家庭において同じ飼い主をめぐる犬同士の嫉妬についての研究結果

家庭において同じ飼い主をめぐる犬同士の嫉妬についての研究結果

犬が他の犬にヤキモチを妬くことは、犬と暮らしているとよく目にする光景です。犬の嫉妬はどんな時にどんな状況で引き起こされるかを観察した研究の結果が発表されました。

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犬のヤキモチを科学的に分析する

同居犬に威嚇するハスキー

犬と暮らしている方なら、彼らが他の犬にヤキモチを妬くことはご存じですね。特に多頭飼いのおうちでは、犬同士が飼い主を巡っての嫉妬から、喧嘩になることも珍しくありません。ちょっと夢のない言い方になってしまいますが、飼い主は犬にとって必要な恩恵の源泉です。食べ物、安全な住居、精神的なサポートなどは、飼い主が犬に与える恩恵です。

このような犬と飼い主との関係に、他の犬が入り込んでくることは、自分が生きるのに必要な資源が脅かされるかもしれないため、犬は他の犬に嫉妬の感情を示し、行動を起こします。

犬がヤキモチを妬き、嫉妬から来る行動を起こすことは、このようにとても理に適ったことです。犬にとって最も一般的なライバルは家庭内の他の犬です。この、同居犬に対する嫉妬の行動に関する研究が発表されました。

犬の嫉妬を観察するための実験

女性に甘える二匹の犬

犬が飼い主を巡って、他の犬に嫉妬する状況を観察する実験のため、健康で攻撃的ではない21組42匹の犬と彼らの飼い主が募集されました。飼い主は、両方の犬と少なくとも1年以上一緒に暮らしていることが条件です。

実験は次のような手順で行われました。

飼い主と2匹の犬は、研究室の部屋に入ります。飼い主は犬たちに全く構わず、犬たちに自由に部屋の探索をさせます。次に飼い主は、椅子に座り雑誌を読み始めます。どちらの犬もまだ無視されたままです。

次のステップでは、飼い主は1匹の犬だけを撫でたり構ったりして、もう1匹は無視します。その後、もう一度両方の犬を無視した状態で、雑誌を読む時間を設けます。

最後に、先ほど無視された方の犬を撫でたり構ったりして、もう1匹を無視しました。

この実験は、人間の子供が親をめぐって、兄弟に嫉妬をするかどうかの観察に使われるものをベースにしています。

実験の中の2つの状況における犬の行動が観察されました。

まず、両方の犬が飼い主から無視されているとき、そしてもう1匹の犬だけが可愛がられているときです。どのような行動が観察され、2つの状況を比べたときにどんな違いがあったでしょうか。

実験の結果、観察された犬の行動は?

二人の女性と二匹のトイプードル

研究者たちは、実験の前に「犬たちは両方が無視されていたときよりも、もう1匹の仲間の犬だけが可愛がられていたときに嫉妬の行動を示すだろう」ということと、「無視されている間、飼い主の注意をするだろう」という予想を立てていました。

実験の中の2つの状況で、観察された犬たちの行動は、「犬同士の間での何らかの行動」「飼い主をじっと見つめる」「飼い主に近づく」「ストレスサインの行動」「吠える」「飼い主または仲間の犬の邪魔をしに行く」というものでした。

2つの状況で犬が示した行動を比較すると、意外なことに大きな違いがありませんでした。
唯一違っていたのは、両方が無視されていたときよりも、片方だけが無視されていたときの方が、「飼い主をじっと見つめる」という行動が多く見られたことでした。

犬が嫉妬を感じていると考えられる行動は、両方が無視されたときと片方だけが無視されたときの両方で観察されました。

これらのことから考えられるのは、犬は飼い主の注意を惹きたいときにも、嫉妬を感じているときと同じ行動をする可能性があるということです。

仲間と一緒に無視されるのも、他の犬だけが可愛がられて嫉妬を感じるのも、犬にとっては飼い主との関係の危機を意味するので、同じ行動を起こすことは不思議ではありません。

研究者は今回の実験について、犬が嫉妬から行動を起こす可能性を否定するものではないとしています。

犬の嫉妬行動について、日常生活の中での観察と何が嫉妬の引き金になるのかを判断するため、更に研究が続けられる見込みです。

まとめ

並んで座る二匹のフレンチマスチフ

犬の嫉妬行動は、どんな状況で引き起こされるかを観察するための実験と観察の結果をご紹介しました。観察の結果は、研究者の予想に反して、あまりはっきりしたものではありませんでした。

研究室という未知の場所に連れて来られた犬たちは、「こんなアウェイの場所で仲間割れしてる場合じゃない!何より飼い主の注意を取り戻さなくては!」という気持ちだったのかもしれないですね。

研究をしている科学者も、一般の飼い主たちも、犬がヤキモチを妬くことは知っています。それがどのような状況でどのような行動が観察されるかを科学的にデータを取るためにこのような研究が行われています。

犬に対する理解を深め、犬の福祉を向上させるためには、きちんとしたデータが不可欠だからです。研究の今後に期待したいですね。

《参考》
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10071-018-1204-0

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