しつけの一つで犬に「仰向け」をさせる場合があります。少し前まではスタンダートなしつけの一つだったそうですが、最近ではこの仰向けのポーズには賛否両論があります。いったいなぜでしょう。
犬にとっての仰向けの意味と、仰向けをしつけるメリットとデメリットから考えてみましょう。
犬にとっての「仰向け」とは?
犬を含む四足で生活をしている動物、つまり四足動物はお腹を下にして生活しています。普段からお腹を正面に向けている人間とは異なり、歩く時も走る時もお腹は下に向いています。そのためお腹を見せるということは、四足動物にとっては「無防備」な状態になることを表します。お腹を見せている状態では、すぐに反撃ができませんので、仰向けは極端に嫌いな体勢だと考えられます。
また、身体の構造としても、お腹には大切な内臓がある上に柔らかい皮膚で覆われています。身体の中でも弱い部分なので、仰向けになってお腹を見せるということは、自分の弱みをさらけ出していることになってしまうのです。
これは四足歩行である犬も同様で、仰向けの姿勢は基本的に取りたがりません。犬にとっての仰向けは自分の負けを認める「降参」や「服従」を表します。また、信頼できる人間と一緒にいる場合に見せる仰向けは、「リラックス」している状態を表すこともあります。この場合は飼い主さんには弱みであるお腹を見せて、撫でてほしいと考えていたりします。
いずれにしても犬が「自分の意志」で仰向けとなっている場合、そこに敵対心や攻撃心はありません。しかし「強制的」に仰向けをさせられると、そこには少なくともプラスの心は働いていないと考えられるのです。
「仰向け」をしつけるメリット
次に仰向けをしつける場合のメリットをご紹介します。
主従関係を認識させることができる?
まず一番良く言われることが飼い主さんとの「主従関係を認識させることができる」という点です。飼い主さんの命令によって仰向けをさせることで、主従関係を明確にすることができるというのです。
しかし、最近では犬には主従関係といった観念は存在せず、そこにあるのは「信頼関係」による協調性だという論も出てきています。そのため無理に犬が嫌がる仰向けをさせることで、その信頼関係が築けるのかという点から考えると、少し疑問が残る部分となります。
隠れた病気の早期発見
犬が仰向けができる場合、普段は隠れている腹部の観察が容易になります。そのため病気の早期発見ができることが考えられます。また、腹部を飼い主さんに見せるほど信頼関係を築けている場合、身体を触れることも容易にできるようになっていることが多いです。そうなると病院での診察や、お風呂、爪切りといったタイミングでも、とても有効に働きます。
「仰向け」をしつけるデメリット
次にデメリットを考えてみましょう。
精神不安
犬が本来は嫌がる仰向けを強制的にさせられる場合、犬は精神的に押さえつけられてしまい、不安定な性格になるといわれるのだそう。前述したように、信頼関係のうえで成り立ってない場合、精神不安に陥る可能性はデメリットといえるでしょう。
攻撃性
1つ目と同様に、強制的に恐怖によるしつけで仰向けを覚えさせる場合、犬は恐怖で締め付けられ、怯えていきます。結果として、恐怖心が攻撃性へと変わっていく可能性があるのだそう。主従関係ができていたとしても、攻撃性の高い性格になってしまうのはデメリットといえるのではないでしょうか。
まとめ
恐怖による強制的な仰向けのしつけは、犬の精神不安や攻撃性を高めてしまう懸念があることが分かりました。一方、リラックスした状態で自分から仰向けをする場合は、そこに信頼関係が築けていることが分かります。恐怖による支配ではなく、自然と仰向けになることを覚えることもあります。
我が家の愛犬は子犬の頃から仰向けには抵抗がないようで、呼んだらお腹を出して撫でてのポーズをとります。そのタイミングで爪切りやお腹のチェックをするようにしていますよ。犬によっても抵抗感は違うと思いますし、仰向けについてはさまざまな意見があるため正解はわかりませんが、様子を見ながら無理なしつけはしなくてもいいのかもしれません。