爆発物探知犬とMRIによる適性検査
犯罪捜査や様々な警備の場面で、爆発物を探知する作業犬がたくさん働いています。
高度な訓練の末に探知犬となった彼らですが、育成トレーニングの途中で「適性がない」として候補から外されていく犬たちもたくさんいます。
トレーニングには多大なコストと時間がかかっているので、もしも子犬のうちからあらかじめ爆発物探知犬になるための適性が判定できれば人間にも犬にも無駄を省いてメリットがあります。
驚くほど高度な探知犬の世界と、その研究をご紹介します。
従来の爆発物探知よりもさらに高度な能力を求められる探知犬
探知犬適性の判定の研究を行なっているのはアメリカのオーバーン大学の研究チームです。
この研究チームは従来の爆発物探知よりも一歩進んだ探知の方法も開発しました。
悲しいことに爆発テロが増加し、捜査の技術が上がるとともに爆破犯の方もあの手この手を使ってきます。
近年は爆発物を身につけて移動する自爆テロが増えているため、従来のように爆発物が仕掛けられそうな場所を捜索するだけでは追いつかないという背景があります。
進歩した爆発物探知の方法は、爆破犯が体に装着した爆発物の粒子が、歩き回る時に空気中にわずかに漏れ出すのを発見するために人混みの中で空気の匂いを嗅ぐというものです。
訓練には約6ヶ月かかりますが、適性のある犬は3ヶ月目くらいには頭角を現し違いを見せ始めるそうです。あらかじめ適性のある犬が判れば訓練の効率もアップします。
適性検査は様々な角度から
訓練途中から他の犬よりも優秀な片鱗を見せ始める犬を研究することで、高度な爆発物探知犬に必要な適性を予測するためのいくつかの要素がわかり始めているそうです。
その要素を見つけるための身体的スキルや社会的スキルを含む認知テストも行われています。
例えば単純に匂いのするものが入った箱を探し出すだけでなく「普通とは違う何かがある」と人間に伝える能力、人間が何か助けを必要としていることを察知する能力なども訓練され試されるのだそうです。
それらのテストに加えて、特定の刺激を与えられた時(例えば、犬にとって親しい人間の写真を見せられる等)脳がどのような反応をするかをMRIを使ってデータを取り、どんな反応をした犬が探知犬として優れた結果を出しているかという相関関係を調査していくのだそうです。
しかし一方で、犬の脳のMRI研究の第一人者であるエモリー大学のバーンズ博士は
と、どんなに高度に人間の仕事を助ける犬も道具ではなく生き物なのだと、緩やかな警告を述べています。
まとめ
アメリカのオーバーン大学で行われている、爆発物探知犬の適性を判定するための研究についてご紹介しました。
爆発物から漏れ出るわずかな粒子の匂いを空気中から探し出すという途方も無いような作業をこなす探知犬。
犬の嗅覚が優れていることはいやと言うほど知っていても改めて感嘆しますし、その上ハンドラーとの複雑なコミュニケーションまでこなすとは「すごい!」の一言です。
そのような探知作業に優秀さを示す犬を判定する研究の中に、MRIを使って脳の反応を調べると言う内容まであることも驚きです。
一方で、犬の持つ能力が素晴らしいあまりに犬を高性能探知機のように扱って欲しくないと言う科学者の声もあることには少しホッとしました。
個人的には、ここまでの高度な作業なら早く小型高性能ロボットが開発されて、犬に頼るのは止めてほしいなあと思ったのですが、皆さんはどう思われましたか?
《参考》
https://www.wired.com/story/vapor-wake-dogs-research/