ドッグショーの世界にも男性優位の傾向がある?【研究結果】

ドッグショーの世界にも男性優位の傾向がある?【研究結果】

人間のビジネスの世界などで女性が不利になる傾向はよく取り沙汰されますが、ドッグショーにおいても性別によって差が生じているという研究結果が発表されました。犬の健康な繁殖にも関わるこの問題をご紹介します。

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ドッグショーの結果に性差はあるのか?という研究

女性ハンドラーと一緒に歩くハスキー犬

純血種の犬に関する研究の多くは、遺伝性疾患や犬の容姿の改変がもたらす影響など、健康面に関することに向けられてきました。

しかし、このたびオーストラリアのシドニー大学獣医科学校の研究チームが、ドッグショーの結果に置ける性差の調査結果を発表しました。

そしてこの調査結果が、前述したような遺伝性疾患や健康的な繁殖に関して大きな役割を果たす可能性があるというのです。一般の飼い主も知っておきたい、ドッグショーのチャンピオンの意味を考えてみたいと思います。

ドッグショーは単なるビューティーコンテストではない

ジャッジに審査されている犬

ドッグショーにはたくさんの美しい犬たちが集いますが、ショーの本来の目的は犬種スタンダードに沿った健康な子犬を産み出す能力を評価することです。犬種スタンダードとは、犬種ごとの、身長や体重、コートの特性や色、目の形状と色、耳の形状と配置など、他にも非常に多くの具体的な身体的な特徴を定めており、ショーのジャッジはそれぞれの犬が犬種の基準にどの程度沿っているかを審査します。
ジャッジは身体的な特徴の他にも、犬の気質なども評価することが求められます。

ショーの早い段階ではオス犬とメス犬は別々に審査されます。オスメス別に勝ち進んだ犬は「ベストオブブリード」の称号を競います。ここではオスとメスが同じように審査されるため、今回研究チームが調査をしたのはドッグショーのこの段階です。(ジャパンケネルクラブのショーでは、最終の「ベストインショー」以外、ずっとオスとメスは別々に審査されます。)

研究チームの調査の方法

研究チームは、2015年と2016年の18件のドッグショーの結果を使用して調査を行いました。トイ犬種と超大型犬種12品種1080匹を対象として、ベストオブブリードを勝ち取った137匹の犬の性別を調べました。

1080匹のうちオス犬は48.4%メス犬は51.6%でした。メス犬の割合がわずかながら高かったにも関わらず、ベストオブブリードの137匹の割合はオス犬86匹(62.8%)メス犬51匹(37.2%)と、明らかにオス犬に偏っていました。

ショーの次の段階の「ベストイングループ」では、オス犬がベスト又は2位を勝ち取った率は雌犬のほぼ4倍という大きな差がありました。

ドッグショーのベストがオス犬に偏ることの弊害

並んで休む2匹のサルーキ

今回の研究では、この性別によるベスト勝率の差がなぜ起こるのかは明らかになっていませんが、一般的にオス犬はメス犬に比べてやや大きめで活発である傾向があるので、並んだときにオス犬の方が際立って見えやすいのでは?と考えられています。

しかし、研究者が危惧するのは、オス犬がベストを多く勝ち取ることで「人気のあるオス親効果」がより顕著になるのではないかということです。人気のあるオス親効果とは、ショーや競技会で勝利したオス犬に繁殖の依頼が集中してしまうことを指します。(メス犬の場合は繁殖の機会の回数が限られているため、オス親効果のような極端なことは起こりにくいのです。)

同じオス犬を父親に持つ犬が増えることで遺伝子プールは狭くなり、遺伝的多様性を大幅に減少させてしまいます。また、後の世代で同系交配の可能性が高くなるおそれもあります。これらは遺伝性疾患や障害が起きる可能性を高め、好ましくない遺伝子を拡散することにもつながります。

これでは「健康な子犬を産み出す能力を評価する」というショー本来の目的から大きくかけ離れてしまいます。

今回のような研究でドッグショーの問題が明らかになれば、犬種スタンダードの見直しや審査方法の見直しなど対策を立てる手助けになります。

まとめ

たくさんのトロフィーに囲まれたパピヨン

シドニー大学の研究チームが発表した、ドッグショーにおいてオス犬がベストオブブリードやベストイングループを勝ち取る率が明らかに高いという調査結果をご紹介しました。

この傾向は、犬種の健全な繁殖や遺伝性疾患の撲滅の大きな妨げとなることが考えられるため、今後の対策が必要です。

一般の人には縁の薄い世界ですので、ブリーダーなどから子犬を購入しようとするとき、「父犬はチャンピオン権です」と言われると「それは素晴らしい!」と手放しで考えてしまいがちです。

しかし、そこには何世代にも渡って病気や障害に苦しむ犬が産まれてくる可能性が潜んでいるということを知っておきたいと思います。

《参考》
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30567298

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