犬との散歩をしない飼い主たち
犬と暮らしている人のほとんどは、毎日の散歩を当たり前のことと思っているでしょう。
しかし、アメリカで行われたあるリサーチによると、実に40%近くの飼い主が「犬と散歩をすることはほとんどない」と答えたのだそうです!
これは、犬の身体と精神、両方にとって悪影響ですし、問題行動にもつながって社会全体に関わる問題にもなります。また、犬との散歩が人間の健康に良い影響を及ぼすことも、過去の多くの研究から明らかになっています。
このリサーチの結果を憂いたアメリカは、マサチューセッツ大学の生物科学の教授で、自らも犬と暮らしているべコフスキー博士が、なんとか人々がもっと犬と散歩をするように仕向ける方法はないものかと研究を開始しました。
研究はまだ途中の段階なのですが、そのユニークな内容をご紹介します。
犬も人間も、もっと体を動かすようにするにはどうすれば?
博士の研究はスポーツ医学の一環として発表されました。
研究チームは「犬を飼っているが、散歩はほとんどしない」と答えた犬の飼い主30人を対象にして、犬のトレーニングクラスに招待しました。
招待された飼い主たちは、このトレーニングプログラムは、犬がオンリードでいるときの行動を改善するためのものであると聞かされています。
グループのうち、半分は6週間のプログラムを指導を受けながらスタートし、残り半分は比較対象のために待機リストに登録されました。
プログラムをスタートしたグループは、週に2〜3回のトレーニングクラスに出席します。散歩のときには運動モニターを身に付け、散歩の内容を記録しておきます。
さらに、6週間のトレーニングプログラムが終了した後さらに6週間、時折モニターを身に付けて散歩の記録を取るように依頼されました。
犬の散歩は健康のためだけじゃない
参加者の散歩の記録と運動モニターの数値から、参加者は6週間のプログラム実施期間とその後の6週間の両方において、比較対照グループの人々よりも犬と歩く時間が長かったことを示しました。
あいにくこのプログラムの実施期間は悪天候の時期にぶつかってしまい、増加時間はわずかであったのですが、もっと重要なことに参加者のほとんどが「以前よりも犬との距離が縮まり仲良く慣れた気がする」「散歩の後の犬の振る舞いに満足している」と答えたのだそうです。
以前に行われた他の研究でも、犬の飼い主の多くは「犬との散歩は自分の健康のためというよりも、犬がハッピーな顔をすることで、自分も幸福感を得られることが大切」と答えています。
どうやら「犬と散歩すると健康に良い」とアピールするよりも「散歩することで犬と親密になり、犬も人もハッピーになれる」ということを多くの人に知ってもらう方が、犬の散歩を促すのにより効果的なのかもしれませんね。
まとめ
アメリカの研究者によって行われた「犬と散歩をしない飼い主に散歩を促す研究」についてご紹介しました。
同研究チームは、今後さらに拡大した研究を行う予定であると発表しています。同じようにトレーニングクラスを利用しての研究になるそうですが、今後は最初から参加者の運動量を増加させることを目的にしていると明かして実施するのだそうです。
また、今回のリサーチで人間が身に付けた運動モニターと同じタイプのモニターを犬用にも作り、犬の運動パターンを調べることも計画されています。人間と犬の両方にとって、より効果的な散歩の仕方が広く知られるようになるといいですね。
そして研究の世界では度々取り上げられる「犬と暮らすことで人間の健康が改善される」というテーマ。
確かにそういう面もあると思いますが、それはあくまでも犬と暮らすことの副産物であって、犬と歩くことの本質は今回の研究でも言及されたような「より良い関係を築くことで犬も人もハッピーになる」であってほしいなと思います。
《参考》
http://abstractsonline.com/pp8/#!/4535/session/129