犬のマウンティングがしつこいのはなぜ?
犬は生殖行動以外にも様々な理由でマウンティングを行い、一度マウンティングを始めるとやめられず、何度もしつこくマウンティングを繰り返すことがあります。
その理由についてを解説していきます。
犬の性本能による衝動が強く現れる
去勢していないオスの犬が発情期のメスの犬を見ると、そのフェロモンに反応して生殖行動のためにマウンティングをします。特に交尾経験のあるオスの犬では、性的興奮が強ければ強いほど、衝動的でしつこくマウンティングをすることがあります。
メスの犬が発情していない場合は、生殖行動のためにマウンティングをすることはありません。
相手に対する自分の優位性をアピールしている
大人しい犬や自分より年下の犬を前にして「自分の方が上だ」と主張したいときに相手にマウンティングをする事で自分の優位さを示します。相手が穏やかな性格だったり嫌がらない場合は、しつこく上に乗ってしまうことがあります。
自分の方が優位だと考えている犬は、飼い主さんにもこの意味でのマウント行為をしてしまう場合があります。
過度な興奮や遊びの延長で行っている
ドッグランやおもちゃで遊んだり、飼い主と一緒に遊んでいるうちに、興奮して抑えきれずに近くのクッションやぬいぐるみ、あるいは飼い主さんにマウンティングをしてしまうことがあります。
興奮状態にあるためしつこくしてしまい、特にドッグランでは相手の犬とケンカになりかねないので非常に危険です。
この場合のマウンティングは、社会化期(生後3~13週齢)に母犬や兄弟犬と十分な時間を過ごせなかった犬に多くみられます。これは、子犬の頃、他の犬のボディランゲージの読み方や、力の加減や遊び方がわからないまま育ってしまったためと言われています。
この問題行動としてのマウンティングは、母犬から早く離されたことによる弊害の一つとされています。
飼い主が構ってくれたという記憶から習慣化した
何らかの理由により飼い主さんにマウンティングをしたとき、笑ったり驚いたり騒いだりすると、犬は「構ってくれた!」と思ってしまいます。
犬は、嬉しい・楽しいなどのプラスの気持ちをよく覚えているため、以前の記憶から構ってほしいときや遊んでほしいときのアピールとしてマウンティング行為をする事があります。
習慣化すると、一緒に遊んだり、構ってくれたりするまで止めない場合があります。
精神的なストレスを解消するために行っている
犬がストレスを感じているとき、ストレス解消の行為としてマウンティングをする場合があります。
- 動物病院など苦手な事があった
- 運動不足
- 飼い主とのコミュニケーション不足
- 環境が変わった
- 退屈
など、犬によって様々な理由があります。
この場合、苦手な場面での状況下またはその後に、クッションやぬいぐるみなど自分の体と同じ大きさの身近なものを抱えてのマウンティングをするケースが多く見られます。
独占欲を表している
「これは自分だけのもの!」「これは誰にも取られたくない!」という独占欲からマウンティングをする場合があります。
お気に入りのぬいぐるみやクッション、おもちゃなど、いつも同じ(特定の)物だけをしつこくマウンティングする場合は、これが原因かもしれません。
独占欲が強いほど、特定のものにしつこくマウンティングする傾向があります。
犬のしつこいマウンティングによる悪影響
マウンティングされた犬はもちろん、その飼い主さんもいい気はしないでしょう。なにより、相手の犬と飼い主さんにも悪影響がおよぶこともありますので、マウンティングがしつこく続く場合は、早めにやめさせてあげる必要があります。
しつこいマウンティングには、どのような悪影響があるのかを解説していきます。
マウントされた犬や人が不快に感じてトラブルの元になる
犬のマウンティングという行為は、飼い主である自分にとっても気まずいものですし、マウンティングされる犬も相手の飼い主側もいい気はしないでしょう。
たとえ、遊びの延長のマウンティングであっても、あまりにもしつこくしていると相手の犬を怒らせてケンカになったり、思わぬケガなどのトラブルの原因になってしまいます。
また、体が小さな犬や穏やかな性格の犬は恐怖を感じてしまい、他の犬が怖くなってしまうなどの精神的負担を抱えてしまう可能性があります。
分泌物により対象物を汚してしまう
興奮によるマウンティングをしているうちに陰部から液体が出てしまいます。
嬉しい、楽しい、遊びの延長など、性行為以外の興奮の場合に出てしまう液体のほとんどは尿で、これは嬉しいときに出てしまう嬉ションに近いものがあります。
これにより、マウンティング対象が他の人や犬の場合には、洋服や体を汚す可能性があるので、できるだけ早く引き離す必要があります。
犬の陰部や足腰へのダメージにつながる
マウンティングをしすぎると、陰部を無理にこすって傷つけてしまうことがあります。
陰部の傷は気づかないうちに悪化し、気づいたときにはすでに化膿していることがよくあります。そうなると病院へ行く必要があり、犬にも飼い主にも負担がかかってしまいます。
また、無理な体勢によるマウンティングにより腰や関節を痛めてしまい、更に酷い場合はヘルニアになってしまう可能性があります。足腰にトラブルを持っている犬は悪化してしまう恐れがあります。
過度なマウンティングは、健康な犬の足腰や陰部に良くないので気を付けてあげたいですね。
飼い主との信頼関係が崩れる可能性がある
マウンティングの行動を放置しておくと、犬は「自分の方が優位」「飼い主には自分のわがままが通る」と勘違いをしてしまいます。
そうなると、犬は飼い主さんを見下したり、言うことを聞かなくなったりして、信頼関係が崩れてしまう可能性があります。今までの信頼関係が崩れてしまうと、しつけが難しくなり、また問題行動が増えてしまう原因にもなります。
犬が飼い主にマウンティングするのは、「遊びたい」「嬉しい」「遊びの延長」などの理由が多く、飼い主さんはその要求に応えたくなるものです。しかし、マウンティングという行動に出るのは良くないことなので、やめさせてあげましょう。
犬の常同行動として習慣化するとコントロールが難しい
犬の常同行動とは、理由もなく体の一部を必死に舐め続けたり、引っ掻き続けたりと、同じ行動を繰り返すことであり、マウンティング行動が常同行動として現れてしまう場合もあります。
この常同行動としてのマウンティングをしているときには、不安感や孤独感、飼い主とのスキンシップ不足など、何らかのストレスが原因になっているかもしれません。
ストレスからのマウンティング(常同行動によるマウンティング)は心の問題でもあるため、続けていくうちに犬自身も自分の行動を止められなくなってしまい、強迫性障害に繋がってしまう恐れがあります。
このような場合はやめさせるのが難しい為、専門的な行動診療が必要になってきます。
犬のマウンティングがしつこい時の対処法
しつこいマウンティングに良いことは1つもありません。しかし、犬は自分の行動が悪いことだとは思っていないので、人間が止めてあげない限りマウンティングをし続けてしまいます。
周囲とのトラブルを回避し、愛犬との関係をより良くするためには、飼い主自身が適切に対処してあげる必要があります。ここでは、飼い主さんができること、すべきことを説明します。
犬をマウンティング対象から離す
〈マウンティング対象が飼い主の場合〉
マウンティングされたら無言で立ち去ります。これを繰り返す事により犬は「マウンティングをすると遊びが終わる・良い事が起きない」と理解してきます。
根気はいりますが、続ける事により次第にマウンティングをする回数は減っていくでしょう。
しかし、これは徹底して行わないと「あれ?今日は思い通りにいった」と犬が混乱してしまうので、マウンティングが始まったら無言で立ち去ることを徹底する事が大切です。
〈マウンティング対象が犬の場合〉
犬を抱っこしたり、リードをつけて距離をとったり、相手に離れてもらうなど、あらゆる方法で犬をマウンティング対象から遠ざけ、もう近づけないと諦めさせクールダウンさせましょう。
また、特に発情期のメスの犬が近くにいる場合は、事前にマウンティングを防ぐために目を離さないようにすることも大切です。
〈マウンティング対象がおもちゃやクッションの場合〉
この場合、犬は興奮していることが多いので、無理におもちゃやクッションを取り上げようとすると、攻撃的になったり、誤飲したりすることがあります。そのような場合は、別のおもちゃを投げて犬の気をそらし、すぐにその対象物を回収しましょう。
また、対象物が動かせない場合は、おもちゃで気をそらす、散歩に行くなどして、対象物から遠ざけるようにします。これをしばらく続けて、対象物への興味をなくすようにしていきましょう。
叱らずに行動を止めるコマンドを使う
飼い主さんの一言でマウンティング行為を止められるように、普段から行動を止めるコマンドの練習をしていくと良いでしょう。
「ストップ」「ノー」「ダメ」など、愛犬の行動を止めるときに使うコマンドを1つ覚えさせておきましょう。「オスワリ」や「マテ」でも良いですね。
コマンドにより動きを止める事ができたときに、はしっかりと褒めて「コマンドの通りにする=褒めてもらえる」とう事をしっかりと認識させてあげます。
「愛犬のワガママを通さない」「飼い主の言う事を聞かせる」というのはしつけの一環であり、主従関係や信頼関係の構築に繋がります。これを繰り返すうちに、マウンティング中やマウンティングしそうなときに、コマンドで愛犬を止められるようになるでしょう。
習慣づく前に去勢をしておく
メスの犬の発情期に反応して起こる交配目的のマウンティングは、去勢をする事で落ち着かせる事ができます。
しかし、遊びの一環や交付状態、ストレスによるものなど【交配目的以外でのマウンティング】という行動を覚えてしまったは犬は、去勢では治まらない場合があります。
去勢することで男性ホルモンの分泌が減少し、攻撃性・支配性がなくなり普段より大人しくなり結果的には交配目的以外のマウンティングをしなくなる場合もあるようですが、かなり個体差があるようです。
まとめ
愛犬がしつこくマウンティングをしてしまうときには、対象物から離す事はもちろん、予めマウンティングしないように愛犬の行動をよく見る事が大切です。
そして、マウンティングに悩まされる期間が長いと飼い主さんも愛犬も疲れてしまいますので、根本からの解決をしていく事も大切です。
マウンティング行為には、愛犬なりに何らかの原因があります。
どのような理由でマウンティング行為に及んでいるのか、愛犬の行動や周りの状況をチェックし、愛犬の心に何が起きているのかを考えながら適切に対処していくのがしつこいマウンティングの解決の糸口になっていくことでしょう。