犬との関係が強い子供は、他の関係も強い?
アメリカはオハイオ州のケント州立大学研究チームによって、ペットとして飼われている犬と関係が近く結びつきの強い子供は、両親や仲の良い友達との絆も強く良い関係を築いているという研究の結果が発表されました。
これは、ペットとして犬を飼っている家庭の年齢9〜11歳の子供たち99人を対象に、犬、両親、友達との関係についてアンケート形式の聞き取り調査から分析して導き出されたものです。
犬と人間関係、どっちの影響が先なのか?
この結果は「ペットの犬を世話したり気遣ったりすることで、自分の周囲の人間に親密な気持ちが生まれる」のか、それとも「人間同士の良い関係がモデルになって、動物との正しい接し方が身につく」のか、どちらなのでしょうか。
研究者は「今回の調査からはそこまではわかりません」と述べていますが、子供と愛犬のつながり、子供と周囲の人間とのつながりはどちらも互いに影響しあっていることは間違いがないようです。
聞き取り調査の他の項目からは、愛犬と身体的な接触が多い子供は母親との関係が近く強い傾向があることもわかりました。この傾向は父親や友達との関係には特に当てはまらなかったそうです。
これは子供が小さい頃から、怖いことや痛いことがあった時に抱きついたり撫でてもらったりという避難場所的な役割を母親が果たしていることが多いため、自分が母親にしてもらったのと同じように犬に接するからだろうと考えられます。
ペットの犬が子供に与える影響
研究チームは同じ99人の子供たちを対象にして別の実験も行いました。
子供が何かストレスを感じる出来事に直面した時、犬がどのような影響をもたらすかというものです。
子供たちには研究員たちに見られ録画もされているという状態で、自分についての5分間のスピーチをするという課題が与えられます。大人でも、緊張してプレッシャーを感じるストレスフルな状況ですね。
子供たちは2つのグループに分けられ、1つのグループはスピーチをする時にそれぞれの子供の愛犬が同席し、もう1つのグループは犬の同席は無しでした。子供たちにはストレスレベルの計測用の機器が装着されています。
結果は簡単に予想できる通り、愛犬と同席した子供たちのストレスレベルは犬無しの子供たちよりもずっと低いものでした。
さらに、犬が膝に顎を乗せたり、脚にもたれかかるという身体的な接触が起きた時には、ストレスレベルはさらに低いものになっていました。
研究者からの大切な警告
親が子供に愛情を注ぎ、子供と良い関係を作ることで、子供は犬を含めた動物や友達との接し方を学び、そこから得たポジティブな経験がまた周囲の人間との関係を良くしていくという理想的なサイクルが見えてきました。
研究者はこの結果を見た人々に大切な警告を発しています。
けれども、今すでに犬と暮らしている家庭なら、子供たちの生活に犬を積極的に関わらせるのは良い方法です。
例えば、初めての習い事に行くなどちょっと緊張する時に送り迎えの車に犬を同乗させたり、家庭の中で子供に対して少し改まった話をする時に近くに犬もその場にいるようにする、などです。
積極的に関わらせると言っても、犬に負担をかけないことがポイントです。犬が嫌がることを強いるようでは、良い関係を築くことはできないからです。
まとめ
犬と強いつながりを持っている子供は両親や友達との人間関係も良好な傾向が強いという研究結果をご紹介しました。
大人の場合の同じような研究結果はすでに発表されているのですが、小学生くらいの子供たちにも同じ傾向が認められ、さらにストレスレベルの緩和という点でも犬は大人にも子供にも良い影響があるというのは、犬好きとしては嬉しい結果ですね。
犬を含めた動物全般に優しく良い関係を築き、同様に人間同士のつながりも良いものになっていく、そんな世界が広がっていけば素敵ですね。
《参考》
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5800779/