スコットランドの違法子犬業者撲滅キャンペーン
他の国同様にスコットランドにおいても、パピーファームと呼ばれる非人道的な環境で、子犬を繁殖して販売をする業者は跡を絶ちません。そんな現状を打開するために、この度スコットランド政府と、スコットランド動物虐待防止協会など動物保護団体が協力しあって、「子犬を安全に購入しようキャンペーン」が開始されました。
スコットランドでは許可証のない、自称ブリーダーが子犬を販売することは違法です。そのような不法な取引の片棒を担いでしまう事態にならないよう、違法業者の手口や、パピーファームの犬を購入することのリスクを、一般消費者に広く知らせることがキャンペーンの狙いです。
違法な繁殖業者の手口
犬の福祉など全く考慮しない不衛生で非人道的な環境で、機械のように子犬を産むことを強制される母犬とそこにいる子犬。動物福祉について何も知らないという人でも、さすがにこういう環境のところから子犬を購入しようと思う人は滅多にいないでしょう。そこで、違法業者はあらゆる偽造を行います。
- 家庭的なブリーダーを装うために家を借りて、販売用の子犬を見せる
- 本当の母犬はボロボロで見せられないので、関係のない犬を連れてきて母犬だと言う
- 繁殖業者としての許可証、子犬の繁殖のための書類などを偽造する
「ブリーダーから購入するときには母犬を見せてもらうこと」という情報は、最近は多くの消費者が知っているので、母犬までも偽造するわけですね。
人間が子犬を抱き上げたり、一緒に遊んでいたりするとき、子犬に関心を示さない犬は本当の母犬ではない可能性が高いとのことです。
また許可証など書類を見せられたら、必ず番号を控えて帰り、然るべき機関で確認することが大切です。くれぐれもその場ですぐに支払をして、子犬を連れ帰ってくることのないようにと呼びかけられています。
また、多くの違法業者が使うもっと手軽な方法はオンライン販売です。スコットランドでは子犬を購入した人の4人に1人は、オンライン販売を利用したと答えているそうです。スコットランドに限らず、オンラインで実際の子犬を見ることもなく購入することは、動物福祉、消費者保護などあらゆる面で大きく間違っています。
パピーファーム出身の子犬を購入するリスク
このスコットランドのキャンペーンの公式サイトで呼びかけられている、違法業者から子犬を購入することのリスクは次のようなものです。
高い死亡リスク
オンラインで購入された子犬の4匹に1匹は、5歳の誕生日を迎える前に命を落としています。3匹に1匹は最初の1年に大きな病気をしています。
高い疾患リスク
違法業者は、遺伝疾患のスクリーニングや交配のルールなどの最低ラインを守っているはずもないので、成犬になって以降も遺伝的な病気が発症するリスクが高いのです。
高い医療費
病気になる率が高いということは、当然医療費もそれだけ高く掛かるということです。違法業者から子犬を購入した飼い主の5人に1人は、子犬が生後6ヶ月を迎えるまでの間に500〜1000ポンド(日本円にして約7万3千円〜14万7千円)の医療費がかかったと答えています。正規のブリーダーから子犬を購入した場合にかかる生涯の医療費は、パピーファーム出身のいぬに比べて平均20%低いとも言われています。
高い問題行動リスク
子犬の頃に経験した高いストレスから、分離不安や攻撃的な行動などを示す子犬も少なくありません。
違法業者に資金提供をするリスク
「そんなひどい環境にいるなら、余計にそこから子犬を救い出してやるべきじゃない?」と想うひとがいるのも、もっともなことです。けれども、違法業者から犬を購入するということは彼らに資金を提供し、次の不幸な犬を生み出す片棒を担いでしまうということです。犬たちの苦しみをエンドレスにしないためにも、資金を断つことが重要です。
まとめ
スコットランド政府と動物保護団体が共同でスタートした、「子犬を安全に購入しようキャンペーン」の内容をご紹介しました。
細かい部分に違いはあっても、日本でパピーミルと呼ばれる繁殖業者や知識のない素人繁殖の子犬を購入することも、同じ種類の問題やリスクを抱えています。このような問題を多くの人に広く知っていただきたいと切に願います。
《参考》
https://www.buyapuppysafely.org/
https://www.bbc.com/news/uk-scotland-46124117