犬に待てをしつける必要性やメリット
犬に待てなどのしつけを行うことが、かわいそうに思う飼い主さんもいるかもしれません。しかし、犬にしつけを行うことは、家族の一員として一緒に生活していく上で非常に大切なことです。
犬のしつけは、犬の鼻の上に餌を置いて、落とさず食べれるようにするような芸とはまったく別物です。犬に待てをしつける必要性を理解し、しっかりとトレーニングを行いましょう。
飼い主さんとの絆が深まる
待てのしつけだけに限らず、しつけをすることは、犬と人間の絆を深めることに繋がります。犬に対して厳しい態度を取ることや、命令することが苦手な飼い主さんもいるかもしれません。
しかし、犬は本来集団で行動する動物です。集団の中には必ずリーダーが存在しており、群れを率いる役割を担っています。安心して頼れる絶対的なリーダーがいる状態は、犬にとって居心地の良い場所になるのです。かわいいからといって、しつけをせずに甘やかすことは、犬にとって良いことばかりではありません。
また、外での食事中に待てができるようになれば、飼い主さんと一緒に外食することも可能になります。待てのしつけをすることで、犬と飼い主さんとの関わりをより深いものにすることができるでしょう。
事故やトラブルを防止する
犬と生活していると、犬が道路に飛び出そうとした時や、他の犬に攻撃的な態度を見せた時など、静止が必要な場面に遭遇する機会が多くなります。そんな時に、飼い主さんの一声で、犬が待つことができれば、日常生活での事故やトラブルを回避することができるでしょう。
また、子犬は特に好奇心が旺盛なので、散歩中に拾い食いをしてしまうことがあります。本来食べてはいけない、ビニール袋やタバコの吸い殻、石ころ、ゴミなどを子犬が口に入れようとした時も、待ての指示に従うことができれば誤飲を防ぐことができます。
このように、待てのしつけができていれば、日常生活のさまざまな場面で、大切な犬の身を守ることができるのです。
他のしつけの基礎になる
待てのしつけは、犬が我慢を要求される、他のさまざまなしつけの予行演習となるため、その後の犬のしつけに役立ちます。飼い主さんがいない時の留守番のしつけを行う時など、待てのしつけでじっと我慢する練習を積んでおくと、トレーニングがスムーズに進むことが多いです。
また、待ては飼い主さんとの主従関係を犬に理解させやすいしつけになります。待てのしつけをする中で、飼い主さんがリーダーであることを犬に示し、その後のしつけに役立てましょう。
犬に待てをしつけるのはいつから?
犬の待てのしつけは、家に迎え入れたら早めにスタートした方が良いと言われています。必ずすぐに待てなどのしつけを始めなければいけないわけではありませんが、早い方がスムーズに進むことが多いようです。
一般的に家に来る時の子犬は、生後2ヶ月から3ヶ月くらいのことが多いです。この時期の子犬は、好奇心旺盛で人懐っこい時期なので、飼い主さんともコミュニケーションがとりやすい傾向にあります。
教えたことをどんどん吸収していく時期でもあるので、飼い主さんが焦らずに根気よく待てを教えれば、着実に学習していくでしょう。
しかし、犬に待てを教えるためには、おすわりができないといけません。お座りがしっかりとできるようになったら、待てのトレーニングのスタートです。
犬の待てのしつけ方と教え方のコツ
待ての覚えさせ方には、順番があります。いきなりできるようにはならないので、ゆっくりと1つずつステップを踏んでいきましょう。
また、待てのしつけを行う時は、ご褒美が必要になります。ご褒美として使うおやつは、できるだけカロリーが低いものを選ぶようにしましょう。なお、犬にご褒美を与える時は、犬が満腹にならないように、なるべく少量だけ与えるように注意してください。待てが完璧にできるようになったら、おやつなしでもできるようにトレーニングを重ねていきましょう。
じっとさせる練習をする
まずは、犬におすわりをさせてください。犬が座ったら「いいこ」と一言だけ声をかけ、ご褒美を目の前に見せて、手を犬の鼻の上のあたりにかざし、2秒間だけじっとさせます。それができたら、犬にご褒美を与えてください。2秒間じっと座っていることができたら、徐々に時間を伸ばしていきましょう。
いきなり長い時間チャレンジするのではなく、秒刻みで少しずつ進めます。じっくりと何日間かかけながら、犬が10秒間じっとしていられるまで練習しましょう。
なお、犬が待てをしている間は、飼い主さんは動いたり声を出したりせずに、じっと犬の目を見つめるようにしてください。また、犬が動き出したタイミングでごほうびを与えると、逆に動くことが強化されてしまうの注意が必要です。もし、犬が途中で動いてしまっても、大きな声を出したり、慌てたりせずに、静かにやり直しましょう。
「待て」の指示語と行動を関連づける
犬がおすわりの姿勢のまま、10秒間待てるようになったら、動かずにじっとしている状態と指示語を関連づけます。
まず、おすわりをして犬が腰を下ろした状態で、「いいこ」と褒めます。これまで飼い主さんは何も言わずに犬に待てをさせていましたが、「いいこ」と声をかけてから2秒経過したら、ここで初めて「待て」という指示語を使います。
そこから10秒間待てができたら、ご褒美を与えてください。また、指示を出す時は、「待て」の他に「ステイ」などの英語を使っても良いでしょう。
終わりの指示語を教える
次に、犬の待てを解除するための「よし」などの指示語を教えましょう。日本語の「よし」の他に、英語の「フリー」を使っても良いでしょう。
まずは今まで通りのやり方で、犬におすわりの指示を出し、犬が座ったら「いいこ」と声をかけ、2秒経過したら「待て」と指示を出します。
ここで、10秒カウントしながら飼い主さんが犬の正面から1歩だけ後ずさりします。10秒経過したら、「よし」という解除語と共に、ご褒美を持った手を犬に差し出しましょう。この流れを繰り返すことで、犬は「よし」という言葉で動いても良いことを学習します。
どんな場所でもできるようにする
犬が一通り待てのしつけを覚えたら、次はどんな場所でも待てができるようにトレーニングしていきます。「よし」の指示語を出す前に、1歩ずつ犬との距離を延ばしていき、5歩くらいまで離れられるようにして、待てを定着させていきましょう。
最初は室内での練習になりますが、外でもできるようにトレーニングして、どんな場面でも待てができるように学習させます。最終的には、家族が食事中に食べている物を欲しがる時や、犬に餌を与える前に一定時間待たせるいわゆる「おあずけ」の訓練で応用しておきましょう。
犬が待てができない原因と解決方法
飼い主さんの指示が上手く伝わっていない
「待て」や「いいこ」、「よし」などの指示語が、指示を出す人によって違っていると、犬は混乱してしまい、指示に従うことができなくなります。犬にしっかりと指示を伝えるためにも、家族みんなで統一した指示語を決めてから、しつけをスタートしましょう。
また、待てのしつけをしている時に、大きな声を出すと犬は飼い主さんが遊んでくれていると勘違いしてしまい、余計に動いてしまいます。飼い主さんの指示を分かりやすく犬に伝えるためには、犬を褒める時も、体を撫でまわしたり大きな声で喜んだりしてはいけません。必要な指示語のみを使って、簡単な言葉で褒めるように気をつけましょう。
犬が警戒している
待てのしつけ中に、犬が唸るためトレーニングにならず困っている飼い主さんもいるかもしれません。唸る行為は、犬が飼い主さんに何かしらの警告を発している状態です。
目の前にあるおやつがもらえないのではないかと犬が警戒し、飼い主さんを威嚇しているのかもしれません。また、おやつがもらえないことが理解できていなかったり、待てのしつけが厳しすぎたりする可能性も考えられます。
その場合、待てのしつけより先に、唸ることをやめさせるしつけを優先してください。あまり待てのしつけに執着しすぎないようにして、今の犬の状態にあったトレーニングを先に進めていきましょう。
長時間のトレーニング
待てのしつけをする時間が長すぎると、犬はトレーニングが嫌になってしまいます。犬種による性格の違いや個体差もあるので一概には言えませんが、犬の集中力は一般的に5分くらいです。
1回のトレーニングに1時間や2時間かけてしまうと、犬にストレスが溜まり、思うように待てを覚えられなくなります。また、飼い主さんにとっても、トレーニングが上手く進まないことがストレスになってしまいます。効果的に犬に待てを覚えさせるためには、1回のトレーニングの時間を短くして、長い期間かけて気長に行うことが大切です。
犬に待てをしつける際にやってはいけないこと
犬に恐怖心を持たせない
待てのしつけが上手くいかなくても、犬に大きな声で怒る行為は避けましょう。飼い主さんから怒られると犬は委縮してしまい、待ての指示が正確に理解できなくなってしまいます。怒られたことだけが頭の中に残り、なぜ怒られたのかも分からず混乱し、待てのしつけどころではなくなるでしょう。ましてや叩く行為は、絶対にしてはいけません。
怒ったり叩いたりすると、待てのしつけができなくなるだけではなく、犬が恐怖心からストレスを溜めてしまい、震えるようになったり、夜中に鳴くようになったりする可能性もあります。犬に待てを覚えさせるためには、飼い主さんの辛抱強さが必要です。すぐに覚えられるものではないことを、よく理解しておきましょう。
おやつに依存しすぎない
待てのしつけをする際に、おやつのご褒美に頼りすぎると、犬が待ての最中によだれを垂らすようになるかもしれません。待てのトレーニングに、ご褒美は欠かせませんが、おやつがないと待てができない状態にならないように注意する必要があります。
最初はおやつをご褒美にしてトレーニングを始めますが、徐々に飼い主さんから褒められることが犬にとっての最高のご褒美になるように信頼関係を築いていきましょう。犬がおやつなしでも待てができるようになれば、自然とよだれもおさまってくるはずです。
犬の待ての訓練成果を競う大会がある
JKCが主催する犬の訓練競技会では、飼い主さんと犬の日頃のトレーニングの習熟度を競い合い、成績に応じた順位をつけて入賞者を表彰するイベントを開催しています。一般家庭犬向けに行われるイベントで、日頃からトレーニングを楽しんでいる飼い主さんとさまざまな犬種が多く参加しています。
飼い主さんと犬へ、審査員からアドバイスしてもらえることもあり、的確なアドバイスはとても参考になるようです。この訓練競技会は、誰でも参加することができ、暑い真夏を除き全国各地で開催しています。しつけの基本である「待て」が必要な課目もあるので、興味がある飼い主さんは、一度JKCのホームページを確認してみてください。
訓練競技会とは|一般社団法人 ジャパンケネルクラブ(JKC)
まとめ
犬に待てを覚えさせることで、犬と飼い主さんの生活はより良いものになります。待てのしつけのポイントにはさまざまありますが、トレーニングをスムーズに進めるためには、犬の集中力を保つことが非常に重要です。
長時間のトレーニングは避け、1回のトレーニング時間を短時間にし、ゆったりとした気持ちで行いましょう。今回紹介した「待て」のしつけの方法を参考にして、トレーニングを進めてもらえればと思います。
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女性 Hono