マラリアを嗅ぎ分ける犬の研究
ガンや糖尿病などの患者を嗅ぎ分け、病気の早期発見をサポートするメディカル探知犬の存在は、よく知られています。
このたびイギリスで、ダーラム大学、ロンドン衛生熱帯医学研究所、NPO団体メディカルディテクションドッグズが共同で、マラリアの感染者を嗅ぎ分ける犬の訓練と、研究の結果が発表されました。
マラリアのような寄生虫感染症探知のために犬が訓練された例は、これが初めてのことだそうです。
研究や調査はまだ初期段階ですが、今回発表された内容は将来へ向けて期待を持てるもののようです。
マラリアという感染症
マラリアはマラリア原虫を持っているメスのハマダラ蚊に刺されることによって伝染します。
罹患者は世界中で年間約2億2000万人、死亡者は年間約66万人にのぼるとWHOによって報告されています。
症例の多くはサハラ以南のアフリカに集中しています。
予防薬による予防や抗マラリア薬による治療が可能なので、早期に発見して適切な治療を行うことで多くの命を救い、国境を越えて病気が広がることを阻止できます。
そのため、感染に気づいていない人を探知することができるメディカル探知犬の働きが期待されます。
マラリア探知犬リサーチの方法
マラリア原虫が体内に入ると体臭が特徴的に変化するので、探知はそれを元に行われます。
リサーチに協力したのは、西アフリカのガンビア川流域の5歳から14歳までの子供たちでした。
研究者は子供たちにナイロン靴下を一晩履いてもらい、その靴下をサンプルとして使用しました。ナイロンは他の素材よりも匂いが付きやすく、長持ちするので選ばれました。
同時にその子供たちの血液検査を行い、誰がマラリアに感染しているか否かかがスクリーニングされました。
靴下のサンプルは、研究協力者のひとつであるNPO団体メディカルディテクションドッグズに、冷凍輸送されました。
この団体はメディカル探知犬の訓練施設で、1匹のラブラドールと1匹のラブ×ゴールデンレトリーバーのクロス犬が、マラリア探知の訓練を受けています。
2匹の犬は、30人分のマラリア感染サンプルと145人分マラリア非感染サンプルの靴下を試験しました。その結果は、感染サンプルの70%、非感染サンプルの90%が正確に特定されました。
研究者は、初期段階のこの結果に満足していると述べており、犬が実際の人間や着用したばかりの衣服を提示された場合には、探知の精度はさらに高くなるだろうと予想しています。
この動画は、メディカルディテクションドッグズ での訓練風景や、研究者の談話が収められたものです。
動画に登場しているのは3匹目のマラリア探知犬として、訓練を受けているスプリンガースパニエルです。
まとめ
イギリスの研究者によって発表された、マラリア探知犬の研究をご紹介しました。
今後さらに研究が必要ですが、探知犬たちはマラリアの感染者を迅速に診断するので、症状を示していない人々の早期治療を助け、マラリアの伝播を防ぐのにも役立つ可能性が期待されています。
人類はまたひとつ犬に助けてもらう事柄が増えたようですね。
《参考》
https://www.medicaldetectiondogs.org.uk/malaria-results-from-our-research/
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/malaria/