犬と小児喘息とアレルギーの関連
妊娠中のお母さんが犬と暮らしていたり、生まれたときから犬と暮らしていたりした子供は、7歳の時点で小児喘息に掛かっている率が13%低いという研究結果は、2015年にスウェーデンのウプサラ大学の研究者によって発表されています。
今回、同じウプサラ大学の研究者と、スウェーデンのカロリンスカ研究所が新しい研究を発表しました。
今回のテーマは、子供が犬とともに育つことと、小児喘息のリスクの低下との関連性が犬の性別、犬種、犬の数、犬のサイズなどによって変わるかどうかが焦点になっています。また同時に、「アレルギーを起こしにくい」と言われている犬種についてもリサーチが行われました。
どんな犬が最も小児喘息やアレルギーのリスクを下げる?
今回のリサーチは、2001年1月1日から2004年12月31日までにスウェーデンで生まれ、生後1年の間犬と暮らしていた全ての子供(約23600人)が含まれます。子供については、公的に登録された匿名の医療データが使われ、犬についてはスウェーデン・ケネルクラブと農業省の登録データが使われました。犬は、性別、犬種、飼育数、サイズ、低アレルギー誘発か否か、で分類されました。
研究チームは、犬の特徴と6歳時点での喘息および、アレルギー診断の関連を分析しました。分析のためのデータには、親の喘息およびアレルギー病歴、地理的データ、兄弟の数など発症のリスクに影響する可能性の全てが含まれています。
分析の結果わかったことは次のようなものでした。
- メス犬のみがいる家庭の子供は、オス犬のみの家庭の子供と比べて喘息の有病率が16%低かった
- オス犬と暮らす子供と、犬がいない家庭の子供には有意な差が見られなかった
- 2匹以上の犬と暮らす子供は、1匹の場合よりも喘息の有病率が21%低かった
- 「アレルギーを起こしにくい」と言われる犬種と喘息のリスクには関連がなかった
- 喘息/アレルギーのある両親の子供は、ない両親の子供よりも「アレルギーを起こしにくい」と言われている犬と暮らしている率が高かった(11.7%対7.6%)
- 「アレルギーを起こしにくい」と言われる犬種と暮らす子供は、アレルギー有病率が27%高かった
アレルギーを起こしにくい犬種というのは存在しない?
上記のように、小児喘息については「メス犬」「多頭飼い」という明らかなリスク低下要因が明らかになりました。
一方アレルギーについては、最後の「アレルギーを起こしにくいと言われる犬種と暮らす子供はアレルギー率が高い」という、一見驚くような結果も出ています。これについては、両親にアレルギー歴がある場合(=リスク要因のひとつ)低アレルギー誘発と言われる犬種を選ぶ率が高いからです。
研究者によると、
とのことです。
また、「アレルギーを起こしにくい」と言われているいくつかの犬種については、今のところ科学的な証明はされていません。
今回のリサーチでも、アレルギー歴のある両親がわざわざ低アレルギー犬種を選んでも、高いアレルギー有病率が示されているように、残念ながらアレルギーを起こしにくい犬種というのはないと考えた方が良さそうです。
この結果を受けて、小児科病院の専門家は、
と述べています。
まとめ
スウェーデンの研究者によって発表された、犬と暮らすことと小児喘息やアレルギーのリスクとの関連についての新しいリサーチ結果をご紹介しました。
小児喘息とアレルギーで対照的な結果に見えますが、アレルギーは範囲も広く、因果関係なども複雑なため、統計分析だけでは分からないことがたくさんあります。
今後のさらに深い研究に期待したいですね。
《参考》
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/11/181115115353.htm