消化酵素の種類
食べ物を体内に摂り入れたときに、それを栄養素に変えて吸収利用するためには、消化器官において消化を行う必要があります。
その消化には、人間を含む動物の体内に存在する「消化酵素」と、食べ物に含まれる「食物酵素」というものがあります。
この酵素には数多くの種類があり、それぞれ働く場所も働き方も異なりますが、どれも非常に重要なものです。
消化酵素も食物酵素も、様々な理由から十分な量が摂取できないということがあり、消化不良を起こして体調を崩す原因となってしまうことがあります。
消化酵素の働き
元々体内に存在している消化酵素ですが、それぞれが特定の働きのみを行うため、その種類は細かく分類すると数千種類になると言われています。
その中で特に重要だとされているのが、たんぱく質をアミノ酸に分解する「プロテアーゼ」や、デンプンや多糖類を含む炭水化物をエネルギー源として利用できる、ラクトースやマルトースといった物質に分解する「アミラーゼ」。
また、胃液・膵液に含まれる「リパーゼ」は、脂肪を分解消化し、「セルラーゼ」は繊維を分解、小腸の絨毛に小腸ある「マルターゼ」は、マルトースを最小単位のグルコースまで分解します。
犬と人間の消化能力の違い
犬と人間は必要とされる栄養素のバランスも異なるとされていますが、その理由のひとつに消化能力の違いがあることも挙げられます。
犬と人間の消化能力の違いは、体内に存在する消化酵素の種類の違いと、消化したものを栄養として吸収する腸の長さの違いが大きいとされています。
人
食べ物を食べたときに、最初に行われる消化活動が口の中での咀嚼です。
人間の奥歯は大きく平らになっているため、食べ物を小さくした上にすりつぶして、胃の中で消化しやすい状態にします。
さらに唾液にアミラーゼが含まれているため、消化にやや時間のかかる炭水化物を分解してエネルギー源として変化させます。
犬
犬の場合は、人間や草食動物のように食べ物をすりつぶしたり、よく噛んで小さくすることのできるような臼状の歯は持たず、また唾液にデンプンを分解するアミラーゼが含まれていません。
そのため、犬は口の中ではほとんど消化が進まず、飲める大きさに噛み切ること程度しかできません。
しかし胃の中に入ると、犬の消化活動が一気に進みます。
犬の胃酸は、食中毒の原因になるほどの細菌なども死滅させてしまうほど強力で、食べ物も一気に小さく分解していきます。
さらに肝臓や胆のう、すい臓などでも、それぞれの消化酵素が働き分解・消化を進めていきます。
犬は人に比べて腸が短い
分解された食べ物は、腸内で吸収され体を動かしたり調整したりするための栄養素となりますが、犬の場合は、祖先が肉食傾向にある動物ということもあり、人間に比べて腸の長さが短いのです。
そのため一度に大量に食べ物を食べたり、消化が難しい食べ物を食べたりした場合などは、栄養素として吸収しきれないまま、体外に排出されてしまうこともあるのです。
消化酵素が不足する原因と対策
原因
消化酵素は元々体内にあるとされていますが、様々な理由から十分な量がつくられず、消化がしっかりと行われなかったり、他に存在する代謝酵素を減らしてしまったりするということがあり体に余計な負担をかけてしまいます。
消化酵素が不足する原因としては、加齢やストレス、生活習慣の乱れなどが考えられ、その他にも消化酵素をつくり出すたんぱく質の摂取不足や、酵素をたっぷり含む生野菜や果実などを食べていないといった食生活の問題、すい臓や腎臓・肝臓などを患っているなどの、健康問題が考えられます。
対策
加齢などで消化酵素の生成が減少してしまうのは、ある程度仕方のないことですが、食生活や生活習慣を整えてストレスを減らし、健康的な生活をすることが大切です。
消化酵素は熱によって破壊されてしまうため、加熱処理されたレトルトなどの加工食品や、生で食べることはほぼない、米やパンなどの炭水化物ばかりを食べていると、消化酵素がつくられにくくなり、不足してしまうので注意しましょう。
<まとめ>犬の持つ消化酵素について
犬の唾液には、炭水化物に含まれるデンプンを分解するアミラーゼといった消化酵素が存在しないなど、犬と人間の消化能力には違いがあります。
犬は雑食性が強いとはいえ、人間に比べると体の仕組みはやや肉食に偏っているため、犬の体に負担をかけないためには、たんぱく質多めで炭水化物はやや控えめの食事にするといいと思います。
もちろん犬の中でも消化能力には個体差があるので、毎日のウンチの状態などを確認しながら、消化しやすい食事を与えられるようにすることをおすすめします。