運動不足の大学生とシェルターの保護犬たち
アメリカの大学生たちは、たくさんの課題や時間的な制約に追われて、体を動かす機会が少なくなっていると言われています。また4年制の大学では授業の一部に体育のコースを取り入れるところがどんどん少なくなっていて、大学生の運動不足は加速している状態です。
一方、公営のアニマルシェルターでは保護犬たちを散歩させるボランティアは常に歓迎される存在です。
この2つの問題を一挙に解決できるかもしれないユニークな研究プログラムが作成され、実施されています。
プログラムを作ったのはイーストカロライナ大学の研究者で、地元の公営シェルターで保護されている犬を散歩させることを体育の授業の一環として、単位を取ることができるようにしました。
このプログラムに参加した学生たちはどのような反応を見せたのでしょうか。
保護犬を散歩させる授業の内容は?
プログラムに参加した学生は、1週間に2回シェルターを訪れ、歩数計を身に付けて近くの公園に保護犬の1匹を散歩に連れ出し1回50分のセッションを行います。
学生たちは1回のセッションで平均4500歩、約3.6kmを歩いていました。セッションのうち、実際に散歩に費やされた時間の平均は約28分でした。
10週間が1単位になっており、学生たちは課題の終了時に犬との散歩の経験についてのアンケート調査に答えることになっています。
学生たちが犬の散歩から得たもの
元々は大学生の身体活動が低下していることを危惧して開発されたこのプログラムでしたが、実査に参加した学生たちからのコメントは単なる運動をはるかに上回るものでした。
多くの学生は、歩数計に表れた数字を見て「こんなに歩いていると思わなかった。時間がとても早く過ぎて、運動させられているという感じは全くなかった。」と答えたそうです。
犬と一緒に歩くと、自分だけでウォーキングをするよりもずっと長い距離を退屈せずに歩けるのは犬と暮らしている人ならご存じですよね。
また、他に目立ったコメントでは「犬は散歩することをとても楽しんでいるように思えたので、自分もとても気分がよかった」「自分に会うことを喜んでくれる犬と一緒に時間を過ごすことは最高だった」というものがありました。
若い大学生ですから健康増進などよりも、一緒に歩いた犬とのつながりや、犬の役に立っているという感覚に満足した人が多かったようです。
セッションをサボったり抜けたりする学生は、ほとんどいなかったとのことです。現在、このプログラムの次のクラスは希望者が多く順番待ちの状態になっているそうです。
プログラムを作成した研究者は、同様のプログラムを取り入れたいと言う他の大学にも協力しています。
学生たちは身体を動かしながら、犬と歩く楽しみを知り、地元コミュニティの役にも立つ。シェルターの犬たちは定期的に散歩に出る機会を確保できるという、win-winの大成功になったようですね。
まとめ
アメリカの大学で開始された、大学生の授業の一環として、地元アニマルシェルターの犬との散歩を取り入れたプログラムをご紹介しました。
参加した学生たちは圧倒的にポジティブな反応を示しているようで、プログラムは今後も拡大していく予定のようです。
身体を動かすことは、心にも脳にも良い刺激となるので、人間も犬もその恩恵を受けることができます。
シェルターの犬の散歩はボランティアの人々というイメージが強いですが、こんな発想の転換は他の国にも広まってほしいですね。
《参考》
http://abstractsonline.com/pp8/#!/4535/presentation/8551