犬の1型糖尿病
人間と同様に、糖尿病を患っている犬はたくさんいます。犬も人間も、糖尿病には2種類のタイプがあります。
インスリンが不足する1型糖尿病
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、食事によって上昇した血糖を取り込んで利用するために働きます。膵臓の細胞が何らかの原因で破壊され、インスリンの分泌が不足してしまうのが、1型糖尿病です。
従来の治療では、生涯にわたってインスリンの投与が必要になるため、「インスリン依存性糖尿病」とも呼ばれます。犬の場合は1型が多く見られます。
体がインスリンに反応しなくなる2型糖尿病
インスリンはきちんと分泌されていても、それを受け取って利用する体の反応が鈍くなってしまうのが2型糖尿病です。
食べ過ぎや運動不足との関連が強く、早期に生活改善すればインスリン投与は必要ないため、「インスリン非依存性糖尿病」とも呼ばれます。
今回ご紹介する新しい治療法は、1型を対象にしたものです。
犬にも飼い主にも負担が少ない治療法
新しい治療法の研究は、アメリカのパデュー大学獣医学部とインディアナ大学医学部が共同で行っています。
研究者によって開発されたコラーゲン製剤は、24時間以内に1型糖尿病の症状を止め、少なくとも90日間はインスリン投与の必要がなくなることがマウスによる実験で示されています。
次のステップとして、1型糖尿病の犬での臨床試験が行われます。
従来の治療法は、1日を通して血糖値をモニターし、食事の後にインスリンを投与するというものです。
そのため、飼い主はいつも犬のそばにいなくてはならず、仕事など日常生活が制限されてしまいます。
新しい治療法では、1日中病気の管理をすることから解放されるため、犬と飼い主両方の負担が大きく軽減されます。
人間にも同じ治療法が有効な可能性
犬の糖尿病は人間にも同様に起こり、従来の治療方法もほぼ同じです。
この1型糖尿病の新しい治療法が犬に効果を発揮すれば、そこから得られた情報が人間の治療にも恩恵をもたらす可能性が大いにあります。
アメリカでは、犬や猫といったコンパニオンアニマルの100匹に1匹の割合で1型糖尿病が見られると言われています。人間では全米で約125万人が1型糖尿病に苦しんでいます。
1型糖尿病は18歳未満で発症する例が多く、小児糖尿病と呼ばれることもあります。
ですから、生涯にわたる治療は大変長期間に及ぶので、負担の少ない治療法が待たれてきました。
今、愛犬の糖尿病の管理をなさっている飼い主さんにも、ご自身が患者さんという方や、そのご家族にも、希望の光となる研究ですね。
まとめ
アメリカで獣医学と医学の研究者が共同で行っている、1型糖尿病の新しい治療法についてご紹介しました。
従来の、1日中病気の管理をしなくてはならない治療法と違って、最低90日間はインスリン投与の必要がなくなるという新しい治療法が実用化されれば、犬も飼い主さんも負担が減り、QOLの向上が期待されます。
そして、犬の研究結果が人間の治療にも役立てられることが期待されています。
犬と人間は様々な病気の治療で共通する点が多く、そのことがお互いに利をもたらしています。
こんなところにも犬と人間の距離の近さ、絆の強さが感じられますね。
《参考》
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/08/180821145235.htm