アメリカ大手ペット用品店が合成添加物を含む製品の販売をストップ宣言

アメリカ大手ペット用品店が合成添加物を含む製品の販売をストップ宣言

アメリカの大手ペット用品店が、人工着色料や人工保存料などを含むフードやトリーツの販売を中止することを発表しました。詳しい内容をご紹介します。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

大手ペット用品店が発表した大胆な決断

店頭に並んだペットフード

アメリカで全国展開している、大手ペット用品店のPETCOが2018年11月13日、「2019年5月までに人工着色料、人工香料、人工保存料が含まれているペットフード、およびペットトリーツの販売を取りやめる」と発表しました。

当該製品はアメリカ全土とメキシコ、プエルトリコにある、1500以上ものPETCO実店舗とオンラインマーケットの両方から消えることになります。

同社は、「ビジネスとしてどうかという疑問の声があるのは承知しているが、私たちにとって正しいことはペットの健康を最優先にすること。愛するペットのために他の業者も我々に追随することを望む。」と述べています。

PETCOが取扱いを止める具体的な成分とは?

ストップサインの看板を持った猫と犬

PETCO社がフードに含まれていると取り扱いをやめる合成添加物は、人工着色料、人工香料、人工保存料の3つです。どの成分がその3つに該当するかは、米国飼料管理協会(AAFCO)とアメリカ食品医薬品局(FDA)のガイドラインを参考にしたと発表しています。取り除かれることになった成分は、具体的には以下のようなものです。

人工的な着色料

原料が天然由来ではない、食品に色を加える染料および顔料、又は他の物質。日本では「青色〇〇号」「赤色××号」のように表記されているものが該当します。また、白色の着色料としてペットフードにも多く使用される二酸化チタンも含まれます。

人工的な香料

天然由来ではない、食品に香りや風味を加える物質。植物や肉や魚、乳製品、発酵食品などに由来する香料は含まれません。同社のサイトでは、20種類以上の人工フレーバーがリストアップされているのですが、一般的にフードやトリーツのラベルには、単に「人工香料」または「香料」としか表記されていない場合が多いです。アセトアルデヒド(フルーツ系香料)、ジアセチル(バター、チーズ系香料)、グリセリン(甘み及び保湿)などが含まれます。

人工的な保存料

天然化合物の誘導体(ビタミンE誘導体など)や天然の化合物の構造を真似た物質以外で、バクテリアなどによる腐敗や、酸化、変色などを防ぐために食品に添加される化学物質。安息香酸、BHA、BHT、エトキシキン、プロピレングリコール、メチルパラベンなどを含む計21種類が対象です。

業界の対応は?

カラフルな色のドッグフード

PETCO社はこの大胆な決断で、現在の概算では年間売上高にして1億ドル(約113億円)を失うかもしれないと言われています。ペット用品小売の最大手だとしても、このインパクトは相当なものかもしれませんが、PETCO社は業界初となるこの試みを行うことを決断しました。

同社は2019年1月から、該当する添加物を含む商品の取り扱いを順次やめていくそうですが、これにより、PETCO社の新基準を満たすために製品の原料を変更するメーカーや、PETCOで販売されなくなるメーカーやブランドが出てくることになるそうです。

業界の大手がこのような決断をすることで、メーカーが製品にこれらの成分を使うことを止めるという動きは、多くの消費者にとって歓迎すべきことだと思います。また、「これらの成分が入っている製品は扱いません」と宣言したことが報道されると、消費者がペットフードやトリーツの成分に注意を向けるきっかけにもなります。

上に記した合成添加物の数々は、もちろんアメリカでも日本でも使用が許可されているものばかりです。

PETCO社はアメリカの企業ですが、大手メーカーの動きは日本の消費者にも影響が及ぶものです。今後も、同業他社やペットフードメーカーの動向に注目したいと思います。

まとめ

フードを食べる犬と猫

アメリカの大手ペット用品小売業のPETCO社が、人工の添加物を使用したフードやトリーツの販売を取りやめると発表した話題をご紹介しました。

大手企業の決断は、メーカーや同業他社にも影響するため、日本で販売されているペットフードにも変化が起きる可能性もあります。

そして、大切な愛犬に与える食べものに含まれる成分のうち、企業が取扱いを敬遠するものはどれかを知っておくのは大切なことだと思います。

《参考》
PETCO社が扱わないとしている人工的な添加物のリスト(PETCO社のコラム)
https://www.petco.com/shop/en/petcostore/c/betternutrition
PETCO社のプレスリリース(2018年11月13日)
https://corporate.petco.com/2018-11-13-Petco-First-and-Only-Major-Retailer-of-Pet-Food-to-Not-Sell-Food-and-Treats-with-Artificial-Ingredients
PETCO社が本社をおくサンディエゴの地元紙の記事
https://www.sandiegouniontribune.com/business/retail/sd-fi-petco-pet-food-20181113-story.html

【獣医師の補足】

 PETCO社が業界初の試みを行ったことは過去にもあり、2014年には安全性を心配した消費者からの声を受けて中国製トリーツの販売を中止したことがあります。
 「この添加物が含まれているフードの販売を中止した会社がある」と聞くと、その添加物はペットの体に悪いものだという印象を多くの人が持つと思いますが、ペットに対する合成添加物の影響については科学的な裏付けが少なく、今回のPETCO社の決定も、純粋に「ペットフードの安全性を心配する消費者に買ってもらいやすくする」マーケティング戦略の一つだという見方もあります。
 PETCO社が今回、含まれているフードの取り扱いを中止した酸化防止剤の一つにBHAがあり、BHAを使用しているペットフードの1つとしてロイヤルカナンがよく話題にあがっていました。PETCO社の今回の取り組みとの関係は不明ですが、ロイヤルカナンジャポンは、使用する酸化防止剤をミックストコフェロールとローズマリーエキスだけに変更することを2020年12月21日に発表しました。2020年12月下旬より順次、製品の切り替えが行われているそうです。

獣医師:木下明紀子

ロイヤルカナンジャポン合同会社からの発表
https://www.royalcanin.com/jp/about-us/news/2101-announcement-ingredient-naox
《その他の参考記事》
https://www.dvm360.com/view/petco-bans-pet-food-and-treats-with-artificial-ingredients
https://www.ocregister.com/2018/11/13/petco-to-stop-selling-pet-food-with-artificial-ingredients-in-100-million-wager/

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    30代 男性 やみす

    ロイヤルなんとかもBHAが入っています メーカーは通常の十分の一だと言っていますがそんな言い訳に意味はなく入っている自体が問題なんです
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