると、ふだん見えなかったものが客観的に見えるようになるかもしれません。愛犬の行動評価が世界中の犬と比較できるというのも興味深いですね。

《参考》
https://vetapps.vet.upenn.edu/cbarq/about.cfm

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