子犬はどうやって危険なものを学習していくのだろう?【研究結果】

子犬はどうやって危険なものを学習していくのだろう?【研究結果】

子犬は日常生活の中で、色々と危険なものに囲まれながらも大抵の場合は怪我をせずに学習していきます。何が危険で何が安全かを確認するために犬を誰を参考にしているのだろう?という研究の結果をご紹介します。

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子犬の学習を助ける『社会的参照』

2匹のジャックラッセルの子犬

子犬が成長していく時、彼らの周りには色々な危険がいっぱいです。

火傷をするような熱いもの、触るとケガをするような機械、危険な生き物。

ちょっとした痛い思いをして学習していくこともありますが、下手をすると大怪我をしたり命に関わることもあります。でもほとんどの子犬は大きな怪我を経験することなく危険なものを覚えて行きます。

これは子犬はだけでなく人間の子供にも共通することなのですが、幼い子犬や子供が見慣れない初めてのものを目にした時に、自分の周囲にいる者の反応を見て手がかりを得ようとします。

そばにいるお母さんの顔を見てニコニコ笑っていたら近づいても大丈夫なんだなと判断し、反対にお母さんが恐怖や不快感を顔に浮かべていたら対象の物から遠ざかるという具合です。

子供や子犬がこのように周りの反応から学習していくことを『社会的参照』と呼びます。

ハンガリーのエトベシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究者チームが、「子犬が社会的参照を基にして学習する時、参照する対象として信頼するのは誰か?」というテーマで実験を行いました。

子犬は『社会的参照』が必要な時、誰を頼りにするだろうか?

コーギーの親子

研究チームは、幼い子犬が安全を確かめるための情報源としてまず最初に頼るのは当然母犬であると想定して、まだ母犬や兄弟犬たちと一緒に暮らしている8週齢の子犬で実験を行いました。

実験に参加した子犬は全部で48匹で、3つのグループに分けられました。

子犬のとっての未知の怪しげな物体は2種類用意されました。

1つはプラスチックのバケツをフレームからぶら下げた物。バケツの中にはスピーカーが入っていて子犬が聞いたことのない音が流れてきます。

もう1つは吹き流しを付けた扇風機です。スイッチを入れると吹き流しが風に乗って動きます。

3つのグループのうち、1つ目のグループは怪しげな2つの物体とそれぞれの母犬と一緒に部屋に置かれます。

2つ目のグループは、2つの物体と、母犬と同じ犬種で初めて会う成犬と一緒に部屋に置かれます。

3つ目のグループは、母犬も成犬もおらず、2つの物体と子犬だけが部屋に置かれます。

子犬たちの付き添い役となる成犬たちは、あらかじめこの2つの物体の側で快適に過ごせるように馴らされています。

母犬と一緒にいた子犬たちは、物体と母犬の間を行ったり来たりしました。母犬が怖がる様子もなく落ち着いているのを見ると、これは安全であると判断して未知の物体の探検を始めました。予想された通りです。

初対面の犬と一緒にいた子犬は、母犬の場合と同じように物体と成犬の間を行ったり来たりしたものの、未知の物体に近づいて探検を始める子犬は母犬の時よりもずっと少数でした。

成犬抜きで子犬と未知の物体だけだった場合には、子犬は物体に対してかなり不審がる様子を示し、自分から近寄っていって関わろうとする様子は見られませんでした。

この結果から、幼い子犬は自分が信頼する者の感情的な反応を観察して情報を集め、環境の安全性を判断していることがわかりました。

人間は子犬の『社会的参照』として信頼されるだろうか?

女性と遊ぶハスキーの子犬

研究チームは、8週齢という幼い子犬でも社会的参照として安全の確認に使うくらいに人間を信頼するだろうか?ということを確認するために、先の実験に参加した同じ48匹の子犬たちで、再度実験を行いました。

今回は母犬や成犬の代わりに人間の女性が参加しました。

女性は実験の前に1時間ほど子犬と遊んで、お互いに馴染んでいます。

3つのグループのうち、1つ目のグループは2つの物体と女性と子犬が部屋に置かれます。

女性は物体と子犬の間を行き来しながら、子犬に笑顔を向けて明るいハッピーな声で話しかけます。

2つ目のグループは、1つ目と同じように物体と女性と子犬が置かれますが、女性は笑顔とハッピーな声の対応を止めて物体に対して感情を示しません。

3つ目のグループは、女性は抜きで2つの物体と子犬だけが部屋に置かれます。

結果は、1つ目の女性が笑顔で対応したグループの子犬は、早い段階で未知の物体に近づいて探検を始めました。

2つ目の女性が中立的な対応をしたグループの子犬は、物体にはあまり近寄らない又はゆっくりと近寄るという行動でした。

3つ目の子犬だけの場合は、やはり物体を怖がって、物体と接触しようとする子犬はいませんでした。

このように8週齢という非常に幼い子犬でも、人間を安全確認の情報源として信頼することが明らかになりました。

犬が幼いうちから、人間の感情的な反応に注意を向けるのは、犬の家畜化の中で進化した部分であると考えられます。

まとめ

4匹の子犬と女性

ハンガリーの大学の研究で、子犬が安全か危険かを判断する時に母犬や人間の感情的な反応を手掛かりにしているという実験とその結果をご紹介しました。

同族である犬だけでなく、人間のことも同じように情報源として信頼しているという今回の研究の結果は、犬の家畜化の過程の進化の研究としても重要なことなのだそうです。

研究としての価値ももちろん大切なのですが、1時間くらい一緒に過ごした人間を、母犬に対するのと似たような信頼を寄せる犬の性質に、改めて人間と犬の深い絆を感じて嬉しくなりますね。

《参考》
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003347218301490

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