意外と奥が深い、犬のオシッコ時の脚あげ行動
オスの犬と暮らしている方なら毎度おなじみの、オシッコをするときに脚を上げてマーキングをする行動。
あの仕草をするのは、圧倒的にオス犬が多いことからもわかるように、脚あげ行動には男性ホルモンのテストステロンが関係していると考えられます。
オスの子犬が、成犬のように足を上げてマーキングを始める週齢は、早い犬では22週齢、平均では38週齢くらいです。
そしてこの度、犬のマーキング行動についての興味深い研究が発表されました。
ドッグランや公園でいろんな犬のマーキング行動を観察してみたくなる、研究の内容をご紹介します。
犬の体のサイズと、足をあげる高さの関連を調査
発表された研究の内容は、犬の体のサイズとマーキング時の脚あげの高さの関連です。研究者は、アメリカのコーネル大学の動物行動生態学者ベティ・マクガイア博士の研究チームです。
研究チームは2つのアニマルシェルターで、45匹の犬を対象にしてリサーチを行いました。犬は全頭がオスの成犬で、大部分が雑種でした。
研究者たちは犬を散歩に連れ出し、樹木、ベンチ、消火栓、その他犬がマーキングしそうな物が多くあるエリアを歩き、後ろから付いて歩く、もう1人の研究者が、解析をするためのビデオを録画しました。
犬がマーキングをすれば、その都度オシッコがかかった高さを測定し、犬があげた脚の角度は、ビデオから測定しました。測定の様子を収めた動画は下記のような感じです。科学者の研究は地道で、大変なものだなあとしみじみ実感します。
測定と解析からわかったこと、考えられることは?
この観察と測定は、約2年間にわたって行われ、研究チームは数百の脚あげ行動を解析しました。
それによると、犬がオシッコをするときに脚をあげる角度は、約85°から147°の範囲で、犬の体のサイズが小さくなるほど、角度が大きく、極端な姿勢になる傾向が報告されています。
この傾向から研究者たちが導き出した考察は、「より高い位置に自分の情報を残すことで、後から来てニオイを嗅いだ犬に、この辺りに体の大きい犬がいると(少なくとも、実際のマーキング主よりは大きいと考えられる)思わせるためのフェイク情報を発信しているのではないか?」というものでした。
小さい犬が自分を大きく見せるために、高い位置にオシッコのマーキングをするというのは、興味深い説ですね。
一方で、この研究に関わっていない他の科学者には、犬はウソの情報を発信しているつもりはなくて、ただ単に高い位置にある大きい犬のマーキング跡を、自分のマーキング情報で覆い隠したいだけではないか?」という説を述べる人もいます。
また、もっと単純に「すべての犬はより高い位置にマーキングをしたいと考えているが、小さい犬の方が体の柔軟性が高いので、脚が高くあがる」という説もあります。
しかし、犬と違って個体差の範囲がもっと小さい野生のマングースのマーキング研究で、体の小さい個体の方が、高い位置にマーキングをするという発表もあるので、犬のマーキングと体のサイズの関連も、まだまだ研究の余地がありそうです。
まとめ
犬の体のサイズと、犬がオシッコをする時の脚あげの角度の関連についての研究をご紹介しました。
高い位置にマーキングすることで、自分を実際よりも大きい犬だと他の犬に錯覚させようとしているのか?それとも先に付いているニオイを覆い隠そうとしているだけなのか?今後もさらに深い研究が行われるようで、興味が尽きません。
今回紹介したのと同じチームによる過去の研究では、メス犬で後ろ片脚をあげてオシッコをする犬は、小型犬に顕著に多いという報告もあります。
散歩のときに見かける、その犬のマーキング行動をつい観察したくなる研究結果ですね。
《参考》
http://www.sciencemag.org/news/2018/08/your-dog-lying-other-dogs-about-its-size?utm_source=newsfromscience&utm_medium=facebook-text&utm_campaign=dogsize-20879