北米の古代犬のDNAが発見された驚くべき場所【研究結果】

北米の古代犬のDNAが発見された驚くべき場所【研究結果】

アメリカで埋葬されていた古代犬のDNAを分析したところ、今まで考えられていたのとは違う事実がわかったのだそうです。そしてその古代犬のDNAが思いも寄らないところで発見されました。

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アメリカで発見されたものでは最古の犬の遺骨

ネイティブアメリカンの帽子

アメリカはイリノイ州のコスターという場所で発見された、埋葬された犬の遺骨があります。
今までにも何度か古代の人々が埋葬した犬が発見され、彼らが犬を大切に思っていた様子が伺えることを紹介してきましたが、今回はその埋葬されていた犬のDNAを分析してわかった新しい事実をご紹介します。

1970年代に発見された犬の遺骨は人間と同じ場所に埋葬されており、他の場所の例と同じように、この地で暮らしていたアメリカ先住民たちから家族同様の扱いを受けていたことが伺えるものでした。

発見当時はおよそ8500年前のものと考えられていたのですが、最新の技術で調査したところ1万年くらい前のものと推測され、アメリカで発見された中では一番古いものであることがわかりました。

そこで動物考古学者ら研究者は、このコスターに埋葬されていた犬の遺骨からDNA分析を行い、北米の犬の歴史を調査しました。コスターの犬の他、北米とシベリアの古代遺跡から発見された犬のゲノム解析が行われ、5000匹以上の現代の犬の遺伝子と比較されました。

古代アメリカに存在していたと考えられているカロライナ・ドッグ

カロライナドッグ

さて、今回の研究で古代犬との比較対象とされた現代の犬種の中にカロライナ・ドッグと呼ばれる犬種が含まれています。
このカロライナ・ドッグは元々の北米原産の犬で、ネイティブ・アメリカンの人々に飼育されていたと考えられている犬種です。上の画像はカロライナ・ドッグです。

ノースアメリカン・ディンゴとも呼ばれ、その名の通りオーストラリアの土着の犬であるディンゴによく似ています。

現存するカロライナ・ドッグは、野生化し絶滅の危機に瀕していた犬たちを生物学者が慎重にブリーディングした子孫たちです。保護地区で野生生活を送る個体と、人の手で飼育されている個体がいます。

果たして、ゲノム解析された古代北米犬のDNAはカロライナ・ドッグと共通するものだったでしょうか。

ゲノム解析の結果と現代の犬たちとの比較の結果は?

草むらの中のチワワ

研究者たちは、1500年代にヨーロッパからの入植者がヨーロッパの犬を北米に持ち込んだ時に異種間交配が起こったと推測し、今回のDNA比較の結果もそれを反映するものだと予想していました。

ところが、古代北米犬のDNAと現代の犬たちのDNAは全くと言って良いほど異なっており、現在北米に居る犬は1500年代にヨーロッパからの入植者が持ち込んだ犬と完全に置き換えられたことが判りました。

比較対象になった5000匹以上の犬のうちわずか5匹だけが、古代北米犬の片鱗を持っていました。
チワワと雑種犬のうち1匹ずつに古代北米犬と共通するDNAが2%未満発見されました。
そしてカロライナ・ドッグ3匹に古代北米犬のDNAが一番数値の高い個体では33%という数字が出ましたが、この3匹以外のカロライナ・ドッグには古代北米犬のDNAは全く含まれていませんでした。

古代北米犬の末裔と考えられていた犬も含めて、現在のアメリカにいる犬たちのほとんど全てはヨーロッパの犬の末裔でした。

このことの理由として考えられるのは

  • ヨーロッパの犬たちは古代北米犬が全く免疫を持っていない病気を持ち込んだ。
  • 入植者たちは自分たちの犬が現地の野蛮な犬と交配することを決して許さなかった。
  • 入植者たちが、アメリカ先住民と一緒に彼らの犬も殺害した。

などが考えられています。

今回の古代北米犬のゲノム解析は犬のDNAデータベースをさらに豊かなものにし、将来の研究者の助けになることも期待されます。

しかし思わぬところに古代北米犬のDNAが!

ディンゴ

現代の犬には古代北米犬のDNAはほとんど存在していないと思われたのですが、思わぬところに古代犬のDNAのコピーが残っていました。
それは犬の生殖器にできる性感染性の腫瘍細胞の中に発見されました。生殖器にできるガンの一種です。

この病気の腫瘍細胞は交配を通じて犬から犬へと伝染していき、その度に元のDNAのコピーが起こるのだそうです。一番最初にこの病気を発症した犬のDNAが連綿と残っているということです。

腫瘍の分析から、この病気の最初の患者は8225年前に生存していたと考えられ、北米の古代犬であることが示唆されています。

この研究の結果は他の病気の起源を追跡するのにも役立つ可能性があるそうです。

まとめ

モニュメントバレーと犬

ヨーロッパからの入植者たちがやって来る遥か以前に、北アメリカの大地で先住民たちと暮らしていた古代北米犬。丁寧に埋葬された犬の遺骨をゲノム解析することで、彼らの遺伝子はほとんど消え去ってしまったことが判りました。

犬と人間のつながり、北アメリカ開拓の悲しい歴史、それを浮き上がらせた現代のゲノム解析の科学技術、この研究の経緯を見ると実に様々な思いが次々に湧き上がってきます。

そして、古代北米犬のDNAのコピーは犬の腫瘍の中で生きている。悲しい事実ではあるのですが、とてつもない深さを感じる話でもあります。

これも犬という生き物が1万年以上に渡って私たち人間に寄り添ってきたからこその深さでもあります。
「なんだかよくわからないけど、とにかく犬ってすごいな」と思わされる研究です。

《参考》
https://www.nationalgeographic.com/science/2018/07/news-ancient-dog-breed-dna-koster-ctvt/

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