犬の顔認知についての研究結果

犬の顔認知についての研究結果

犬が人間の顔を認識していることは分かっていますが、MRIを使って脳のどの部分で顔を認識しているのかを測定したところ、新たな発見がありました。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

犬は脳のどの領域で人間の顔を認知しているのか?

見つめるワイヤーヘアのダックスフンド

犬と暮らしている人なら、犬が私たち人間の顔を認識していることは、ごく当たり前のこととして受け止めていますし、実際に犬は人間の顔を判別していること、犬は画像上の人間の顔も認識できること、さらに人間の表情も区別できていることなどが過去の研究からも分かっています。

顔認知については、認知科学の一領域として人間で多くの研究が行われている他、いくつかの動物でも研究が進められています。犬でも、人間と同様に顔認知は側頭葉で行われていると考えられる研究結果が過去に示されていますが、今回、犬に人間の顔と犬の顔の映像を見せた時、脳のどの領域が活性化するのかをより詳細に解析する研究が行われ、アメリカのオーバーン大学の研究者らによって発表されました。

犬が人間の顔と犬の顔を見たときに活性化した脳内の領域

見つめ合う女性とテリア犬

MRIを使っての実験は、6か月齢から3歳までの探知犬12匹が参加して行われました。犬たちは麻酔なしでMRI装置内に静かに伏せていられるように、あらかじめ訓練を受けています。

装置の中で伏せた状態の犬に人間の顔と犬の顔の写真を見せ、そのときに脳のどの領域が活動をしたかが記録されました。見せられた写真は、人間の場合は「犬がよく知っているトレーナー」「犬が知らないトレーナー」で、それぞれに3つの異なる表情が表れている写真を、複数人分用いました。犬の写真では、「犬がよく知っている犬」「犬が面識のない犬」が使用されました。

その結果、以下のことが分かりました。

1. 過去の研究と同様に、犬が人間や犬の顔を見せられた時には、側頭葉の一部が活性化した。人間の顔を見せられた時と犬の顔を見せられた時では、近いけれども明らかに違う部位の活性化が見られた。

2. 活性化する脳の部位は、写真の人間や犬を知っているかどうかと人の表情によっては変わらなかった。

3. 犬の脳で「人間の顔を見た時に反応する領域」は、人間の脳の『紡錘状回顔領域』として知られる領域に一致していた。『紡錘状回顔領域』とは、人間の脳で特に顔の形の認識に関与していると考えられている領域。

一方、「犬の顔を見た時に反応する領域」は、人間の脳の『上側頭回』に一致していた。『上側頭回』は、顔認知の中でも特に位置や動きの認識に関与すると考えられている領域。

今回の研究では、犬が何をもって「犬の顔」と「人間の顔」を区別しているのかは分かっていません。また、過去に家庭犬を用いて行われた研究では、犬が「犬の顔」と「人間の顔」を見た時に同じ部位が活性化したと結論づけられていて、今回の研究結果との違いについては、実験に参加した犬が家庭犬と家庭犬ではない犬(探知犬)という違いによるものかもしれないと推論されています。トレーナーという人間の存在が探知犬では非常に重要なものであったり、家庭犬は探知犬よりもはるかに多くの時間を人間社会の中で暮らしていたりすることなどがその違いを生んでいるのかもしれない、ということです。

高度な社会性を持つ人間において、相手を知っているかどうかは社会的行動に影響を与える大きな要因なので、人間の顔認知においては、知っている相手かどうかで活性化する脳の部位に差が見られるとする研究結果もあるそうです。それが事実であれば、今回の犬の実験においても、写真を見た時に活性化した脳の部位に差が見られると考えられます。しかし今回の研究では、人間についても犬についても、犬がその人間(犬)を知っているかどうかで脳のどの部位が活性化したかに違いは見られませんでした。

犬の「顔認知」今後の課題

犬の脳イメージ

以前の犬の認知科学における研究では、犬が人間の顔を認識する能力は、人間により近いと考えられるサルの能力を超えていることすら示されているそうです。しかし、まだ発展途上の犬の認知科学において、今回の結果から「犬の脳のどの部位が顔認知に関与している」と結論づけるのは時期尚早とのことです。

また、社会性を持つ動物である犬にとって社会的認知は重要なプロセスであり、犬同士の社会的な関係性によって顔認知にかかわる脳領域の活性化度合いが変わる可能性も考えられます。それを検証するためには、様々な犬を用いてもっと長期的な研究を行う必要があるとのことです。

また、今回行われたfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を犬の行動を検証するために用い、画像で表される脳機能と犬自身の行動との関連について研究していくべきだ、と研究者らは訴えています。そのような研究結果は、探知犬やサービスドッグのように仕事を持つ犬の選別とトレーニングに役立つと考えているそうです

まとめ

犬と女性の瞳アップ

アメリカの大学がfMRIを用いて行った実験で、犬が人間の顔を見たときと犬の顔を見たときに、それぞれ脳の違う領域が活性化したことがわかったという結果をご紹介しました。

犬が麻酔なしでMRIを使った検査を受けるための訓練法が確立されて以来、犬の脳の様々な活動について知ることができています。

このように犬の認知科学についての研究が進むことは、様々な動物の脳機能や行動について多くの情報を提供することになり、認知機能の進化の歴史を紐解く一助になるそうです。しかしそれだけではなく、一般の飼い主が愛犬を理解する助けにもなっていくことでしょう。今後も犬の脳研究をチェックしておきたいと思います。

《紹介した論文》
Thompkins, A.M., Ramaiahgari, B., Zhao, S. et al. Separate brain areas for processing human and dog faces as revealed by awake fMRI in dogs (Canis familiaris). Learn Behav 46, 561–573 (2018).

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