犬の利き足と脳の活動
特定の知的活動が、脳の左右どちらかで行われることを脳機能の側性化と呼びます。
犬の脳機能の側性化についてはたくさんの研究があり、それが利き足との関連について考察されていることもしばしばあります。
以前の研究では、「左利きの犬は右利きまたは両利きの犬よりも、知らない人に対して攻撃的な傾向が強い」「右利きの犬は目新しいことに遭遇しても、落ち着いていて興奮度が低い」「両利きの犬は左右どちらかの利き足を持つ犬よりも、大きな音に対してより強く反応する」などの報告が発表されています。
脳の右側と左側はそれぞれに違う血的活動を担当しており、右側の脳は身体の左側と、左側の脳は身体の右側と関連しているため、左右どちらかの利き足が感情や行動と関連していることは不思議ではありません。
そして最近、北アイルランドのクイーンズ大学ベルファストの研究チームが、犬の利き足と行動の問題との関連についての新しい研究結果を発表しました。
利き足の特定と行動問題の評価
研究に参加する犬は、一般の家庭犬が募集されました。犬たちは行動上の問題がある52匹の犬と、特に問題のない61匹のグループに分けられました。
各犬は利き足を特定するために、トリーツを詰めたコングを与えられ、左右どちらの足でコングを押さえるかを100回分記録し、その結果から「右利き」「左利き」「両利き」に分類されました。
分類は右利きが28%、左利きが25%、両利きが47%という結果でした。この分布と利き足の傾向の強さに関しては、2つのグループの間に違いはありませんでした。
各犬の飼い主は、犬の行動や気質を評価するためのツールであるC-BARQの100の質問に答えました。
行動問題有りグループでは、「見知らぬ人への攻撃性」「見知らぬ人への恐怖」「見知らぬ犬への攻撃性」「非社会的な恐怖」「触られることへの過敏性」「訓練可能性」において、より高い得点を示しました。
問題なしグループでは、「身近な犬への攻撃性」でより高い得点を示しました。
「分離不安」「興奮性」「注意を引きたがる」「追いかけ」「飼い主への攻撃性」「エネルギー」についてのスコアでは、2つのグループの間に有意な違いは見られませんでした。
利き足と行動の問題にはこんな関連が見られた
このようにあらかじめ分類していた「問題有り」「問題なし」の2つのグループの間には、利き足と関連した違いはないように見えたのですが、比較の焦点を利き足にした場合、利き足と行動の問題にいくつかの関連が見つかりました。
- 左利きの犬は右利きまたは両利きの犬よりも、見知らぬ人への攻撃性が低い。
- 「行動問題有り」のグループでは、右利き傾向が強いほど「見知らぬ人への攻撃性」「見知らぬ人への恐怖」「注意を引きたがる」のスコアが高い。
これは、以前に発表されている他の研究と一致していません。
この件に関して研究者は、「我々はコングを押さえる足を利き足として考えていたが、もしかしたら犬にとっては体を支えるもう一方の足の方が重要で、そちら本当の利き足なのかもしれない」と示唆しています。そうであれば、違う方法で評価された以前の利き足の研究結果と一致が見られます。
また最近の別の研究では、目的によって利き足が変わる可能性も示唆されています。人間で言えば、スプーンを使う、ボールを投げる、文字を書くなど目的に応じてどちらの手を使うかが異なる場合です。
犬の利き足と感情や行動について、何らかの関連があることは確かなようですが、その明確な相関関係についてはまだまだ研究が必要であるようです。
まとめ
犬の利き足と行動問題との関連についての研究結果をご紹介しました。
ここで紹介したクイーンズ大学ベルファストの研究の結果は、「おお!」と膝を打つような明確なものではありませんでしたが、今おもちゃで遊んでいる犬の前足が、彼らの脳の左右どちらかと密接に関連していて、感情や行動にも影響を与えていると思うと、胸がワクワクする気がします。
この分野は今後も多くの研究が発表されていくことでしょう。とても身近でいて未知の分野の研究、楽しみですね。
《参考》
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0168159118303174?dgcid=raven_sd_via_email
ユーザーのコメント
女性 こじろう
愛犬はどうやら左利きのようで、ドアを開ける、ボールを追うなど左脚を使っています。
性格は愛犬の犬種で言われている通り、フレンドリーで攻撃性は無く、吠える事もありません。
性格は生まれ持ったもの、又は環境によるものではないでしょうか。