オビディエンスとは?
オビディエンスと聞いてもピンとこない人は多いと思います。日本語で言い換えると「服従訓練」のことです。ですが、実際は服従させることだけを目的とした訓練ではなく、ドッグスポーツの指示としての意味合いが強いです。
オビディエンス大会はドッグスポーツの一環
一般社団法人ジャパンケネルクラブでは、2008年より家庭で飼育されている犬の訓練の一環として開催されています。オビディエンス大会は犬の適切な躾を主な目的とした競技でしたが、現在はスポーツ大会の一種として飼い主の間では捉えられています。
オビディエンス競技が盛んに行われているヨーロッパと違い、日本では飼い犬を思う存分可愛がり、丹念なお手入れに力を入れる飼い主が目立ちます。犬の捉え方の違いから、日本の飼い主の間ではオビディエンスという言葉はあまり馴染みがありません。
監修ドッグトレーナーによる補足
服従訓練と聞くと、「なんだか厳しそう」「命令しないといけない」「上下関係を作る」なんてイメージを持つかもしれません。しかし現実のオビディエンスの意味合いは全く違います。
例えばオスワリはどのように教えていくのか?どんな考えで教え進めるのかというと、「犬はどう教えたら座ることが出来るようになっていくのか」。犬に理解してもらえるように教えなければなりません。決して無理やりだったり命令じゃないんです。犬が理解できるように人が創意工夫を凝らします。
ただただ厳しいだけでオビディエンスをしているペアは、様子を見るだけですぐに見抜かれてしまいます。本来あるべきオビディエンスの姿とはオビディエンスを通じて犬への理解を深める、息のあった素晴らしいペアを目標として練習を重ねていくんですね。
オビディエンスを学ぶことで、犬の気持ちを理解していくことに繋がります。そして気持ちを理解してもらえた犬は、飼い主に対してより深い愛情を持ってくれるようになるでしょう。
オビディエンストレーニングの方法について
オビディエンストレーニングというと犬の訓練かと思いがちですが、実は飼い主の犬に対する扱い方の訓練でもあると言えます。
訓練内容は主催者によって若干異なる部分はありますが、大まかにまとめると以下のようになります。
- 犬の扱い方
- おもちゃの使い方
- マッサージの仕方
- アイコンタクトのやり方
- ボディランゲージ
オビディエンス大会やスポーツ競技等に出場させる為には、まず飼い主さんのトレーニングから始める必要があります。飼い犬の扱い方、そして接し方など、オビディエンスには欠かせない要素となります。なぜかと言いますと、飼い主が犬に的確で明確な指示を出さなければいけないからです。
特にオビディエンス大会に出場する初心者の方は、まず始めに人間が犬とのスキンシップや意思疎通の仕方を教わることが重要です。犬との信頼や絆を深めていくことができれば、その後はスムーズな訓練へと繋げることができるでしょう。
オビディエンス大会について
オビディエンス大会は5種類の競技科目に分かれています。各競技には参加条件が細かく定められているので、参加する際にはよく確かめることが重要です。
まず、最も敷居の低いランクはオビディエンスビギナー1、2という競技科目です。生後9ヶ月の非公認の犬でも参加可能ですが、クラブに登録済みであることが出場の条件です。
オビディエンスビギナーをクリアするとオビディエンス1、2、3とランクがアップしていきます。オビディエンスビギナーをクリアし、オビディエンス1の競技に参加したい場合は非公認の状態では参加できないので注意が必要です。
なお、オビディエンス3の競技は生後15ヶ月以上の犬に限られるので注意してください。
監修ドッグトレーナーによる補足
オビディエンスを開催している団体にもよりますが、2020年6月現在でSP(ステップ)という出場クラスを設立している団体もあります。
こちらでしたらクラブに入会している必要はありませんし、非公認(血統書がない、血統を認められていない、純血種ではない)の犬でも参加が可能になります。
「入会するのはちょっと・・・」、「うちの子はMIXだから・・・」という方はお試しで参加してみたり、犬種に分け隔てがない団体を見つけてみるのも可能性を広げるいい方法かと思います。
オビディエンスをやることで得られるメリット
オビディエンスはスポーツ大会ではありますが、躾の一種でもあります。したがって、犬にとっても飼い主にとっても決して楽しめる内容ばかりではありません。
オビディエンスは服従訓練でもあるので、易しい内容ばかりではなく、時には苦痛を伴うこともあります。ですが、犬にとって優しく接して可愛がることだけが愛情の示し方ではありません。
犬にはリーダーがいることで得られる安心感もあります。時には厳しく接する事も犬にとっては現代社会で生きやすくなる場合もあります。オビディエンスという訓練を共有し得られる時間は、かけがえのないものとなるでしょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬が成長できていない時は犬も悩んでいます。そして人は犬の気持ちを想像して、どうすれば成長できるか悩むでしょう。どちらか一方だけが壁にぶつかるのではなく、お互いに悩んで壁を乗り越えていくのですね。
二人三脚のように息を合わせてペアになって壁を乗り越える方法を模索していく。そして壁を乗り越えることができれば、達成感や喜びという大事な気持ちを共有することになるでしょう。
オビディエンスをすることだけが目的ではなく、その先にある大事な価値観を得られるようにするのが大切ではないでしょうか。
まとめ
オビディエンス大会に出場する為の資格はハードルが高いものではありません。ですが、それなりに厳しい訓練が飼い主と犬を待ち受けています。
一方で犬にとって適切な躾は周囲に危害を加えないためにも欠かせないものです。愛するワンちゃんが問題犬という烙印を押されない為にも、ビギナークラスに出場することは、犬と飼い主にとって良い効果が得られると感じられます。
オビディエンス大会に生半可な気持ちで挑戦することは勧められませんが、愛犬との関係を改善したい等の強い要望があるならば、参加することは有意義なものとなります。
監修ドッグトレーナーによる補足
最初に大会を見学すると「私にはこんな高度なことはできない・・・」と感じる方も少なくありません。地域にもよるのですが、関西圏だと特にレベルが高い傾向があります。
しかし間違えて欲しくないポイントがあります。何のためにオビディエンスをするのか?ということです。
あなたが「愛犬を少しでも理解してあげたい」、「かけがえのないものを得たい」という考えなら他人と比べるのはナンセンス。過去の自分よりも少しでも良くなっていくことが成長なのではないでしょうか。そこに価値をおけば愛犬の成長にも繋がります。
出場者中には案外気さくな方も多くいらっしゃいます。聞きたいことを質問すれば、悩みを色々と聞いてくれたりもするでしょう。そこから新しいお友達を作れたり、新たな発見があるかも知れません。ご近所でオビディエンスの大会が開催されているか調べてみるのもいいかもしれませんね。