犬は地震を予測できるだろうか?
世界の各地で大きな地震が起こった場合「そう言えばあの時、うちの犬が前日からソワソワしていた」とか「いつもと違う遠吠えをしていた」など、犬が普段とは違う行動をしたという報告がされてきました。
犬は本当に地震を予知できるのでしょうか?また、それは科学的に証明できるのでしょうか?
このたびアメリカの地震学会の研究紀要に、犬を含めた動物と地震の発生に関する研究が報告されました。
犬の行動と地震の関連を科学的に評価するのに必要なこと
地震の前に犬がいつもと違う行動をした=犬は地震を予測した!という風にはならないのが科学の世界です。
残念ながら現在報告されている地震の前の犬の異常な行動の報告は、ひとつひとつのエピソードに過ぎません。地震学において「犬が地震を予測した」と科学的に評価を下すためには一定の明確な条件が必要です。
例えば
- 異常行動を見せた犬と震源地との距離
- 異常行動は地震が起きて以降には観察されていないか
- 犬は健康かどうか
これらの疑問に対する答えがなければ、犬が地震を予測したという証拠を分析することは不可能です。
地震と動物の行動の関連についての研究
アメリカの地震学会に報告された研究はドイツ地質科学研究センターによって行われました。
研究者は過去の160件の地震と、それぞれに関連して報告された動物の異常行動729例の関連の統計を取りました。
統計によると、地震に先立って異常行動が起きた時期は数ヶ月前から数秒前まで広範囲に及び、震源地からの距離も数kmから数百kmまでとても多様でした。
しかしそのようなデータの多様性とは別に、研究者は前震(本震の前の小さい地震)と動物の異常行動が強く結びついていることが発見されました。
現在の段階では、犬を含めて動物が地震を予測するという科学的な根拠はまだ出せないのですが、前震と行動の関連は大きな発見でした。
動物が直接地震の揺れを感知しているのかもしれないし、地下水の変化や地面からのガスの放出など、前震によって引き起こされる変化を感知している可能性もあり、引き続き研究が行われる予定だそうです。
まとめ
アメリカの地震学会に報告された、犬を含めた動物は過去に起こった地震を予測していたのか?という疑問に関する研究をご紹介しました。
残念ながら現在のところ、犬が地震を予測していたという科学的な証拠はまだありません。
けれどもそれは犬が地震を予測できないという意味ではありません。今後新しい発見がある可能性は大いにあります。
犬以外にも多くの動物が地震の前に異常な行動をしたという事例はありますが、人間にとって最も身近な動物である犬ですから「身の回りでこれくらいの数の犬がどのような行動をしたら地震に備えて準備をしましょう」というような予測ができるようになればありがたいですね。
また人間のためだけでなく、異変を察知して恐怖を感じているであろう犬や他の動物のケアにも役立てるようになればいいなと思います。
今後の研究に期待したいですね。