犬も嫌なことがあった日は睡眠に影響するだろうか?
嫌なことがあった日や、悩みごとがあるときには、夜なかなか寝付けなかったり、眠りが浅かったりという経験がある人は多いと思います。
実は、嫌な経験が眠りの質に影響を及ぼすというのは、人間だけでなく犬にもあることなのだそうです。
ハンガリー科学アカデミーの、認知神経科学心理学研究所の研究チームが行った実験と、その結果をご紹介します。
犬への感情刺激と眠りの質の関係を探る実験
実験に参加したのは、ゴールデンレトリーバー、シープドッグ、ラブラドール、ジャックラッセルテリアの計16匹の犬たちです。
犬たちは眠りにつく前に、脳波を測定するモニターを付けられて、睡眠中の3時間の脳波を数日の間を置いて各犬2回ずつ測定されました。
それぞれの犬たちは、1回目の測定の前には飼い主とボール投げや、綱引きをするなどのポジティブで楽しい経験をしました。
日を置いて行われた2回目の測定の前には、飼い主が犬を単独で実験室に残し、そこに知らない人が入ってきて、威嚇するように犬の顔をじっと見ながら近づくという、ネガティブな経験を与えました。
それぞれの経験の後に、犬たちの睡眠が測定されたわけですが、その結果はどのようなものだったでしょうか。
感情的な刺激が犬の睡眠にもたらした影響
犬たちの睡眠中の脳の活動の測定結果は、一見すると意外なものでした。
人間の場合、ネガティブな経験をした後には眠りに落ち難くなる傾向があるのですが、この実験に参加した犬たちは、ネガティブな経験の後の方が素早く眠りについていました。
このことは、犬が嫌な経験を忘れるため(または感情的な整理をつけるため?)に睡眠を利用しているのかもしれないと考えられました。
人間にも、「嫌なことがあったらさっさと寝て忘れてしまおう」というタイプの人もいるので、これはなんとなく納得できますね。
しかし、脳の活動を見ると少し違う結果が見えてきました。
ネガティブな経験をした後の眠りは、ポジティブな経験の後に比べて、眠りの浅いレム睡眠の時間が長かったのです。
レム睡眠時は夢を見る時間でもあり、ストレスを感じた後にその出来事を脳内で再生して、問題を解決するための時間でもあるそうです。
つまり嫌な経験をした後の犬は、その出来事を脳内で整理するために早く眠りに落ちるけれど、寝ている間も脳はストレスを整理するために活動をするため、眠りが浅く、肉体的な疲れも取れにくい状態になってしまうということです。
これはストレスを抱えている人間と非常によく似た状態ですね。
悩み事があるときは、朝目覚めたときにスッキリした感じがしないというのと共通点を感じます。
まとめ
犬が起きている間に受けた感情的な刺激は、眠りの質に影響するだろうか?という研究の結果をご紹介しました。
ストレスを感じるような嫌な経験をした後の犬は、楽しい経験をしたときに比べて、睡眠時間は長くなるが眠りは浅く、眠っていても脳が活動している時間が長いことがわかりました。
睡眠時間が脳と体の疲れを癒すことよりも、ストレスの整理をすることに使われるためです。
この研究は、犬が受けた感情的な刺激と睡眠パターンを観察するための初めてのリサーチで、今後も引き続き研究が行われることが期待されています。
昼間の経験が、睡眠の質に影響するということを長い目で見れば、どれだけ楽しい思いをして、どれだけストレスを感じて暮らしているかが、犬の心身の健康にも関わってくるということですね。
それなら、できる限り楽しい経験をたくさんさせてあげなくては!という思いを強くさせられました。
《参考》
http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/284/1865/20171883#sec-9