1.「名前」を呼ばれる=「叱られる」
犬の名前は、あくまで人間側が愛犬を呼ぶときの都合。そもそもワンコは人間の言葉は分りません。言葉とセットになった体験の良し悪しで判断しているのです。
なので、「ポチ、ダメでしょ!」バシッ!、「ポチ、吠えちゃダメ!」鼻先ギュッ!なんてやっていると、「ポチ」=「イヤなこと」がセットになってしまうんですね。
これが繰り返されると、ポチにとって「ポチ」は「イヤなこと」の前ぶれでしかなくなります。なので、「ポチ」と呼ばれると「またヤなことされる!」から無視する逃げる、「ヤなことすんなよ!」とうなるなど、ますます飼い主の意に反する行動をとるようになります。
2.信頼関係を損ねる
たとえば、
「ポチ、おいで〜!」と呼ぶ
↓
ポチは「おいで」をよく理解していないか、何かに夢中になっていて来ない
↓
「ちょっと! ポチ?! 早く来なさいよっ! 」
↓
やはり来ない
↓
「ポチく〜ん、おいでぇ〜」または「ポチ〜、ビスケットあげるよ〜」などと(奥の手とばかり)甘い声で呼んでみる
↓
飼い主の口調が優しく変化した、もしくは「ビスケット」の言葉に反応したポチが期待満載で「ワーイ♡♪」とやってくる(ここまでの間に飼い主のイライラもピーク)
↓
「呼んだらサッサと来なさいよっ!」とバシッ!とまでいかずとも怒りのオーラ全開!
(この時すでにビスケットをあげるのを忘れている。もしくは「ビスケット」は単なる釣り餌で、もともとあげるつもりはない)
↓
「なんで?!どーして?!」←ポチの気持ち
はい、ここまででもう、名前を呼んで叱ることが、なぜ信頼関係を損ねるのか、お分かりになりますよね?
「ワーイ♡♪」とやってきたのに叱られたら、ポチくんは全くワケが分らず混乱してしまいます。
これが繰り返されるとポチの混乱はますますひどくなり、「普段の優しい顔」と「呼びつけておいて叱る顔」の二面性を持つ飼い主に不信感を抱くようになります。そうなると、他の指示にも従わないなど別の問題に波及していくこともありますし、頼るべき飼い主が信用できないとなれば、犬を情緒不安定に陥れてしまうおそれもあります。
どんなに愛犬を可愛いと思っていても、こうして両者の気持ちがすれ違ってしまうとしたら、あまりに悲しい!
3. 犬にとって「名前」の価値が薄れる
犬は人間と繊細なコミュニケーションがとれる希有な動物です。それだけについつい擬人化して人間のコドモのように接してしまうという落とし穴があります。
日頃からほめる時も叱るときも、さらに雑談のように話しかけるたびに名前を呼びまくる飼い主さんがいます。
「ねぇ〜ポチぃ、今日のご飯なんにしようかぁ〜」「ちょっとぉ〜ポチったらぁ〜、それやめてよねぇぇぇ〜(さほど困っていない口調で)」、「ぽち、大好きだよぉぉぉ」などなど・・・。
こうなると、「ポチ」という言葉がその後に続く言葉に同化してしまって、ほめられても叱られても、犬にとって名前は意味を為さなくなります。
「ボクのママ、いつもポチポチひとりでナンかしゃべってんな〜」と、ママの言葉はポチ君の耳を通り過ぎていくだけ。これでは「名前を呼んで叱ってはいけない」以前のモンダイです。
もし思い当たることがあったら、名前の連呼と話しかけをやめてみましょう。叱るときには、無言のまま何か音を立てて注意を引いたり、イタズラしているモノをサッと片付けたりしてやめさせます。
ほめる時は笑顔を見せ、好物のおやつかおもちゃをごほうびとして与えます。これをまる1日だけでも続けてみた後、ほめるタイミングの時に名前を呼んでみてください(もちろん笑顔と明るい声のセットで)。
犬の反応が違うと思います。
まとめ
犬を叱るときになぜ名前を呼んではいけないのか、シンプルに考えれば分ること。
自分の子供時代を思い出してみましょう。「○○、ちょっと来なさい」と呼ばれた時の
いやぁぁぁぁぁな予感。
「○○」と呼ばれるだけで、
「また叱られる!」
「・・・ヤバッ! あのことかな(汗)」
などと思いませんでしたか?
名前を呼ばれるたびに叱られていたら、自分の名前、好きになんかなれないはず。
犬だって同じなんです。
叱られるよりほめられたい、名前を呼ばれるならほめられる時のほうがいい。
それだけ犬は我々人間と非常によく似た感性をもつ動物なんだってこと、いつも忘れずにいたいものですね。