問題行動が見られる犬は若くして亡くなる可能性が高い
イギリスのロンドン王立獣医科大学の研究チームが、アニマル・ウェルフェア誌に、犬の望ましくない行動に起因する、死亡率についての研究を発表しました。
この研究は、イギリスで2009年から2014年の間に、3歳未満で死亡した21,000匹の犬のデータを分析して行われました。
分析の結果によると、攻撃性、脱走、ケンカ、過度の興奮や吠え行動といった望ましくない行動がある犬は、このような行動をしない犬に比べて、より若い年齢で死亡する可能性が高いということでした。
ショッキングな報告ですが、詳しい内容をご紹介します。
3歳未満の犬の死因の約3分の1が望ましくない行動に起因
分析されたデータの亡くなった21,000匹のうち、33.7%の死因が望ましくない行動が引き金となるものでした。これは病気など他の死因に比べてかなり高い数字です。
犬の命を奪うことになった望ましくない行動のうち上位に来ていたのは、「攻撃性」(他者を攻撃したことでの安楽死処分を含む)、「脱走」、「呼び戻しを聞かない」などに起因する交通事故死でした。
他に望ましくない行動に起因する死亡率が高かったのは、以下のような要素です。
- オス犬はメス犬に比べて1.4倍
- 体重10kg未満の犬は、体重40kg以上の犬の2倍以上
- 犬種がミックスされている犬は、純血種の約2倍
また犬種別の目安として、人気犬種のラブラドールがベースラインに選ばれたのですが、ラブラドールと比較して望ましくない行動による死亡率が高かった犬種は、以下の通りでした。
- コッカースパニエル:8倍
- ウエストハイランドホワイトテリア:5.7倍
- スタフォードシャーブルテリア:4.5倍
- ジャックラッセルテリア:2.7倍
犬が望ましくない行動をする背景
犬が人間にとって望ましくない行動をするとき、多くの場合は犬固有の問題ではなく、飼い主の対応がポイントになっていることが多いと考えられます。
犬に体罰や嫌悪刺激を与えるような飼い主の行動が、犬を怯えさせて攻撃行動を引き起こし、安楽死処分へとつながってしまう。
室内でトイレの失敗を繰り返してしまうのは、泌尿器系の病気があったせいなのに、病院に連れていかず重症化してしまう、などが代表的なものです。
研究者は、今回の分析結果は、若い犬の死亡を防ぐための重要なヒントが示されていると述べています。
以前から言われている子犬の時期からの社会化、飼い主による適切な犬種の選択、正しい犬のトレーニング方法などは、犬の命を守るために重要な意味があります。
犬の問題行動に対する医療的なアプローチ
この研究で分析されたデータでは、望ましくない行動に関連する理由で死亡した犬の飼い主のうち12.9%が、獣医師に犬の行動に関する助言を求めていました。
行動治療を実行していたのは、亡くなった犬の飼い主のうちの3%のみでした。まだ新しい治療分野である行動治療は、イギリスでも利用する人はまだ多くないようですね。
問題行動の裏に隠れているのが、身体の医療上の問題の場合もありますし、場合によっては投薬が犬の精神を落ち着かせて、望ましくない行動が少なくなる場合もあります。
犬が望ましくない行動をするときの最初の対応は、かかりつけの獣医師への相談であると研究者は述べています。
また、獣医師も患者である犬が、どんな訓練を受けているのかを把握しておく必要があるとも言われています。
まとめ
イギリスの研究者が発表した、3歳未満で死亡した犬のうち、3分の1は望ましくない行動がきっかけになった死因で命を落としていた、というデータの分析結果をご紹介しました。
イギリスでも、この研究は若い犬の死因と行動について、これまでに実施された中で最大のものだそうです。
もしも日本で同じようなデータ分析をしたら、よく似た結果が出ると思われます。それだけに、この結果に対して研究者が述べている言葉は、日本の飼い主にとっても大切なことです。
犬が望ましくない行動をするとき、原因を多角的に探ってみることは、犬の命を救うことにもつながるのだと知っておきたいですね。
《参考》
https://www.americanveterinarian.com/news/bad-dogs-more-likely-to-die-young