病気の発見が難しい臓器「肝臓」
犬でも人間でも、肝臓はたくさんの役割を受け持っている、多目的な臓器です。血液を解毒し、薬物を分解し、エネルギー源を代謝し、ビタミンやグリコーゲンを貯蔵し、消化に必要な胆汁を作り、血液凝固に必要なタンパク質を作っています。
このように、多くの重要な役割を持っている肝臓は、障害が起きても痛みなどの症状がなかなか出ないため、「沈黙の臓器」と呼ばれます。
人間でさえ、自覚症状がなくて発見が遅くなりがちな肝臓疾患。犬の場合は発見がさらに難しく、気がついたときには難しい状態になっていることも少なくありません。
このように診断が難しいとされる肝臓疾患ですが、ヒトの肝臓疾患診断に開発された方法が、犬にも応用できることが発見されました。
正確で負担の少ない検査方法
この新しい発見をしたのは、スコットランドのエジンバラ大学獣医学部の研究チームです。
ヒトの肝臓疾患の診断のために新しく開発された血液検査が、犬の場合にも応用できることが発見されたとのことです。
現在、肝臓の疾患の診断は主に、生体組織検査に基づいて行われています。
麻酔をかけて、生体組織を採取する検査は犬の体への負担も大きく、合併症を招くリスクもあります。また検査費用も高額になります。
新しく開発されたヒトの検査は、肝臓に疾患を持つ人々は、血液中のmiR-122という分子の濃度が高レベルになることから、血液採取のみで行うことができます。
エジンバラ大学の研究チームは、獣医師と協力し合って、250匹の犬の血中のmiR-122分子の濃度を調査しました。
その結果、犬も人間と同じように肝臓疾患があると、この分子のレベルが有意に高くなることが判明しました。
研究チームは、世界中の獣医師が利用できる、犬の肝臓疾患の早期の兆候を特定するための試験キットを開発する予定だそうです。
それでもやっぱり健康管理の基本は飼い主
効果的で負担の少ない検査方法が開発されるのは、とてもありがたいことですね。でも、その恩恵を受けるためにはまず、動物病院に行かなくてはいけないのは、今も昔も同じです。
最初に書いたように肝臓疾患は症状が外に出にくいので、定期検診を受けることはとても大切です。
また特定の犬種で、特定の肝臓疾患にかかりやすい例もあります。銅蓄積肝障害に罹りやすいベドリントンテリア、ドーベルマンピシャー、スカイテリア、ウエストハイランドホワイトテリア。アミロイドーシスが多く見られるのは、チャイニーズシャーペイです。
放っておくと重症化し、命を脅かすことも多い肝臓疾患ですから、日頃の観察と早めの対応で万一に備えておきたいですね。
まとめ
スコットランドのエジンバラ大学の研究チームが、人間の肝臓疾患診断の方法が犬にも共通することを発見し、新しいタイプの血液検査のための試験キットを開発中であるというニュースをご紹介しました。
従来よりもずっと手軽で、犬に負担をかけずに、迅速に肝臓疾患の診断ができるというのは、本当にありがたいですね。
この診断方法が普及することで、1匹でも多くの犬が健康を取り戻したり、命を取り留めたりするようにと心から願います。