犬の形をしたロボットの開発と研究
犬型のロボットと言えば、SONYのAiboが頭に浮かぶのではないでしょうか。今回ご紹介する犬型のロボットの研究開発は、もう一歩踏み込んで介助や探知など作業犬の領域のお話です。
アメリカのワシントン大学の人工知能研究所では、犬の形をした人工知能搭載の作業ロボットの開発が行われています。
研究はどんなふうに行われ、最終的な目標はどこに設定されているのか、興味深い点をご紹介します。
「犬のように考える」人工知能の開発
研究者たちは「犬のように考える」人工知能を開発しようと試みています。
そのためにスカウトされたのは、研究チームメンバーの愛犬であるアラスカンマラミュートのケルプでした。
犬の行動の詳細なデータベースを作るために、ケルプは1日2時間程度、脚、胴、尻尾にモーションセンサーを、頭部に小型カメラを装着して過ごします。カメラとセンサーはケルプが食事やボール遊び、屋内外を歩き回る様子を記録していきます。
2週間ほどの間にケルプの動きに関する24000以上の動画が記録されました。
研究チームは『機械学習』の手法を使って、ケルプの行動を分析しました。(たいへんザックリと簡単に言うと、機械学習の手法とは、大量のデータを分析して、そこからパターンを見つけ出すことです。)
分析したデータは人工知能のトレーニングに使用され、人口知能はケルプが様々な状況でどんな反応をするかが予測できるようになりました。
例えば、人工知能は5つの連続した画像からケルプの次の動きを正確に予測します。
またケルプの過去の行動パターンから、足場が悪くて近づけない場所や立ち入りが禁止されている場所を特定することや、公園、道路、スタジアム、路地など異なる環境の区別ができます。
犬は広い屋外にいるか、狭い室内にいるかなど環境に合わせて体の動きも変えます。人工知能はこれらのことも実行が可能なのだそうです。
人工知能を搭載した犬型ロボットが目指す目標
研究チームでは今後は違う犬種の行動データも収集してデータベースを大きくしていく予定だということです。
そして、この研究チームが目標としているのは介助犬の役割を果たすことができる4足歩行のロボットを作ることです。本物の犬を介助犬になるまで訓練することは大きな費用がかかりますが、技術を確立して犬型ロボットが作れるようになれば、より低い予算で高齢者やハンディキャップのある人のためのロボット介助犬が提供できるようになります。
体の動きにハンディがある人のための介助犬なので、食事や排泄の心配をしなくても良い犬型ロボットには期待が寄せられます。
実用化にはまだまだ問題がたくさんありますが、研究者は「我々は正しい方向に踏み出している」と述べています。
まとめ
ワシントン大学での人工知能搭載のロボット犬の研究開発についてご紹介しました。
犬と人間のやりとりはとても微妙で繊細なので、今のところはまだロボットが全てをカバーできるというところには達していませんが、多くの課題は順調に解決しているようです。
犬と人間の長い歴史のある深い絆をロボットに置き換えることはできないでしょうが、危険だったり負担が大きかったりする作業がいつの日か犬からロボットに移行していくのは良いことだと思います。
また個人的には、年を取って犬の世話が難しくなったら愛玩用のロボット犬を迎えたいなあと思っています。犬型ロボットの未来に期待したいですね。
《参考URL》
https://arxiv.org/pdf/1803.10827.pdf