一度も面識のない飼い主さんと一度も会った事がない犬のために…

一度も面識のない飼い主さんと一度も会った事がない犬のために…

これは私の動物愛護ボランティアとしての実体験です。まだホカホカの起きたばかりのボランティア活動での実体験です。思いが消えないうちに、伝えておきたい事があります。ワンちゃんと一緒に暮らしている飼い主さんすべてに知ってもらいたい事があります。

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大事なメッセージをたった1人の飼い主さんに届けるために

草原のゴールデンレトリバー

迷い犬のチラシ

私は最近、地元のボランティア団体に所属して、動物愛護管理センターに収容されたある迷い犬のチラシを作って、その子の飼い主さん探しのポスティング作業をこの数日間ずっとやってました。

ゴールデン・レトリバーがセンターに迷い犬として収容されました。

チラシの制作は自宅のパソコンでやりました。
ポスティングするためには、そのチラシがたくさん必要となります。
それをカラーコピーするのは、ボランティア団体の代表がやってくれました。

そして市内各地に住んでいるメンバーが集まって、チラシをそれぞれに手渡して、それぞれが市内の各所にポスティングしていました。

ポスティング

とても地道な作業です。

『この犬の飼い主さんを探しています。センターに収容されています。早くお迎えに来てください!』という文句が書かれたチラシです。

チラシには、センターに収容された犬の写真を入れています。
付けていた首輪の写真も入れています。

その犬にとっては、たった1人しかいない飼い主さんに、とても大事なメッセージをなんとか届けるためのチラシです。

ゴールデンレトリバー顔アップ

犬の命を守るため

メンバーは誰一人として、一度も面識がない飼い主さんのために、会ったことも触ったこともない犬のために(収容された犬はセンターの管理棟に収容されているため、ボランティアでも会うことができません。)、

炎天下の中、そして雨の中、自分の時間を使って、自分の体力を使って、自分の車を使って、自分でガソリン代払って、チラシを1枚1枚貼らしてもらうために知らないお店に飛び込んで、チラシを貼ってもらうために何度でも頭を下げて頼みます。

その作業の繰り返しを延々と続けます。

それで何かボランティア自身に、あるいは団体に経済的な利益があがるわけではありません。

利益どころか作業にかかる費用は、各メンバーのすべて持ち出しです。
それぞれが自分の意思でやっている事です。

なんのために?
それは犬のためです。すべて犬のためなんです。
センターの管理棟に収容されている犬のためにやっていることなんです。

飼い主さんのためではありません。
すべてその犬の命を守るためなんです。
管理棟に収容されれば、命の期限が付けられてしまう可能性があるからです。

私達ボランティアは、飼い主さんが守り切れていない犬の尊い命をなんとか救おうとしているのです。

落ち葉の上に伏せる犬

ボランティア活動

そんな地道な活動を、今、私はボランティアの一員としてやっています。

全国の多くのボランティアさんが同じ作業を繰り返していると思います。

私はまだこれで2回目です。まだ新米のボランティアです。

舌を出して座るゴールデンレトリバー

残された時間内でやれることをやる

今回は、市内各地でポスティングするために、炎天下の中、かなりの距離を車で走りました。

当然のことながら、チラシ貼りを断られることもあります。

どれだけ頭を下げても、命を守るためだと言っても、「そういうの、すべてお断りしていますので。」の一点張りだったり、「犬、嫌いだから!」というのもありました。

でも、殆どの店の人達が「いいですよ!」「大変ですね!」「見つかるといいですね!」と快くチラシを貼ってくださいました。

山の中も走りました。人が来ないような場所にも行きました。
だって、もしかしたらその犬はそんな場所から来たかもしれませんから…。

とにかく時間がありません。収容期限は待ってはくれませんから…

芝生の上に寝そべる犬

関係ない場所

今回は、犬がセンターに収容される前に単独で歩いていたという目撃情報がありました。
その場所は、私の担当ではなく、他のメンバーがまわってくれました。

犬が捕獲された場所も、他のメンバーが担当だったので、私は行きませんでした。

私が回った場所はすべて、犬とはぜんぜん関係ない場所ばかりでした。
捕獲された場所でもなく、目撃情報があった場所でもありませんでした。

でも…結果、そんな私が、飼い主さんを見つけることになりました…

どこにワンチャンスが潜んでいるかわからないという事を今回ボランティアとして、学びました。

笑顔のような表情の犬

戸惑い

さんざん、田舎の道を走って、さんざん山の道を走って、人が立ち寄りそうな場所を見つけてはチラシを貼っていきました。

で、最終的に、ある町にでました。

山の中から突然、町に出ました。

これまで、ここしか貼る場所がない!という周囲を田畑と山で囲まれた状況で貼ってきたので、町に出たことで正直、戸惑いました。

貼れそうな場所が急にわからなくなったのです。

だって、あまりにお店がたくさんあって、あまりに目に着く場所がたくさんあって、あまりに人が集まりそうな場所がたくさんありすぎて、どこに貼っていいのか本当にわからなくなりました。

それで、その町の駅を見つけたので、だめもとで駅員さんにきいてみました。

こんなところはきっと無理だろうな…駅関係のものは一切貼ってないし…と最初からあきらめムードだったのですが、意外にもOKがでました。

わざわざ本部に問い合わせて、許可をもらってくれました。最初からあきらめずに、言ってみるもんだという教訓をこのことでボランティアとして学びました。

高台から見た町

最後に起きた奇跡

そしてどっと疲れが襲ってきました。

あと1枚だけ貼ったら、今日はもう終わりにしよう…そう考えていました。

午前中からずっと走り続けて、貼り続けて…もう夕方になっていました。

私がその日最後に選んだのは…その町のペットショップでした。

その敷地内には、ペットホテル、ペットショップ、ペットクリニック、レストランと4つ建物があったのですが、私は迷わず、真ん中にあったペットショップに入りました。

それでチラシを貼ってくださいと店員さんに交渉していたら、横に座っていた年配の女性(店員さんなのかオーナーなのかわかりません)が「何?犬?」と立ち上がってチラシの写真を覗き込んだのです。

そしてすぐに「あら、この犬、私知ってるわ!」という思わぬ言葉が出たのです。

「え?!それ本当ですか??」
女性「うん、たぶん間違いない!私の知り合いの犬だわ!」
「え??それ確かですか?その人の犬、いなくなってますか?」
女性「しばらく連絡してないからね。ちょっと待って電話してみるから!」

そして女性は私の目の前で誰かに電話し始めました。

最初は話し中ででませんでした。

女性「話し中ということは、家にいるってことだよね。もう一度かけてみるね…」

私は息を飲んで見守っていました。どうか、繋がりますように…と心の中で手を合わせていました。

ドキドキ…ドキドキ…鼓動が早くなるのがよく判りました…

女性が2度目の電話をします。

繋がりました!

女性「ああ、久しぶり!ねぇ、あなたゴールデンいたよね?オス?あ、そう。で、今、その犬いる??」

ゴクリ…唾をのむ私…。

女性「ああ、やっぱり!いなくなったのね。いつよ?数日前?実はね、今、店にボランティアさんが来てて、センターに迷い犬のゴールデンが収容されてるって、飼い主さんを探してるって犬の写真入りのチラシ持ってきたんだよ。それであんたとこの犬じゃないかって思って…じゃ、いったん切るね。またかけなおす!」

女性は私に説明するために、電話を切りました。

女性「やっぱりね…私の思ったとおり、その犬だった。数日前にいなくなってて、一生懸命周辺を探してるけど、見つかってないって!ゴールデンのオスだそう。この犬の顔、私以前、その人から写真見せてもらって覚えているのよ。犬に会ったことはないんだけどね…早々ないよ。こんな犬が迷い犬になってるって。だって、捕獲されたまさにその地区にその人住んでるんだよ!もう間違いないって!」

ということで、チラシの犬の写真をカメラにとってその人に送ってくれるとのこと。

それで、間違いなければ、センターに迎えに行って!と言ってくれるそうなので、私はその後どうなったか、連絡してもらうように伝えて、店を出ました。

で、間違いなく、その女性の知り合いが飼い主さんだったんです。

まるで…絵に描いたような展開でした。奇跡以外のナニモノでもない…。

この町の人口は26万人以上います。

その中の一人に私はなんと奇跡的に出会ってしまったのです!

しかも、犬とはぜんぜん縁もゆかりもない遠方の町で!!

飼い主さんは、犬が捕獲された場所に住んでいる人でした。
そこから私が行った店は、かなり離れていました。

私がその女性に「あちこちまわって、今日最後の店だったんです、ここが。。。」というと、

その女性は「お疲れだったわね~、大変だったわね~!一番最初にここにきてくれればよかったのにね!」

私は返す言葉を失いました…

ショップのドックフード

無事返還

そんなわけで、ポスティングの最後の最後にたどり着いたペットショップで、奇跡的な出会いをして、なんとか飼い主さんにつなげることができました。

翌日、センターに飼い主さんがゴールデンを迎えにきてくれました。

そして、実際犬と会って、間違いないということで、引き取られました。

センターの人から、そして飼い主さんに連絡してくれたペットショップの人から、その報告が届きました。

一番最後に、飼い主さんからも、お礼の電話がかかってきました。

「今後は二度と迷子にしないでください。迷子札をつけてくださいね。」と私は飼い主さんにお願いしました。

探してくれた他のメンバーにも、くれぐれもよろしく伝えて下さい、と最後に言われました。

遠くを見つめるゴールデンレトリバー

後始末

それで私達ボランティアの仕事は終わりではありません。
飼い主さんに無事、愛犬を返す事が出来ても、その後、私達にはしなくてはいけない作業があります。

私達ボランティアには、貼ってきたたくさんのチラシの回収作業が始まります。

貼りっぱなしにはしないというセンターとのお約束で、活動が許可されていました。

それも自腹…すべて各自が好きでやっていることです。犬の命を守るために…

飼い主さんに請求する費用など一切ありません。私達ボランティアが勝手にやっていることですから。すべてその犬の命を守るために…

正面を見つめるゴールデンレトリバー

知らないでは手遅れになる!

会ったこともない飼い主さんのために、会ったことも触れたこともないワンちゃんのために…

いいえ、ただ、ワンちゃんの命を守るために私達ボランティアの活動は、すべてやっている事なんです…

飼い主さんに私は言いました。

「今回は間に合って本当に良かったです。センターに収容されると期限があるんですよ。もしかしたら、処分されていたかもしれないんですよ。」
飼い主さん「えッ!そうなんですか?!」

この飼い主さんは、必死に周囲を探していたそうです。
家族同様に可愛がって10年だそうです。

必死に周囲を探すだけでは、助からない命があるということを、是非、この機会に知っていただきたいです。お家に帰りたくても、帰れない状況が犬には起きるという事を。

知らないという事はなんと罪つくりな事なのか…。

この飼い主さんはセンターにも届け出をしていなかったし、また警察にも届けていませんでした…そういう事をまずしなければならないということも、きっと知らなかったのでしょう。

私たちがこの地道な作業をしていなければ、もしかしたら、命は繋がらなかったかもしれません。

そういうわんちゃんが全国沢山います。それで処分される命がたくさんあります…

全国のボランティアは、そんな命を少しでも救うために、今日も必死に活動しています。
見ず知らずのあなたの犬を守るために…見ず知らずの犬の命を守るために…

でも、ボランティアをやっている私達も、飼い主さんと同じ一人の普通の人間です。

特に何か資格があるわけでもありません。ただ、”なんとか命を助けたい!”
それだけを考えて自分にやれる限りの事を必死でやっているだけなのです。

どうか知って下さい!
あなたの不注意で、甘えで、取り返しのつかない事になる前に…
飼い主さんとして、やらなければならない事を…しっかりと考えて下さい!

舌を出して微笑むゴールデンレトリバー

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