ドッグトレーナー、公的な資格が不要な現状
クリッカートレーニングを始め、様々な犬のトレーニング方法を提案してきたアメリカは、ドッグトレーナー大国でもあります。
学習理論や動物行動学など、科学的知見に基づいて効果的で人道的な犬のトレーニング方法を学ぶ機会、そのようなトレーナーに出会う機会が多くある一方で、実はドッグトレーナーを名乗るための公的な資格というのは全くないのも実情です。
その結果、教育や経験のない人物がドッグトレーナーを名乗って、飼い主たちから料金を取っても、それを禁止や規制する法律がありません。
きちんとしたトレーナーや業者は、犬を訓練するために受けた教育などの証明書を提示していますが、それは義務ではなく個々の事業者に任されている状態です。
このたび、ニュージャージー州の議会が、犬のトレーニングに公的な資格を設け、法的に規制しようという法案が提出されました。
この法案が通過すれば、同州はアメリカで初めてのドッグトレーナーの資格を法的に規制する州となります。
ドッグトレーナー資格制法案の要件
法案の中で、ドッグトレーナーとして活動するための資格を取得するために挙げられている要件は次のようなものです。
- モラルの高い人格
- 最低300時間のドッグトレーニングのための教育又は1年以上の実務経験
- 高校卒業資格
- 上記を満たした上で、所定の試験に合格すること
法案では、これらの件の管理のためのドッグトレーナー審査委員会の設置も提案されています。法案の提案者は、民間のに相談して上記の要件を設定しました。審議会は、資格試験の制定にも協力する予定だそうです。
また、別の業界団体であるプロフェッショナルドッグトレーナー協会の会長は、この法案は同協会の基準を満たすものであるが、一番初めの「モラルの高い人格」というのは曖昧過ぎるのではないかと指摘しています。
代わりに、明確な倫理基準を設定することを提案しています。
また、懲罰方式のトレーニングは止めて、ポジティブ強化のトレーニング方法のトレーナー養成を求めています。
法案提出の背景
この法案を提出した議員は、この提案はドッグトレーニングの世界で働いている人々の中から出てきたものだと語っています。犬の行動科学を無視した懲罰方式のトレーニングを行っている同業者を見かねたトレーナーたちの声であるとのことです。
不適切なトレーニング方法は、犬への福祉の問題であることはもちろん、犬の攻撃性がトレーニングをする人以外へ向けられる場合もあることから、社会全体の問題でもあります。
前出のドッグトレーナー認定審議会は、この法案を、犬のトレーニング産業に対して市民の信頼と安全を向上させるものだとして支持しています。
まとめ
アメリカのニュージャー州で、ドッグトレーナーを公的な資格制として、法的に規制を設けようという法案が出ていることをご紹介しました。
これはアメリカの事例ですが、日本でもドッグトレーナーは国家資格ではなく、各団体や学校が独自に制定しているのが現状です。多くの優秀なトレーナーが活躍する一方で、犬の福祉を無視した方法を取るトレーナーもたくさんいます。
毎日の生活に直結する情報ではありませんが、犬のトレーニングという大切な問題において、外国でどのようなことが起こっているのかを、一般の飼い主が知っておくことも、日本の犬を取り巻く世界を良くしていくために大切ではないかと思います。