犬が雷を怖がる理由とは
なぜ犬は雷を怖がるのでしょうか?
犬が雷を怖がるのは、心の奥底で不安な気持ちを持っている場合がほとんど。そして、犬が不安な気持ちになるのにはさまざまな理由があります。
犬が雷を怖がらないようにするためには、怖がる理由を探りそれぞれに対処していく必要があります。では、犬が雷を怖がる理由にはどのようなものが考えられるのでしょうか。
聞き慣れない音に恐怖を感じるから
普段の生活で雷の音を聞くことはほとんどありません。そのため、犬は慣れない大きな音や雷に遭遇すると、本能的に危険を感じて不安や恐怖心を抱くようになります。
人間よりも体が小さく感覚器官が敏感な犬は、雷の音や雷光を人間以上に強く感じているのかもしれません。
監修ドッグトレーナーによる補足
私たち人間は、雷について建物の中にいれば安全、一時的な自然現象で長くは続かないなど、たくさんの情報や知識があるので不安も少なく過ごしていますが、犬は違います。
とてつもなく大きな音や見たこともない光、襲ってくるのかいつまで続くのかなど想像もつかないでしょう。だからこそ身の危険や恐怖を強く感じてしまうのです。
雷でトラウマになったことがあるから
犬が初めて雷に遭遇したときに受ける刺激はとても強烈で、それが心理的なトラウマとして残ってしまうことがあります。
例えば、ごく近くに雷が落ちてしまうと、その音や光、激しい揺れは遠くに落ちた場合よりもはるかに大きく、恐怖を感じることになります。そのような経験をした犬は、雷がトラウマになることがあるのです。
飼い主が怖がるから
雷を怖がるのは犬だけではありません。私たち人間の中にも、雷を怖がる人はたくさんいます。一緒に暮らしている家族が雷を怖がると、犬も不安になることがあります。
近年、さまざまな研究により犬には人間の感情を読み取る能力があることが報告されています。信頼し守ってくれる存在の飼い主が雷に怯えている姿を見れば、犬が不安になるのは当然のことかもしれません。
体に不快感や違和感を覚えるから
雷の影響は、耳に響く音や目に見える光だけではなく、人間の感覚では感知できないものもあります。
犬の嗅覚や聴覚が優れていることはよく知られていますが、気圧などの変化や微細な震動、静電気など人間には感じられない雷による現象を犬はいち早く察知しているのです。
そのため、犬の体調に問題がある場合は、これらの現象によって体に違和感を覚え、不安や恐怖心を抱くと考えられています。
雷恐怖症だから
雷に対して異常な恐怖心を抱いている状態を「雷恐怖症」といいます。
犬が雷を怖がることは、それほど珍しいことではありません。しかし、犬が雷に対して異常な反応を示し、パニックになって暴れる、震えが止まらないなどの異常行動が見られる場合は、単なる雷に対する恐怖心とは言えません。
この行動は、犬の雷恐怖症という病的な状態。症状が深刻な場合は、病院で診断を受ける必要があります。動物病院では、症状により薬で不安を和らげることをすすめられます。
ただし、薬で症状は抑えられても、雷が怖いという根本的な問題を取り去ることはできません。あくまで薬は最終手段と考え、できる限り犬が安心できる環境作りを心がけることが大切になります。雷恐怖症の犬が見せる仕草と行動
犬は雷に対して、飼い主さんに近づく、そわそわする、息が荒くなる、トイレに駆け込むなど、さまざまな反応を示します。しばらくすればまだ怖がってはいるものの、徐々に落ち着いてくる犬がほとんどです。
しかし、以下のような状態が長く続くようであれば、雷恐怖症の可能性があり、注意が必要です。
- パニックを起こし、飼い主に反応しなくなる
- 落ち着かない
- 「ワンワン」と吠える
- 「キュンキュン」と鳴く
- 震える
- 失禁する
- ハァハァと息切れする
- 大量によだれをたらす
雷が鳴ると犬は震えることがありますが、これが悪化すると震えが痙攣に変わったり、舌を出して呼吸するようになり、過呼吸になることもあります。
また、嘔吐や下痢、失禁などの体調の変化が見られる場合は、雷恐怖症の可能性が高くなります。
雷恐怖症は最悪の場合、ショック死することもあるので、犬の様子をよく観察し、異変を感じたら、すぐに獣医師に相談するなどの対処が必要です。
犬が雷を怖がるときの対処法
犬が雷を怖がるのは、心の底にある不安な気持ちが原因です。
雷が鳴り始めたら、まずは犬を落ち着かせて不安を取り除いて安心させることが大切です。不安がなくなれば犬も「雷を怖がる必要はない」と理解するようになります。
犬を落ち着かせる方法としては、以下のようなものがあります。
飼い主自身が過度に怖がらないよう注意する
犬は飼い主さんのことをよく見てます。飼い主さん自身が雷を怖がったり、怯えている犬に対して過剰に反応してしまうと、犬の不安を増大させてしまいます。
一番大切なのは、飼い主さんが落ち着いていつもと同じように犬に接することです。
普段のコマンドで犬を落ち着かせてみる
雷を怖がる犬の中には、飼い主が出す「待て」や「お座り」のコマンドで落ち着くことができる子もいます。
雷が鳴り始めたら、いつも通りのコマンドを出して、落ち着くことができたら大げさに褒めてご褒美をあげましょう。
これを何度か繰り返すうちに、犬は「雷が鳴ったらご褒美がもらえる」と学習し、雷を怖がらなくなるでしょう。
犬が安全だと感じる場所に移動させる
雷が鳴ったら、犬が安心できる場所に移動させましょう。犬は安心できる場所にいれば、不安や恐怖を感じることなく過ごすことができます。
犬の祖先は穴を掘って巣穴として暮らしていたため、本能的に狭い密閉された空間を好みます。普段から部屋の隅や壁際など静かな場所にキャリーやケージを設置して、特別な場所を作ってあげることで、そこが愛犬のリラックスできる場所になるはずです。
雷が鳴ったときだけでなく、犬の体調が悪いときにも、ストレスなく安心してくつろぐことができるようになります。さらに、飼い主さんの匂いがついたもの(使い古しのセーターや毛布など)を置くことで、さらに安心できるでしょう。
音楽を流してみる
雷の不快な音に犬が敏感にならないように、音楽を流すのも効果的です。普段からどんな音楽を愛犬が好むのか、リラックスできるのかを確認することで、雷が鳴った時や来客など、いざという時に役立ちます。
怯える犬をリラックスさせるための音楽はさまざまあります。You TubeやApple Musicなどで手に入れることができるので、愛犬が好むようであれば利用するのもよいでしょう。
ちなみに、「犬はレゲエ音楽を聴くとよく眠る」という研究報告もありますが、この研究結果がすべての犬に有効かどうかはわかりません。
犬にも性格や好みがあるのであくまでも参考程度に捉え、飼い主さんが自分で愛犬の好みを判断するようにしましょう。
犬の気をそらす
雷を怖がる犬は、雷が鳴り始めると神経を雷に集中させがちです。犬が雷を気にしないようにするには、犬が夢中になれるゲームやボール遊びで気を紛らわせるのも方法の一つ。
飼い主さんが遊び相手になることで犬は遊びに集中し、「雷が鳴ったら楽しいことがある」と少しずつ学習して次第に雷を怖がらないようになります。
タオルでたすき掛けしてみる
動物は普段と違う刺激を体に与えることで、精神が安定すると言われています。
犬の体に布を巻いて適度な圧力をかけることでストレスを解消する方法もあります。これは、獣医師やトレーナーも推奨しており、多くの犬に効果があるようです。
やり方は、犬の首に布を巻きつけて首の後ろで交差させ、お腹のところで同じように交差させます。最後に犬の背中に布を巻いて、あまりきつく結ばないようにするだけです。
人間の赤ちゃんがおくるみに包まれると安心するように、犬も布に包まれると抱きしめられたような感覚になり落ち着くようです。
これを利用した「サンダーシャツ」という商品も販売されており、シャツを着ているだけで抱かれているような感覚になり、不安を和らげる効果があると言われています。
もちろん、全ての犬に効果が期待できるわけではありませんが、一度試してみるのもいいかもしれませんね。
監修ドッグトレーナーによる補足
人間では、重い布団(ウェイトブランケット)の効果というサンダーシャツに似たようなものがあります。
人間は誰かにハグをされることでオキシトシンという快感に関するホルモンがストレスや不安感を減らすといわれ、ウェイトブランケットがこの抱きしめられているような感覚になりやすく、安心感につながるようです。
サンダーシャツも安心感につながる効果が期待されていますが、個体差がかなりあるかもしれません。雷が鳴っている最中に犬がパニックになっている間は、無理に着せないようにしてください。何よりも効果が期待できるのは、大好きな飼い主さんがそばにいて撫でてくれることかもしれません。
雷の音に慣れさせる
雷の音に少しずつ慣れさせていくのも一つの方法です。雷の音は、You Tubeやアプリなどで手に入れることができます。
最初は小さな音から始めて、徐々に大きな音を流していきますが、犬が慣れるまで毎日短時間を流すようにしましょう。
気をつけなければならないのはトレーニングの最中に、犬に本物の雷に遭遇させないこと。犬が雷に慣れないうちに本物の雷に遭遇すると、逆効果になることもあるので雷雨が少ない時期から練習を始めるなど工夫が必要です。
最も注意してほしいのは、犬が嫌がるようなら無理にやらないことです。
監修ドッグトレーナーによる補足
このトレーニングでの「最初は小さな音」とは、「犬が無視できる音量」になります。
音を鳴らし続けて無視できるようになったら、また少し音量を上げて様子を見る。音に反応するようなら、すぐさま音量を下げて、反応しないか様子を見る。この繰り返しになります。
動物病院に相談する
愛犬が明らかに雷に異常な反応をしていると感じたら、早めに動物病院に相談しましょう。前述したように、すでに犬雷恐怖症に陥っている可能性もありますので、深刻な症状になる前に、動物病院を受診しましょう。
犬を落ち着かせるための薬が市販されていますが、飼い主の判断だけで使用するのは危険です。薬を使いたい場合は、必ず事前に獣医師に相談することをおすすめします。
犬が雷を怖がるときの注意点
犬は、突然のことに驚き予期せぬ行動をとることがあります。いざという時の犬の突然の行動に備えて、日頃からさまざまなポイントをチェックして準備しておくとよいでしょう。
次に、犬が雷を怖がるときの注意点をご紹介します。
普段通りに接して安心させる
犬が雷に怯えないようにするためには、「雷は怖いもの」と思わせないことが一番大切。
そのためには、飼い主がいつもと同じように落ち着いて犬に接することがポイント。いつもと同じように接していれば、犬は雷を怖がらなくてもいいんだと理解します。
犬は、人間の言葉の意味を理解できないので、まずは飼い主が「雷は怖くないよ」と冷静に態度で示すようにしましょう。
無理やりクレートやケージに入れない
安全な場所だからといって、犬をクレートやケージに無理やり押し込まないようにしましょう。犬が嫌がることを無理にさせると不安や恐怖心が増すだけです。
犬がクレートやケージに入りたがらないのには、何か理由があるはずです。犬を観察してその理由を探ってみることが大切です。
脱走しないよう窓やドアを閉める
犬が雷を怖がると、2階から飛び降りたり外に飛び出したりなど、パニックになって危険な行動をとることがあります。犬が外に出ないようにするためには窓やドアをしっかり閉めておくことです。
また、犬がパニックになってケガをしないように、犬の周りにある危険なものを片付けておくことも必要です。
外飼いの犬や散歩中の犬が逃げないようにする
雷を怖がる外飼いの犬は、家屋内に入れてあげるのがおすすめです。
しかし、それが無理な場合は、逃げないように、しっかりくくりつけておく、門を閉めるなど、厳重な対策をしておくことが大切です。
外飼いだけでなく、お散歩中の犬にもいえることですが、驚いて首輪やリードが外れて逃げてしまった場合、交通事故に遭うなどの危険がありますのでくれぐれも脱走には注意しましょう。
罰を与えない
犬が雷を怖がって吠えたり粗相をしたからといって、決して叱ったり罰を与えたりしないでください。不安や恐怖を感じている犬に罰を与えても、なぜ怒られているのか理解できないまま恐怖が増幅されるだけです。
それよりも、犬を落ち着かせて不安を取り除くことに心を配りましょう。犬が怯えているときこそ、飼い主の冷静沈着な態度が必要なのです。
ケージでお留守番ができるようにしておく
犬のそばに家族がいるときは雷が鳴ったときの対処法がいろいろありますが、誰もいないときに雷が鳴ることもあります。そんな時に備えて、犬がケージの中で過ごせるように日頃からしつけをしておくことも大切です。
ケージが犬にとってリラックスできる場所であれば、犬も安心できますし、万が一暴れたとしても事故や怪我のリスクを回避することができるのです。
身体的な症状がある場合は動物病院に連れて行く
犬が痙攣や下痢、嘔吐などの異常を示した場合は、できるだけ早く動物病院を受診する必要があります。特に持病のある犬や老犬、子犬などは命に関わることもあるので、迅速な対応が望まれます。
まとめ
犬が雷を怖がるのは、自分に危険が迫っていると不安で怯えている場合が多いので、不安を取り除き、「雷は怖くないよ」と安心させてあげることが大切なのです。
不安や恐怖を感じている犬にとって、飼い主さんだけが頼りです。犬を安心させるためには、飼い主さんが冷静で平常心を保つことが大切です。
日頃から愛犬の生活環境をチェックしながら、可愛がるだけではなく、よく観察してコミュニケーションをとり、信頼関係を築くようにしましょう。