「子供がぜんそくなので犬を手放す」は必要ないかもしれません
子供が小児ぜんそくと診断されたために、今まで飼っていたペットのもらい手を探さなくてはならない、又は最初から犬と暮らすことは諦めなくてはならないという話を、耳にしたことがある人も多いでしょう。小児ぜんそくとペットというのは、相入れないものだと多くの人が考えています。
しかし、その常識を覆す研究が発表されました。この研究は、アメリカはオハイオ州コロンバスにあるネイションワイド小児病院の研究者によるもので、実際に多くの小児ぜんそく患者の治療をしている病院です。
ぜんそく治療中の子供を対象にした大規模リサーチ
研究のためにリサーチに参加したのは、2〜17歳の軽度〜中度のぜんそく患者395人です。
患者への投薬や治療が、『全国ぜんそく教育予防プログラム』に定められた治療のガイドラインに従ってしっかりと管理され、患者の暮らす環境との関連が調査されました。
対象となった患者の健康状態は、3〜6か月ごとに評価され、リサーチ期間は各々3年間でした。また患者のうち約55%は、家庭で犬や猫などペットと接触していました。
リサーチした患者のデータを比較した結果、犬や猫のいる環境で暮らしている患者と、そうでない患者は、ガイドラインを遵守した治療によって、同じように改善していたとのことです。
ペットを遠ざけるよりも重要で効果的なこと
研究者はリサーチの結果から、ぜんそくの患者がペットと接触していても、治療のガイドラインを遵守していれば、治療の結果に重大な影響を及ぼさないと結論づけました。
つまり、子供がぜんそくと診断されたときにペットを手放すよりも重要なことは、決められた通りに投薬や治療のスケジュールを守るということです。
従来は医師から小児ぜんそくの患者の両親に対して、「家庭内の犬や猫が、症状を悪化させる可能性があります。」と言われることも多かったのですが、この研究を受けて「決められた通りに薬を飲み治療を受ければ、今まで通りにペットと暮らすことができる。」
という方向になっていきそうです。
2015年にはスウェーデンのウプサラ大学の研究者によって、「0歳から1歳までの間に犬や猫のいる家庭で育った子供は、7歳になった時点でぜんそくを発症する割合が13%低い」というリサーチ結果も発表されています。
今回の「既にぜんそくと診断されている場合にも、ペットから重大な悪影響はない」という研究結果は、ペットを愛する子供たちにとっても、犬や猫たちにとっても嬉しいものですね。
まとめ
アメリカのネイションワイド小児病院の研究者によって、「小児ぜんそくの患者がガイドラインに定められた通りに投薬や治療のスケジュールを守っていれば、犬や猫と暮らすことは、ぜんそくの治療に重大な悪影響を及ぼさない」というリサーチ結果が発表されたことを紹介しました。
この研究結果の報道では、「子供がぜんそくになったからと言って、ペットの新しい飼い主を探す必要はないかもしれません」という表現が多く使われていましたが、現実的には子供のぜんそくを理由に、ペットを保健所やアニマルシェルターに持ち込む人がたくさんいるのも事実です。
そのような行動は、身体の健康とは別に、子供の心や倫理観に悪い影響があることは容易に想像がつきます。
ペットの存在と病気との関連が科学的に明らかになることは、いろいろな意味で私たちに恩恵をもたらしてくれますね。
《参考》
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/10/181004112610.htm